共生、共育
腰塚先生がわざわざ届けてくださったものです。
本には直筆でサインまで入れて下さっていました。
そこには
共生
共育
響命
人生縁joy
と書いて下さっていました。
「共育」という言葉は見慣れないものです。
本のカバーには、
「共に育ち、共に育む 心ときめく教育」と書かれています。
腰塚先生四冊目の著書だそうです。
腰塚先生のことは何度か紹介したことがありますが、本書のまえがき「はじめに」で、自己紹介をしてくださっていますので、引用させてもらいます。
「私「腰塚勇人」 をはじめて知る方に少し自己紹介させてください。
2002年3月1日。
それまで2年間順風満帆に、天職と思えた教師人生を送ってきた私でしたが、その人生の歯車を大きく狂わせる出来事が起きました。
それは、スキー場での事故で首の骨を折って 「首から下がまったく動かなくなってしまった」ことでした。
医師は「たぶん、一生寝たきりか、良くて車イスの生活になるでしょう」と妻や両親に宣告しました。
「どうやったら死ねるか・・・」と思い続ける日々。
そんなことばかり考えていた人間に、「生きる勇気」を与えてくれた言葉があります。
それは妻の 「何があっても、ずーっと一緒にいるから・・・」、母の「代われるものなら代わってあげたい・・・」。 そして、上司、教師仲間と生徒たちの「先生、待っているから・・・」、その言葉でした。
2010年5月、事故から時を経て、これまでの私の人生をありのままに書き綴った一冊の本が刊行されました。
その本の題名は「命の授業』です。
「命ってなんですか?」
「命は今、今日。自分が自由に使える時間、それが命です」
私は命の危機に直面しました。だから、わかるんです。
今日一日を生きていること、そして毎日を生きていること、それを実感できること、それが「命」なんだ。」
という方であります。
教師をお辞めになってこの「命の授業」に取り組んでおられる先生です。
さらに「はじめに」には、
「「信頼する」「良いところを伸ばしていく」「認め合う」「セルフイメージ」、 これは親子関係でも、先生と生徒の関係でも、保護者と先生の関係でも同じです。
教育は教える側、教えられる側が、互いに成長しあってするものではないでしょうか。
共に育ち共に育む「共育」であってほしいものです。 まずは自分の胸に手を当てて問いかけてみませんか。」
と語りかけて下さっています。
いただた本書を読もうと思って最初の一章を開くと、衝撃的な内容でした。
「「ま・さ・か」、わが子が不登校・・・。
さらには、ストレスからゲーム依存になるは・・・、
昼夜逆転になるは・・・、
注意すれば家の壁に穴はあくは・・・
「どうする親・・・」状態。」
というのです。
立派な先生のお子さんですが、いろいろと悩むことはあるのでしょう。
しかし、先生にしてみればたいへんなことです。
そこで、先生は奥様と共にカウンセラーへ相談されたと書かれていました。
やはり、専門の先生に相談されるというのは大事なことであります。
カウンセラーの方にいろいろ打ち明けるのですが、
「大変でしたねぇ~」 「お辛いですねよねぇ〜」と共感はしてもらえたらしいのです。
しかし、そのカウンセラーの方は、
「お子さんを学校に行かせたい相談なら僕には無理です」とキッパリ言われました。
そして更に言われたのが
「お子さん、今、学校に行きたくないってメッセージをお父さんとお母さんに送っているんですよね。
分かってほしいって。
相当一人で悩んだんじゃないですか?
彼なりの理由で親に言えなかったんじゃないですか」
ということなのでした。
そこでそのカウンセラーの方が、
「イイご家族ですね~」と言ったそうなのです。
腰塚先生にしてみれば、大事な息子が不登校になっていったい何が「イイ家族」なのか、親として情けないやら、子育てを間違ったのかと自信喪失状態なのに、なぜかと思われました。
カウンセラーの方は、
「息子さん、ご両親には今の辛さ分かってほしい、助けてほしいと頼り信じているじゃないですか。
息子さんにとってご両親は味方であり、家庭は安全なベースキャンプになっているじゃないですか。だからイイ家族だ」
と言われたというのです。
更に「ここで無理やり学校へ行け!と言い続けたらお父さん、お母さんは、息子さんにとって敵になり、家も居心地が悪くなり息子さん家から出ていきますよ・・・」
と言われました。
そうして
「息子さんを信じて待ってあげてください。
まずはご夫婦が仲良く、 決して息子さんのことで、お前が悪い、あなたが悪いと夫婦ゲンカなどして、 家の中に余計な緊張感をつくり出さないでくださいね。
息子さん、全部聞いていますから・・・」
さらに、これからのアドバイスとして、
「規則正しい生活、特に携帯の使用時間制限。 腫れ物に触る、ご機嫌を取る、そのような対応は禁物。言いたいことは言いましょう」と、
「それからご飯は一緒に食べる」というルールを作られたのでした。
そこから腰塚先生の奥様は普段しない携帯ゲームアプリを入れ、お子さんと一緒になさり、腰塚先生は一緒にトレーニングジムに通われたのでした。
いろいろの御苦労の末、どうなったのかは、本書を読んでいただきたいと思います。
もちろんのこと、結果がよかったので、このような本になっているのです。
腰塚先生の実体験から来た言葉には重みがあります。
とても読みやすい本であり、それでいて深く考えさせられる内容であります。
横田南嶺