七つの宝
七にまつわる言葉は多いものです。
北斗七星にはじまりたくさんあります。
私たちが一番よく使う袈裟のことを七条袈裟といいます。
七堂伽藍という言葉もあります。
これは宗派によって異なるようです。
『広辞苑』には、
「寺院の主要な七つの建物。
七堂は必ずしも確定しておらず、また「悉堂」(完備した堂宇)の意ともいう。
南都六宗では金堂・塔・講堂・鐘楼・経蔵・食堂(または中門)・僧房を、
禅宗では仏殿・法堂・三門・庫院・僧堂・浴室・東司を指す。」
と解説されています。
あまり良い意味ではありませんが、七難というのもあります。
これも『広辞苑』では
①〔仏〕七種の災難。
個人が受ける災難・難儀。
法華経普門品に出る七難について観音義疏では、火難・水難・羅刹難・王難・鬼難・枷鎖難・怨賊難とまとめる。
仏法が衰退した国土に起こる災難。
薬師経では、人衆疾疫難・他国侵逼難・自界叛逆難・星宿変怪難・日月薄蝕難・非時風雨難・過時不雨難。
仁王経では、日月失度難・星宿失度難・災火難・雨水難・悪風難・亢陽難・悪賊難。」
と書かれています。
亢陽難は干ばつです。
竹林の七賢というのもあります。
こちらは「中国の魏・晋の交替期に、世塵を避けて竹林に会し清談を事としたといわれる7人の文人、阮籍(げんせき)・?康(けいこう)・山濤(さんとう)・向秀(しょうしゅう)・劉伶(りゅうれい)・阮咸(げんかん)・王戎(おうじゅう)の称。」です。
七情は「7種の感情。
素問霊枢(黄帝内経)では、喜・怒・憂・思・悲・恐・驚。
礼記の礼運篇では、喜・怒・哀・懼・愛・悪・欲。仏家では、喜・怒・哀・楽・愛・悪・欲。」
となっています。
七宝とは、「七種の宝物。経典により異同がある。
金・銀・瑠璃・玻璃・硨磲・珊瑚・瑪瑙」です。
[広辞苑 第七版]
有名なのがなんといっても七福神です。
『広辞苑』の解説には、
「七柱の福徳の神。大黒天・蛭子・毘沙門天・弁財天・福禄寿・寿老人・布袋。」
とあります。
七福神のなかで、恵比須さんだけは日本の神様であります。「
こちらも『広辞苑』には、
「恵比須・恵比寿・夷・戎・蛭子」といろんな表記が書かれていて、
「①七福神の一つ。もと西宮神社の祭神蛭子命(ひるこのみこと)。
海上・漁業の神、また商売繁昌の神として信仰される。
風折烏帽子(かざおりえぼし)をかぶり、鯛を釣り上げる姿に描く。
3歳まで足が立たなかったと伝えられ、歪んだ形や不正常なさまの形容に用い、また、福の神にあやかることを願って或る語に冠し用いたともいう。」
と書かれています。
「ひるこ」とは「日本神話で、伊弉諾(いざなぎ)・伊弉冉(いざなみ)二神の間に最初に生まれた子。
3歳になっても脚が立たず、流し捨てられたと伝える。
中世以後、これを恵比須として尊崇。」
というのです。
恵比須さんは日本でも信仰が盛んであります。
かつて建仁寺にいた頃には、すぐ隣に恵比須神社がありましたので、正月の十日にはとても賑わっていたことを覚えています。
大黒さん、毘沙門さん、弁才天はインドの神様で、福禄寿、寿老人、布袋さんは中国の神様であります。
七覚支という言葉もあります。
こちらは岩波書店の『仏教辞典』には
「悟りへと導く要素のこと。
<覚分><菩提分>とも訳される。
原始経典以来、1)念(ねん)、2)択法(ちゃくほう)、3)精進(しょうじん)、4)喜(き)、5)軽安(きょうあん)、6)定(じょう)、7)捨(しゃ)の七つが覚支として数えられ、<七覚支>と総称された。
それは、これまでのおのれの言行を注意深く思い起こし(念)、
それらを正しい智慧によってよく思量しつつ(択法)、
怠ることなく励むならば(精進)、
心に喜びが生じ(喜)、
喜ぶことによって身体が軽やかになり(軽安)、
それより心が安らかになり統一されて(定)、
あらゆる感情を離れた平等な態度が達成される(捨)、ということである。」
と解説されています。
七仏通誡の偈はよく知られています。
『仏教辞典』には「過去七仏が共通して保ったといわれる偈で、仏教思想を一偈に要約したものとも見なされる。
漢訳で、「諸悪莫作(しょあくまくさ)、衆善奉行(しゅぜんぶぎょう)、自浄其意(じじょうごい)、是諸仏教(ぜしょぶっきょう)」〔法句経183〕といい、「もろもろの悪をなさず、すべての善を行い、自らの心を浄めること、これが諸仏の教えである」の意。」であります。
悪いことをせず、よいことをして、心を浄める、これが仏の教えであります。
七つの宝というのも説かれています。
七聖財というものです。
心の中にある最勝の徳という財が七つ説かれています。
一は信です。行う善とに確信を持つことです。
二は、戒です。
身と語をきちんと維持することです。
正しく善い行為をいいます。
三は慙です。悪をなすことに心が恥じることです。
四が愧です。悪に対する恐れです。
五が聞です。
多くを学び学習することです。
六は施、施すことです。
七は慧です。
「理由、 善悪、 是非、 功罪、 利益、不利益を真に知り理解し、考え、調べ、行おうとすることを知ること」を言います。
こういう七つの宝は大事にしたいものであります。
横田南嶺