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臨済宗大本山 円覚寺

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2021.09.02
今日の言葉

ウィズコロナの時代の宗教とは – 香の多きを仮らず –

先日、とある出版社からの取材を受けた時の話であります。

「ウィズコロナの時代の宗教とは」という課題で、「葬儀や四十九日法要などの中止や簡素化される中で、家族や近親者はどう見送り、どう弔ったらいいのか?」という質問をいただきました。

これは実に大きな問題であります。

昨年の前半の頃は、このコロナも、ほんの一時の雨宿りかなとくらいに思っていました。

昨年の前半頃では、秋になれば収まるくらいに思っていたのでした。

秋になっても、コロナは収まらずに、来春になれば収まるだろうと思っていました。
今年になって、春になっても収まることはなく、いくら何でもワクチンの接種が始まれば、この秋には収まるだろうと思ったのでした。

それが、まだ収まりが見えてこないのであります。

雨宿りくらいに思ったのが、トンネルに入った思いであります。

そのトンネルというのも、すぐに出口の見えるような、このへんのトンネルではなくて、高速道路にあるように、長い長いトンネルで、出口などとても見えない、いったいいつまで続くのだろうかと思うようなトンネルであります。

お寺にいますので、仏事に関わることが多くございます。

かつて当たり前のように行う事のできていた、お通夜、葬儀、四十九日法要、お盆の行事などが、今までのようにはできなくなったのでした。

昨年の前半頃は、これは今の一時でまたすぐにもとに戻れると思ったのですが、こう長く続くと、どうなるのかと不安になるものです。

私は都内のお寺も兼務住職という役を務めています。

都内のお寺の関係では、コロナでお亡くなりになった方もいらっしゃいます。

昨年のことでした。

通夜も葬儀もなく、納骨のみを寺で行って欲しいということで、驚いたのでした。

このところ、都内の場合、通夜をなくして、家族で一日葬でというのがほとんど大半を占めるようになりました。

たしかに通夜は、飲食を伴いますので、見合わせることになったのでしょう。

そして、悲しく、辛いのは、身内が入院してお亡くなりになってしまう場合であります。

私が葬儀を務めた方でも、お身内の方が、その悲しみ、無念の思いを抱いていることを聞かせていただきました。

一生懸命家族で看病していても、最後の一月は入院してしまうと、その最後は誰も面会できないのです。

いよいよお亡くなりになる頃に一度面会できたというのですが、すでに意識の無い状態だったそうです。

お亡くなりになる方と何のふれあいも、語ることもできずに、死を迎えるという、この悲しみは察するにあまりあります。

入院してしまうともう会えなくなるので、最後の最後まで自宅で看取ったというご家族もいらっしゃいます。

こちらもたいへんなことであります。

そのようにしても、葬儀は簡略化せざるを得ません。

お寺の和尚がお亡くなりになる場合はたいへんであります。

だいたいお寺の和尚というとおつきあいのある方が多いのです。

かつてであれば、大勢の方にお見送りいただいて、葬儀を行ったものでした。

しかし、今は集まるのがよくないということなので、最後のお別れもできないという方も多いのであります。

これをどう受け止めたらいいのかという話でありました。

取材を担当された方も、昨年のコロナが流行する直前にお身内を亡くされ、どうにか葬儀はできたものの、四十九日法要や納骨など思うようにはいかなかったという話でした。

そうしますと、どうしてもお亡くなりになった方に対して申し訳ないという思いを抱いてしまいます。

そこで、お寺の立場としてはどう考えるのかということでした。

もっともコロナの前から、葬儀がだんだん簡略化されていました。

家族葬が増えてきていました。

かつては、お亡くなりになった方のご縁の方はもとより、ご子息がいれば、ご子息の会社の関係の方々も大勢参列されたり、お手伝いをしたりしていました。

今は、そのようにご子息の会社の関係まで呼ぶことは少なくなりました。

