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臨済宗大本山 円覚寺

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2024.02.05
今日の言葉

てらこやで朗読

先月の末に、NPO法人鎌倉てらこやで、朗読を披露しました。

鎌倉てらこやでは、「みんなで朗読」という活動をなさっています。

どういう活動かというと、いただいたパンフレットによると、

「私たちNPO法人鎌倉てらこや 「みんなで朗読」のメンバーは、毎月一回円覚寺の塔頭をお借りして、朗読会を行ってきました。

今年度は「作者の考えを読み取ろう」 をテーマとして、作品を読み深め、班のメンバーと話し合いを重ね、 朗読を通した作品や人との出会いの一つひとつと向き合う活動を行ってきました。

五月から七月の前期は、 詩や短編小説に触れさまざまな表現のあり方を学びました。

九月からは発表会の作品に取り組み、 前期の経験を生かし工夫を凝らした朗読の練習を重ねてきました。

日ごろの練習の成果を皆様にお聴きいただけると嬉しいです。」

と書かれています。

毎月練習してきたのを、一月に円覚寺本山で発表会を行っているのであります。

私は挨拶をすることになっているのですが、ここ数年来、何かの朗読を披露しています。

今回は、『二番目の悪者』(小さい書房)の絵本を朗読しました。

これは、村上信夫さんから教えてもらったものです。

金のライオンと銀のライオンが出てくる物語です。

金色のたてがみを持つ金のライオンは、乱暴でわがままでそのうえ国の王になりたかったのでした。

銀のライオンは、とても優しくていつも人の為に頑張って行動しているのでした。

町外れに住んでいた銀のライオンは、多くの動物たちから、次の国王にふさわしいと思われていました。

そんな噂に嫉妬した金のライオンは、「実は銀のライオンは暴力的だ。ほかの動物を殴ったりしていた」と嘘の噂を流し始めました。

そんな噂を全く信じなかった動物たちでしたが、みんなが同じ噂を知っていることで、少しずつ噂が本当のこととして拡がっていくのでした。

噂はほんとうにように思われてしまって、金のライオンが王様になってしまいました。

金のライオンはわがままで、好きなことばかりをして国は荒れ果ててしまったのでした。

一番目の悪者は、間違い無く金のライオンですが、二番目の悪者は誰でしょうかという話です。

「これが全て作り話だと言い切れるだろうか」と絵本には書かれています。

考えさせられる話であります。

物語の終わりに空に浮かんでいる雲がつぶやきました。

「誰かにとって都合のよい嘘が
世界を変えてしまうことさえある。
だからこそ、 なんどでもたしかめよう。
あの高くそびえる山は、 本当に山なのか。
この川は、まちがった方向へ流れていないか。
皆が歩いて行く道の果てには、 何が待っているのか」

というのであります。

そんな朗読を十五分ほどで行いました。

そのあと、池田雅之先生がお話をしてくださいました。

池田先生ははじめに朗読は、まるで森の中に入ったような気持ちになると仰っていました。

また音楽を聴いた時のようなよろこびがあるとも仰せになっていました。

目で見るのではなく、ただ耳で聞いているだけで、いろんな情景や、さまざまな人物、生き物たちの姿が思い浮かぶのであります。

私が『二番目の悪者』を朗読したことを受けて、物事は善悪でも何でも簡単に判断してはいけないと仰っていました。

すぐに判断するのではなく、多面的にものごとを見ることの大切さを説かれていました。

そしてネガティブケイパビリティーについてもお話してくださいました。

「ネガティブ・ケイパビリティ」というのは、イギリスの詩人ジョン・キーツが残した言葉で、「答えの出ない状況に対して、答えを出さないままに耐える力」を指すのだと教わったことがあります。

すぐに答えが出ないものも世の中にはあります。

今はすぐに答えを求めたがるのですが、じっと待つことも大事であります。

池田先生は今分からないと思っても、その言葉を胸に貼り付けておいて欲しいと仰っていました。

今分からなくても時間をかけて理解してゆくこともあるのです。

今回は、五つの作品を四グループの方が発表してくれていました。

初めは、「キンショキショキ」という豊島与志雄先生の作品を朗読されました。

これは、昔ある片田舎の村に、非常に大きな年とった猿がやって来て、おかしな踊りをしては、風呂敷包みいっぱいにお米や野菜をもらうだけもらうと、一散に走り出し姿を消してしまいます。

いったいどこへ向かうのでしょう。

猿と村人たちが織りなすなんとも不思議な世界を表してくれていました。

それから「お菓子の大舞踏会」という夢野久作さんの作品でした。

お菓子が大好きな五郎はお母様にお菓子を食べることを禁じられていました。

そんな時に家にお菓子が届きます。

五郎は内緒で食べてしまいます。

すると、食べたお菓子がお腹の中で大騒ぎをするという物語です。

それと「マッチ売りの少女」の二つの作品を朗読してくれていました。

これは有名な話です。

大晦日の夜。少女は一人でマッチを売り歩いていました。

マッチをするとそこには暖かい部屋や美味しそうなご飯、そして亡くなったはずのおばあちゃんが現れます。

マッチがなくなって少女は亡くなってしまうのです。

悲しい話ですが、マッチをともしたその時の幸せも詠っています。

それから宮澤賢治の「月夜のでんしんばしら」という物語でした。

ある晩、鉄道線路の横を歩いていると突然電信柱の列が、 軍歌を歌いながら行進を始めるという物語です。

最後には「女の魚売り」という小川未明先生の作品でした。

少年が、若い女の役と、おばあさんの役とを見事に演じ切っておられました。

全身全霊で読み上げる少年の姿には心打たれます。

最後にみんなで金子みすゞさんの詩を朗読して終わったのでした。

金子みすゞさんの詩は、「私と小鳥と鈴と」でした。

私が両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないが
飛べる小鳥は私のやうに、
地面を速くは走れない。
私がからだをゆすっても、
きれいな音は出ないけど、
あの鳴る鈴は私のやうに
たくさんな唄は知らないよ。
鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。

朗読で大事なことは、大きな声で、ゆっくりとはっきりと読むことだとご指導があって、みんなで朗読したのは感動的でありました。

かくして半日子どもたちを含めた皆さんの朗読会に参加させてもらいました。

池田先生の仰ったように深い森の中で過ごしたような思いがしました。

 
横田南嶺

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