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臨済宗大本山 円覚寺

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2025.06.14
今日の言葉

無駄骨ください

「すみません、無駄骨をください」

「はい、かしこまりました。」

「私も無駄骨お願いします」

「無駄骨ですね、少々お待ちください」

「無駄骨をお願いしたいのですが」

「どうぞ今お持ちします。」

こんな会話が聞かれました。

先日の日曜説教の後でありました。

第二日曜日は日曜説教の日であります。

八時半頃、宗務本所に向かいます。

その折りには、佛殿のご本尊さまにご挨拶してから参ります。

ちょうど八時半頃で開門されて多くの方がお越しくださっていました。

その日は、朝から雨で、お越し下さる方はたいへんだなと思っていましたが、八時半頃には雨はやんでいました。

雨上がりで境内もしっとりと言いたいところですが、湿気がつよく「しっとり」ではなく「じっとり」とした感じであります。

その日、大方丈には、大勢の方がお集まりくださっていました。

法句経の

一三番
そあらに 葺かれたる 屋舎(いえ)に 
雨ふれば 漏れやぶるべし 
かくのごとく 心ととのえざれば
貪欲これを破らん

一四番
こころこめて 葺かれたる 屋舎に 
雨はふるとも 漏れやぶることなし 
かくのごとく よくととのえし心は 
貪欲も破るすべなし(『法句経』講談社学術文庫 友松円諦訳)

の詩を引用しながら話を始めました。

そのあと雨が止んで進んで道を行くと、道に古い紙が落ちていました。

お釈迦様は拾うように告げました。

言われて紙を拾った比丘にお釈迦様は尋ねました。

「それは何の紙だと思うか。」と。

比丘たちは答えました。

「これは香木を包む紙です。いま捨てられていますが、もとのように香りをとどめています。」と答えました。

お香を包んでいた紙だったのです。

お香の匂いがのこっていたので分かったのでした。

という話をしていました。

これは『法句譬喩経』にある話であります。

大蔵出版の『真理の偈と物語 法句譬喩経現代語訳』に書かれています。

その本に基づいて話をしているのですが、話をしながら、はてさて、この頃には既に紙があったのだろうかと気になりました。

気になったものの、話を脱線するわけにはゆきませんので、そのまま続けました。

紙の発明は、学校では後漢の蔡倫の発明だと習ってきました。

今は『広辞苑』でみると、「前漢期遺跡から古紙が出土し、前漢初期の開発」と解説されています。

インドにおいては多分まだ無かったのだろうと思いました。

漢訳ではたしかに「紙」となっているのですが、これは後の時代に書かれたものであることは間違いありません。

もっともそのような詮索よりも経典から何を学び取るかが大事なのであります。

法話のあとに、新刊の二冊を販売させてもらいました。

『イス坐禅』の本と『無駄骨を折る』の二冊であります。

『イス坐禅』の方は、親しみやすく、そして分かりやすく書かれていますし、誰でも実践できて役に立ちそうに思われます。

それに対して『無駄骨を折る』は、そのタイトルからしてあまり手に取ろうという気がしないものです。

そこでこの『無駄骨を折る』の本には署名をして差し上げることにしたのでした。

そうしますと有り難いことに、大勢の方が並んでくださいました。

そこで本の扉に、文字を書いて名前を書いていました。

「不知最親」とか「如法」「浩然」「大悲」など、本の目次にある言葉から選んで書いていました。

書いていると、事務所の方とお客様とのやりとりが耳に入ってきます。

販売しているのは、『イス坐禅』『無駄骨を折る』の本ですので、お求めになる方は、どの本を欲しいのか告げる必要があります。

そこで冒頭の会話になるのであります。

「すみません、無駄骨をください」

「はいかしこまりました。」

「私も無駄骨お願いします」

「無駄骨ですね、少々お待ちください」

「無駄骨をお願いしたいのですが」

「どうぞ今お持ちします。」

という次第です。

無駄骨は誰しもおりたくはないものです。

しかし、こんな本のおかげか、「無駄骨をください」「私も無駄骨を」という言葉を聞いてひとりで笑いそうになっていました。

日曜説教の法話のあとと坐禅のあとと二回署名をさせてもらいました。

日曜説教が終わって帰ろうとすると青年二人から声をかけてもらいました。

「愚痴聞き屋です」と言われたのですが、法話に署名にそしてその日は汗びっしょりかいていたこともあって、やれやれと思い、少しぼんやりしていたこともあって、「愚痴聞き屋」と言われてもすぐになにか分かりませんでした。

少しして思い出しました。

かつて管長侍者日記に書いたのでした。

もう二年ほど前になります。

二〇二三年九月二四日であります。

「三つの言葉でいい」という題で書いています。

九月十七日の読売新聞の「編集手帳」に書かれている話です。

「ボランティアで「愚痴聞き屋」を七年続けているという公務員の奥山宗思さん (三一)と、会社員の小林孝平さん(二九)。

週末、駅前にマットを敷いて座り、道行く人の恋や仕事の悩みに無料で耳を傾けてきた。

他人の愚痴とはげんなりしそうだけれど、「様々な考え方を吸収できる」とむしろ感謝する。

助言は一切せず、「それはつらいね」などと相づちを打つだけという。」

という二人の青年のことを紹介しています。」

と書いています。

長野の青年とありました。

今はお一人は長野からでていらっしゃるとのことでした。

管長日記で書いたことがご縁になって、日曜説教にお越しくださったのでした。

有り難いご縁であります。

すぐに思い出せなくて申し訳なく思いました。

午後からは布薩でありました。

こちらも七十名満席であります。

汗ばむような日でしたので、ゆっくり丁寧に礼拝をすることを心がけました。

いつも八十代の方もお見えくださるのですが、今回は初めて八十九歳の方が参加されました。

だいじょうぶかなと心配していましたが、しっかりと礼拝をなさっていました。

いろいろの御苦労のあった人生だろうと察します。

私の『無駄骨を折る』の本の読んでくださっているようで、「とてもよい本で、この本の言葉に救われる」と言ってくださいました。

その日も呼吸について詳しく実習しましたので、呼吸法がとてもよかったとも言ってくださいました。

長い人生を送ってくると、幾たびも無駄骨を折り、その無駄骨があってこその人生だとお気づきになるのでしょう。

お若い方にも無駄骨を避けずに「無駄骨をください」というくらいの気持ちで人生に臨んでほしいと思ったのでした。

 
横田南嶺

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