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臨済宗大本山 円覚寺

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2020.05.07
今日の言葉

わかりたい一心

鈴木大拙先生の著作を改めて読み直しています。

大拙先生というと、『広辞苑』にもその名が載ってるほどですから、大学者であります。

しかし、今の学歴社会では考えられないことですが、当時の大学で学んで業績を上げられたわけではありません。

『広辞苑』には

「仏教学者・思想家。石川県生れ。本名、貞太郎。学習院・大谷大学教授。禅の研究者として知られ、欧米にも大きな影響を与えた。著「禅思想史研究」「日本的霊性」のほか英文の著作も多い。文化勲章。(1870~1966)」

と記載されています。

その通り、学習院、大谷大学の教授であり、アメリカのコロンビア大学でも教鞭を執っておられます。

金沢にお生まれになって、五歳で本多町小学校に入りますが、諸事情あって卒業せず、更に石川専門学校附属中学校に入って卒業されます。

更に、第四高等中学校本科という今の金沢大学に入りましたが中退しました。

二一歳で、早稲田大学の前身である東京専門学校に学ばれています。
しかし、実際にはその頃から鎌倉の円覚寺に来ては、今北洪川老師に熱心に参禅されています。

洪川老師がお亡くなりになってからは、釈宗演老師に師事されて、二七歳のときに、宗演老師のお勧めもあって渡米され、三九歳で帰国、四十歳で学習院大学の教授になっています。

大学を卒業していなくても教授になっておられたのでした。

私が中学の頃から愛読していた志村武著の『鈴木大拙随聞記』には、著者の志村先生とこんなやりとりが記されています。

「先生も若いころには、ご自分の能力の可能性について、いろいろと悩んだり迷ったりしたことがあるのではないでしょうか」

と志村先生が尋ねると

「わしは、ただわからないことをわかろうと一生懸命つとめただけだった。自分の能力の可能性などということは全然考えてもみなかったよ」

と答えられています。

更に「しかし、ときには人生に絶望するというようなことも、あったのではないでしょうか」と問うと

「いや、わしは絶望などをしたことがない。ノンキな生まれつきなのだろう」

と答えられています。

「わしが円覚寺にきたのも、わかりたい一心だった。それ以外には何もなかった」

というのであります。

真実を明らかにしたいという一心だったことがわかります。

それでも、長い間そんな不遇な境遇にありましたので、

「何不自由なく、のんびりと学校に通っている同じ年配の者を見ると、世の中にはどうしてこんなに不公平なことがあるのかと、わしは考え込んでしまったものだ」

とも仰せになっています。

そしてそれは、

「家の不幸、これが第一だ。わしは人生にはなぜこんなに不公平があるのかと考えた。また、人生には困ったこともたくさんなるものだと思った。子どものときには、母親の感化もあって、『あきらめる』ということをだいぶ考えたぞ」

と語られています。

『あきらめる』というと、悪い意味にとられるかもしれませんが、自分に与えられた状況を不平を言わずに受け入れて、そこから更に努力してゆくことであります。

ですから、大拙先生はその「不公平をつきやぶりたいとも思った」と仰せになっています。

思いもかけぬ不運や不幸に見舞われることは誰にでもあります。

しかし『論語』にありますように、「君子固(もと)より窮す。小人窮すれば斯(ここ)に濫(みだ)る。」なのです。

岩波文庫の金谷治先生の訳によれば、(修養をつんだ)「君子ももちろん困窮する。だが小人は困窮するとでたらめになる」ということです。

困難な状況下になっても、真実を明らかにしたいという「わかりたい一心で」道を求めて、晩年には文化勲章も受章され、日本のみならず世界に知られる大学者になられたのでした。

私たちも今の状況を受け入れて、自分の志を見失わずに、努力を怠らないようにしたいものです。

 

横田南嶺

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