行事を小さくという傾向があったのです。

ただ、この傾向をそのままよしとすることは考えものだと思っていました。

故人にご縁のあった方というのは、決して身内だけではないのであります。

ご縁のあった多くの方が、故人にお別れをしたい、最後の御礼を言いたいということもあります。

家族の知らないご縁というのもあるものです。

それを身内の都合だけで、簡素化してしまうのはいかがなものかと思っていたのでした。

仏教ではご縁を大切にします。

多くの方とのご縁、つながりあい、関わりあいの中でこそ、生きることができるのです。

いや生きるということは、そのつながりあい、関わりあいそのものであると言ってもいいでしょう。

いろいろな事情でやむを得ずに簡略化せざるを得ない場合は致し方ないとしても、なるだけご縁のある方々をお招きして、遺族も故人になりかわって御礼を申し上げるというのも大切なことだと思うのであります。

ところが、このたびの感染症によって否応なく、そのような儀式ができにくくなったのです。

円覚寺も例外ではありませんでした。

昨年の二月には前管長がお亡くなりになったのでした。

まだコロナも始めの頃だったので、当初は六月頃には、コロナも収まって本葬ができるだろうと思って計画したのでした。

準備を進めるうちに、緊急事態宣言となってしまい、十分な本葬はできなかったのでした。

円覚寺の前管長の葬儀となれば、大勢の方々が焼香に集まるものであります。

それが、ほんの身内だけになったのでした。

取材の方には、そんな私自身の体験を話をしました。

もともと前管長はあまり儀式にこだわらない方でいらっしゃったこともありますが、私はどのような規模の行事になろうとも、お弔いする側の心の持ちようが大切だと思いました。

こちらが、まごころを込めてお見送りすれば、お亡くなりになった方にも通じるものであります。

そこで、

「仏に献ずるに香の多きを仮らず」

という禅語を紹介しました。

仏様にお香を献じるのに、多ければいいというものではないというのです。

よくご焼香で、何回焼香するのですかと聞かれます。

どうも三回するというのが多いようですが、私たちは何回も行うよりも丁寧に心を込めて一回お香を献じればいいと受け止めています。

バタバタあわてて三回形だけ焼香するよりも、こちらのまごころを込めて一回焼香する方がいいと考えるのであります。

儀式の規模ではなくて、その時の状況で出来る限りのことをしてさしあげようという心さえあれば、それでよいと思うのであります。

恐らく前管長も、もともと盛大な儀式を好まれないところがありましたので、ささやかなお見送りになってしまったものの、十分にこちらの思いを受け止めて下さっていると信じて疑いはないのですと話をしたのでした。

そんな話をしていると、撮影してくださっていたカメラマンの方が、感動してくださいました。

そのカメラマンの方もコロナ禍で身内を亡くして、十分な葬儀ができなかったことに複雑な思いを抱いていたようなのです。

こちらの都合で省こうというのは考えものですが、今できる限りのことを精いっぱい勤めて差し上げれば十分なのであります。

先代の管長は、出棺の際に棺に花を入れる時にも、そんなにたくさん入れなくていいとよく仰っていました。

それは耳に残っていましたので、出棺の時にも皆さん一輪ずつの花を入れてもらってお見送りしました。

先日神奈川新聞にアメリカの考古学者ソレッキという方の話が載っていました。

推定六~七万年前のネアンデルタール人の骨の周辺の土に、花粉が見つかったという話であります。

ネアンデルタール人も死者に花を手向けていたはずだというのであります。

もっとも異論もあるそうなのですが、私もきっとそうだろうと察するのであります。

亡くなった方に、一輪の花を手向ける心、これが人の心であります。

その心さえ大切にして見失わなければ、どんな形の葬儀でも対応できると思っています。

その時できる限りのことをしてさしあげようという気持ちがあれば、またコロナの収まるであろう時にも柔軟に対応できるはずなのであります。

 
横田南嶺

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