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臨済宗大本山 円覚寺

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2022.10.29
今日の言葉

農業と仏道

二十三日の日曜日は、新聞から多くのことを学んでいました。

いつも一番身近にあるのが、毎日新聞であります。

毎日新聞に、特別ご縁があるというわけでもないのですが、毎日新聞のカメラマンの方で、長年円覚寺を熱心に撮影してくださっていた方がいらっしゃったのでした。

朝比奈宗源老師の頃から、足立大進老師、そして私の代に至るまでお世話になってきました。

そんなご縁と、先代管長の足立老師は、毎日新聞の川柳や投書が、法話の参考になると仰っていたことから、今も読んでいるのであります。

日曜日は、日曜くらぶという紙面があって、その中で心療内科医の海原純子先生が、「新・心のサプリ」というのを連載してくれています。

日曜日の朝は、まずこの「心のサプリ」を読むのが楽しみなのです。

二十三日も、「タクシーへの忘れ物」という題で、いい話が書かれていました。

「ニューヨーク育ちで日本語はほとんどわからないアメリカ人のミュージシャン」の方との話であります。

スタジオで待ち合わせをしていたらしいのですが、その方は、遅れそうだからと近くの駅からタクシーに乗って来たというのです。

言葉はわからなくても、今はスマホで地図アプリを見せて乗れるのだそうです。

ところが、その方が一時間半ほど演奏して、スマホがないと気がついたのでした。

タクシーに忘れてきたのです。

タクシーの領収書を持っていたので、連絡して、幸いにも運転手さんが見つけて持ってくれているのでした。

ところが、運転手さんは深夜まで営業で、戻るのは遅くなるというのです。

そこで、スタジオのスタッフの方がそのタクシーを呼んでスタジオに来てもらいスマホを受け取って、スタッフの誰かが近くまで乗って料金を払うということにしたそうなのです。

無事にスマホを受け取ることができ、しかもその運転手さんは、料金はいらないよと言ってくださったという話であります。

いい話だなと思っていました。

海原先生も

「こうしたことは多分そうしなさいと命令されたからするのではなく運転手さんひとりひとりのやさしさから生まれる行動だと思う。」と書かれていました。

そうして、朝刊の本紙を見ていると、今月の「僧侶・陽人のユーチューバー巡礼」の連載記事がありました。

小池陽人さんが毎月毎日新聞の一面を使って対談を載せてくださっています。

こういう小池さんの連載を読めるのも、毎日新聞のおかげであります。

今回は、「 77歳 畑で農作業する日々を」「ひろちゃん」というのであります。

対談のお相手は、

なんと「七十七歳の農業ユーチューバー「ひろちゃん」」というのです。

その「ひろちゃん」という広さ約250坪(約830平方メートル)の畑を舞台に日々野菜と向き合う方の姿を、長男の吉岡元晴さん(55)が撮影、編集して発信しているのだそうです。

ご長男の吉岡さんが、コロナ禍になって毎日朝早くから夜遅くまで農作業に没頭している母の姿を撮ろうと思ったのだそうです。

この「ひろちゃん」さんは、化学肥料は使わずに、米ぬかを発酵させた「ぼかし肥料」を使うのだそうで、そのやり方を発信しているのだそうです。

肥料にも発酵を活用しているのであります。

小池さんは、「仏教の求道(ぐどう)心のようです」と仰っています。

「ひろちゃん」は「農業だけじゃなくてすべてにおいて、「いや、もっと良い方法はないがやろか(ないのだろうか)」と考えるのが癖なんです。何をやっても没頭します。夜寝ても、明日は何をしようか頭の中で考えてます。」というのです。

こういう向上心を持って体を動かしているのがお元気の秘訣なのかもしれません。

小池さんが「苦労も絶えないのでは。台風や動物の被害で野菜が駄目になってしまうこともあると思います。」というと、

「ひろちゃん」は

「ありますよ。でも苦にしません。

昔から物事を悲観したことはあまりないんです。

さあこれをどうやって再生させようか、とパッと切り替えます。悩んでもしょうがない、元に戻らんもんね。」

とさらりと答えています。

こういう言葉には含蓄があります。

「ひろちゃんにとっての農業の楽しみ、魅力は何でしょう」と問う小池さんに、

「おいしい野菜を作れる、そのことに尽きます。

収益をあげようという考えもないので、おいしいのができたらそれで満足なんですよ。結構失敗もしていますけどね。」と答えています。

小池さんが記事の中で「農家の方は仏教的な生き方のお手本」と語ってたいのがよく分かります。

記事を読んでふと「撃壌の歌」を思い出しました。

昔中国の尭の時代に、ある老人が太平を楽しんで歌ったという歌です。

「日出でて作し、日入りて息ふ。

井を鑿ちて飲み、田を耕して食らふ。

帝力何ぞ我に有らんや。」というものでした。

「日の出と共に働きに出て、
日の入と共に休みに帰る。
水を飲みたければ井戸を掘って飲み、
飯を食いたければ田畑を耕して食う。
帝の力がどうして私に関わりがあるというのだろうか。」という意味です。

この老人の歌は一見すると、時の帝である堯をけなしているように聞こえますが、これを聞いた堯帝は、国民に帝のことなど意識させることなく、国民が豊かな生活を営むことを実現できていることを知って満足したのでした。

なにも意識しなくても自然と天地の道理にかなった暮らしをしていることが理想です。

禅の修行といっても昔の農家の人の暮らしをやるだけだと、とある老師が言っていたことを思い出しました。

修行道場でも畑で農作物を作っていますが、なかなか、そこまで深く考えていないようであります。

しかし、農業と仏道は通じるものであります。

 
横田南嶺

農業と仏道

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