子に学ぶ – はじめ塾夏合宿を訪ねて –
朝の九時から午後四時まで、子供たちと生活させてもらいました。
このはじめ塾の夏合宿に参加させてもらうのも、これで三回目となります。
三回参加していても、私などはなんの変わり映えもありません。
むしろ身体も頭も劣化するだけです。
しかし、子供の二年というのは大きな成長なのだと思いました。
初めてお目にかかった小学五年生の子が、昨年には小学六年生となっていて、今年は中学生になっているのです。
小学五年から中学生というのはとても大きな成長であり変化であります。
三回も通っていると、名前と顔を覚えている子も何人かいるようになりました。
今までも、二人か三人ほど、修行僧を連れて行っていました。
それが今回は七名もの修行僧が一緒に行くことになりました。
はじめ塾の合宿に参加した修行僧が、その素晴らしさを帰ってからまわりの修行僧に伝えるので、自分も行ってみたいという修行僧が増えたのです。
このように自発的に、何かをしてみたい、行ってみたいという気持ちになることがとても大切であります。
こういう内側から、やってみたい、行ってみたいという気持ちが起きてこないと、何をやっても、ただやらされるだけで終わってしまうものです。
四十名ほどの子供たちが、丹沢で一ヶ月合宿を行っています。
そこで、薪でご飯を炊き、お風呂を沸かして過ごしているのです。
まるで修行道場のような暮らしのようにも思われますが、その明るさ、その元気なことはとても修行道場の及ぶものではありません。
今回も出かけていくと、ちょうど朝ご飯の時間でありました。
みな正坐して静かに食事をしています。
そのあと、柔道家の先生が受け身や護身術を教えてくださっていました。
私も部屋の隅で拝聴していました。
受け身というのもとても大事なことであります。
ことにこういう山の暮らしをしていると、とっさの時に受け身をとれるととれないのでは大きな違いが出てきます。
人間が生きていく上で大事なことを学んでいるのだと分かります。
そのあと私たちの時間となりましたので、はじめに皆さんに伝えました。
先ほどは受け身などを教えてもらっていましたが、私たちが皆さんに教えるものは実はありません。
禅は、修行して何か素晴らしいものになるように思うかもしれませんが、実はそうではなく、お互いはもともと素晴らしかったということに気がつくのです。
皆さんがここで暮らしていることは素晴らしいのです。
今日はいつもより多い修行僧がついてきていますが、皆さんの暮らしを是非とも学びたいと思ってきています。
どうぞ一日よろしくお願いしますと申し上げました。
そして修行僧一人一人挨拶をしてもらいました。
たんに自己紹介では面白くないので、必ず子供たちを笑わせるようにと伝えておきました。
知らないお坊さんたちが来るというだけで、緊張する子もいるものです。
それぞれの修行僧のすることに、子供たちはとてもよく反応して笑ってくれていました。
私はそれから得意のネタで少し子供たちを笑わせておいて、身体をほぐすワークから始めました。
今回修行僧が七名もいるので、自分で全部やらずに、修行僧一人ずつ今まで習ったことや知っていることで、身体をほぐす体操をひとつずつ行ってもらいました。
肩周りや股関節、脇腹などそれぞれほぐしてもらいました。
それでかなりほぐれたと思いましたので、私は合掌することで身体も心も調うということを実際のワークで体験してもらいました。
そのために鳩サブレーをお土産に持参してゆきました。
身体をほぐして合掌して身体と心を調えて、そのまましばし坐ったのでした。
ここの子供たちはふだんから正坐して暮らしていますので、坐る姿勢はとてもきれいなのです。
そしてそのあとはみんなで今日の作業をしました。
食事の支度、薪作り、それから大地の再生で行っている水と空気の通り道を作る作業とに分かれて行いました。
修行僧たちもそれぞれ分かれて参加します。
私は大地の再生で行っていることに興味がありましたので、子供たちに教わりながら、水の通る道を作ってゆきました。
五センチほどの溝を掘っていって、それに枯れ枝を置き、炭を撒いて、枯れ葉をかけていくという作業を行っていました。
そのあとお昼ご飯になります。
はじめ塾で育てた野菜で作られたおかずは、とても美味しいのです。
私もおかわりをしていただきました。
そして午後からは、皆で銭まわしというお遊びを行って、そのあと私たちと一緒に来てくださった井上欣也さんにいくつかのワークを行ってもらいました。
井上欣也さんにはいつも身体の使い方をいろいろと教わっているので、先日お世話になった折にはじめ塾の話をしたのでした。
とても興味を持たれていたので、ご一緒に参加してもらったのでした。
最後に子供たちが正坐して謡を披露してくださいました。
これがまた姿勢がよろしく発声も良くて実に堂々たるものであります。
こちらは何の御礼のしようもありませんので皆で般若心経をお唱えして皆さんのご無事をお祈りさせてもらったのでした。
一日子供たちに接して多くのことを学びます。
子供たちは、遊んでいる時も作業をしている時も、何事にも全力で取り組み、心から楽しんでいます。
いつの頃から、私たちはこんな純粋な心を忘れてしまったのかと反省させられました。
横田南嶺