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臨済宗大本山 円覚寺

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2022.08.12
今日の言葉

目立たぬ努力

八月七日の日曜日には、まず毎日新聞の日曜くらぶに連載されている心療内科医の海原純子先生の連載「新・心のサプリ」を拝読しました。

今回の題は、「隠れた努力」というものです。

まずはじめに、海原先生は、

「スポーツ選手の、「自分のプレーを見てみんなに元気になってもらいたい」という言葉をきくことがある。選手の活躍を見て「元気をもらった」という声もきく。」

と書かれています。

スポーツというのは、特に大勢の人が見るような選手になるには、日頃からたいへんな努力をしておられるので、その成果を見られると、大きな力を得ることがあるものであります。

スポーツの素晴らしさであります。

そんな素晴らしいプレーを見て、「自分も頑張ろう」という気持ちにもなることでしょう。

スポーツ選手の素晴らしさの話かなと思うとそうではないのでありました。

海原先生は

「私は、素晴らしい演奏や、スポーツ選手の華々しい活躍を見て「すごいなあ」と感嘆してその努力を想像するけれど、自分も頑張ろうというふうにはならない。ただ応援してすごい、と興奮しているだけなのだ。」

と書かれています。

実は私も同じようなところがあります。

私などは、まずスポーツを見ることがあまりありませんし、あまりにも自分とかけ離れすぎると、ただ仰ぎ見るばかりになってしまい、鑑賞の対象になってしまいます。

そこで海原先生は、

「私は職業柄、他の人が見ることは少ない「隠れた努力」を目の当たりにすることがあり、勇気と希望をもらうことがある。」

と書かれています。

あまりにも素晴らしい業績の方の話よりも、自分も努力すれば手が届きそうな方の話のほうが、よし頑張ろうという気持ちになるものです。

そこで海原先生は、昨年お亡くなりになったという、毎日新聞の記者の方で、海原先生の連載を本になさった方を書かれていました。

その方は、乳がんのステージ4といいながらも、海原先生は、

「失われたものやなくしたもの、できないことがある時、自分ができることに目を向ける努力をしていたように思う。できることを精いっぱいやろうと努力していたように思える」というのであります。

それにもう一人、「マラソンで知られる瀬古利彦さんのご子息の昴さん」をあげられていました。

マラソンの瀬古さんというと、私でも存じ上げています。

私よりも八歳も年上でいらっしゃいますが、ストイックにマラソンに打ち込まれている様子は、まるで修行僧のようだと言われていた方でいらっしゃいます。

そのご子息が、まだ30代で亡くなったというのであります。

海原先生は、

「悪性リンパ腫で化学療法、放射線療法、骨髄移植などの治療をしたが、全身に転移し脳にまで転移した中でエッセーをまとめた本を出版した。

昴さんは、自分の経験をまとめて客観的にとらえ最終的に笑いに変えよう、として本を書いたと言っていた。

悲壮感がないのは、どんなことの中でもささやかな笑いや、できることを見つける喜びがあったからなのだと思う。」

と書かれています。

マラソンの世界で大きな功績を挙げられた瀬古さんにそのような悲しいことがあったとはつゆ知らず、早速瀬古昴さんの本を取り寄せて読んでみました。

昴さんは、「25歳で血液がんの一種「ホジキンリンパ腫」を発症し、33歳までの8年間に治療、入院、たびたびの再発」に見舞われたのだそうです。

この本は、そんな青年が過酷な現実を明るく、時には笑いを誘う筆致で描き出されています。

本の中で昴さんは、「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」というチャップリンの言葉を引用して、客観的にみることで辛いこともユーモアに変えられると思った」と書かれています。

祖母、両親、兄弟の深い愛情に満ちた本であります。

本は2021年の3月20日に発行されています。

巻末の著者の略歴には、

「1986年、東京都生まれ。

大学ではあまり勉強せずにエコ活動を行ない、 卒業後 1 年間会社で働いたあと「ピースボート地球一周の船旅」に参加。

帰国して約1年後の2012年に悪性リンパ腫の一種である結節硬化型古典的ホジキンリンパ腫を発症。

数々の化学療法、弟をドナーにした骨髄移植、免疫療法薬オプジーボなどの治療を経験するも、一度も病気は消えず、現在も副作用や合併症と付き合いながら治療を続けている。」

と書かれています。

しかしながら、残念なことに2021年4月13日に三四歳でお亡くなりになったのでした。

本の出版から一月もしないうちのことであります。

明るく書かれている本ですが、どれほどの苦労があったのか察するにあまりあります。

海原先生も「隠れた努力に気がつくと自分も頑張ろうと思えてくるのだ。」と書かれています。

今月の総門の下に掲げた坂村真民先生の詩を思います。

つゆのごとくに
いろいろのことありぬ
いろいろのめにあいぬ
これからもまた
いろいろのことあらん
いろいろのめにあわん
されどきょうよりは
かなしみも
くるしみも
きよめまろめて
ころころと
ころがしゆかん
さらさらと
おとしてゆかん
いものはの
つゆのごとくに

いろんな人が、それぞれ、いろんなところで、大なり小なりいろいろの目にあいながらも、皆それぞれ目立たぬ努力をしているのです。

楽しく振る舞っているようでも、その裏には目立たぬ努力があります。

そんなことを思うと、生きる力がわいてきます。

 
横田南嶺

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