仏教とAI
以前佐々木先生とお話していて、ご子息と毎日のようにAIについて語り合っているとうかがい、とても興味を持ちました。
そこで七月大学の授業に行った折に、佐々木先生とご子息にお越しいただいて、今のAIについてお話を聞いたのでした。
これは是非とも勉強をしなければならないと思って、円覚寺で勉強会をしたのでした。
その勉強会には、藤田一照さんもお越しくださいました。
また浜松からも東福寺の伊藤弘陽さんもご参加くださいました。
はじめに佐々木斎生先生が90分、「AI革命を生きる覚悟」と題して講演してくださいました。
パワーポイント資料の表紙には、不思議な画像がありました。
この画像がなんとAIによって作られたものなのでした。
チャットGPTに佐々木先生が、「AI革命を生きる覚悟」という講演のテーマのトップスライドに使えそうな画像をお願いしたそうです。
ただし聴衆は禅宗の僧侶ですと伝えておくと、その要望に応えて画像を作ってくれたのだというのです。
佐々木斎生先生は、佐々木閑先生のご次男で、数学者であります。
代数幾何学が専攻だそうです。
最近のAIの進歩には驚くものがあり、これはもう産業革命以来の大革命ではないかと、毎日のように佐々木閑先生と語り合っているというのです。
控え室で話をしていると、佐々木閑先生は、産業革命というよりも、言語を使い始めたという位の変化だろうと仰っていました。
それほどの人類の歴史に関わる変化の中にお互いは暮らしているのです。
私は冒頭の挨拶で、この現代を学ぶこと、時代性を自覚しておくことの大切さを話しました。
かつて佐々木閑先生にオウム真理教について、そして仏教と戦争について学んだのですが、このどちらもその時代の問題であります。
現代の問題を正しく認識していないと、禅が利用されてしまうようなこともあったのでした。
まずは現代の変化の様子を、できるだけ冷静に知ることが大切だと話しました。
佐々木閑先生は、AIの進歩は、仏教と親和性が高いと仰っていました。
諸法無我ということがますますあきらかになるのだというのです。
まずは生成AIによる動画をいろいろと見せてもらいました。
どれもが驚くような動画でありました。
これらを独自の方法で作り出しているのです。
それから佐々木斎生先生が言われたのは、結論的なことですが、今までは社会の要望に応えるように生きてきたのがお互いですが、多くの仕事がAIに取って代わられると、社会から人間は期待されないようになって、自分で自分の生き方を決めてゆかなくてはいけなくなると仰っていました。
こんな風に生きればAIに仕事を奪われても生きていけるのだという手本を示すのが仏教のひとつの役割ではないかというのです。
AIが人間の仕事を奪うのかということについては、完全に消滅する仕事があるのは事実のようです。
でもすべてが奪われるわけでもありません。
社会における立ち位置が劇的に変化してしまうのもあるようです。
究極人間はなにも仕事をしなくてもよくなるのではないかというのです。
それから生成AIの内部の仕組みについて学びました。
これは少々難しいものでしたが、極めて単純なトライアンドエラーの機械学習を繰り返して文章などを作り上げてゆくのだそうです。
アテンションアルゴリズムというのだそうです。
この内容はとても興味深いものでした。
言語を座標軸で表すのです。
第二部では、佐々木閑先生、藤田一照さん、そして修行僧や若手の和尚さんたちを交えて語り合いました。
テーマとしては、
「人のぬくもりを感じる職業はAI革命後も残るのか?
AIが台頭する中で、人間性や個性が求められる職業はどう変わっていくのでしょうか?
人はAIを使うのか、使われるのか?
AIが私たちの生活の一部として溶け込む未来において、人間とAIの関係性はどうあるべきなのでしょうか?
私たちはAIに主導権を譲る事になるのでしょうか?
機械は人間を滅ぼすのか?
SF作品のようにAIやロボットが私たちの脅威となることは、フィクションとしての想像なのか、それとも現実的なシナリオなのでしょうか?
AI革命後の生き方
AIの急速な進化がせまる現在において、私たちの価値観はどのように変わり得るのでしょうか?
AI革命が私たちの生き方や社会の下での自意識を大きく変える時、仏教の視点が非常に重要になります。」
ということなどでした。
僧侶のする説法とAIのする説法とどう違うのかという問題も語りました。
結局はその人となり、人間性が問われることになるというのです。
AIはこれから私たちの暮らしに溶け込んでゆくと思われます。
佐々木閑先生は、今までの眼耳鼻舌身意の六根にAIを入れて七根になるのではと仰っていたほどです。
AIを学ぶとますます人間とは何か問われてきます。
私は究極、自分が自分で自分する坐禅や、昔のように田畑を耕して大地の恵みに感謝して生きるとか、そんな生き方が注目されるのではないかと思いました。
もっともこれからは倫理の問題や、著作権の問題、それに生成AIは膨大な電力を消費するのでエネルギーの問題など、課題も多くあります。
しかし、今を生きるということはこれらの問題にも目を向けないといけません。
藤田一照さんも鋭い意見を述べてくださっていました。
充実した学びでした。
横田南嶺