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臨済宗大本山 円覚寺

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2021.12.15
今日の言葉

遠きにありて思うもの

ふるさとは遠きにありて思うものとは、室生犀星の有名な言葉であります。

故郷を遠く離れて詠った言葉かと思うと、そうでもないらしいのです。

神奈川新聞の十二月十日「照明灯」の記事で知りました。

記事によると、

「有名な一節で知られる室生犀星の「小景異情」は遠方から故郷を思うのではなく、帰京前に郷里で詠まれた詩だという。

懐かしいはずの古里で疎外感にさいなまれ、二度と帰るまいと誓うー。そんな複雑な思い」が込められているのだそうです。

私なども故郷を離れて、もう四十年近くになりますが、そんな複雑な思いではなく、やはり単純に今も遠きにありて思うものであります。

先日毎日新聞の『余録』を読んでいると、

「マグロは縄文人も食べていたという。万葉集にはその古名「しび」の漁に材をとった歌がある」

と書かれているのを見て驚きました。

マグロの古名は「しび」だというのであります。

私の田舎では、まぐろのことを「しび」と呼んでいました。

マグロというのだと知ったのは、私など故郷を離れてからのことでした。

はじめは「しび」のことを、関東の人は「まぐろ」と呼ぶのだと思ったのでした。

しかし、「しび」と呼ぶ人は、ほとんどいないので、「しび」というのは田舎の方言くらいに思っていました。

それが、なんと万葉集にもでている古名であるとは驚いたのです。

私の故郷新宮市は今でも帰省するにはとても時間のかかるところであります。

しかし平安時代の頃から熊野詣でが盛んであって、皇室の方などもよくお参りになっているのです。

都から独自の文化が伝わっているという一面もある町なのであります。

「しび」がどのような経緯で使われるようになったのかは分かりませんが、不思議に思いました。

そしてそんな記事を読んで、故郷のことを思い出したのであります。

よく人から故郷に帰ることがあるのですかと問われることがありますが、ほとんどありません。

数年に一度くらいのことであります。

なんとなれば、私は修行道場のお世話をする役目を務めていますので、若い修行僧達を大勢あずかっています。

そのためには、なるだけ外出しない方がよいのであります。

出かけるにしてもできるだけ日帰りで帰るように心がけてきました。

しかし、新宮に帰るには、日帰りは無理なのであります。

ですから、講演などの公用があるときにしか帰っていないのであります。

それがこの年末に故郷新宮市で講演会を催してくださることになっています。

八年ほど前にも新宮市の主催の講演会に招かれてゆきました。

ちょうど紀伊半島豪雨から二年経った時でありました。

今から十年前の秋九月、集中豪雨で大きな被害を受けたのでありました。

大勢の人が亡くなりました。

町が泥どらけになってしまったのでした。

身内を亡くされた方もいらっしゃいます。

そんな被災した町の人たちに話をして欲しいと頼まれて新宮市の市民会館で講演したのでした。

その講演録は、私の著書である『祈りの延命十句観音経』(春秋社)に全文が載っています。

そのはじめのところに書いた文章を転載します。

「平成二十三年九月紀伊半島を襲った台風十二号によって、和歌山県は大きな被害を受けました。私の生まれ育った新宮市でも多くの方が亡くなりました。

平成二十四年の九月には、熊野川のほとりにできた慰霊碑でお経をあげたところ、市内の方々が百名を越えるほど集まってくださり、期せずして盛大な慰霊祭になりました。その折りにほんのわずかな時間法話をいたしました。

更に平成二十五年には新宮市仏教会、新宮市、新宮市教育委員会の主催で追悼講演会が開かれ、そこで話をいたしました。

その日も折からの台風の影響もあって、大雨でした。大雨洪水警報も出されて、講演会の開催も危ぶまれました。

地元の方も二年前を思い出すようだというほどの豪雨でした。

しかしながら、「念ずれば花ひらく」と申しましょうか、奇跡的にも講演会の小一時間前には警報が解除され、私が講演会場に着いたときには雨もあがり、控え室に入ると窓の外には、きれいな虹が見えました。

きれいな虹だなと市長さんと眺めていると、さらに西の空は見事な夕焼けに染まりました。

そんな中、新宮市民会館に千人を超える方々が集まってくださり、講演をいたしました。」

と書いています。

そして

「まず手を合わせて祈ります。第一に亡くなった大勢の御霊が安らかでありますように。

次に熊野の大自然が穏やかでありますように。

最後にこの熊野で暮らすみんなが幸せでありますようにと、心から祈ります。

今年で、故郷を離れてちょうど三十年が経ちます。」

というところから講演が始まっているのです。

ちょうど十年前に、この市民会館は建てかえの計画がなされていたのでした。

ところが、豪雨の復興の為に再建は後回しになりました。

そして十年で、ようやくその市民会館が、「丹鶴ホール」としてできあがったのでした。

私が卒業した丹鶴小学校のあった場所に、このホールはできあがりました。

丹鶴は、近くのお城の名でもあります。

丹鶴ホールのオープニングの行事のひとつとして私の講演会を催してくださるのであります。

なんとも有り難いことであります。

こんどの大ホールは800名収容できるそうです。

そこに800名の方を入れる予定だそうです。

800名も来てくれるのだろうかと思っていましたが、十一月の下旬にあらかじめ入場チケット配布したところ、なんと半日で800枚が無くなったのだそうです。

聞くところによると、雨の降る中を朝早くから並んでくれた人もいるそうなのであります。

そういう話を聞きますと、こちらも気合いが入るものです。

演題は、「ほほえみの種をまこう」としています。

豪雨から十年、いろんな悲しみ、苦しみを抱えながらも新しいホールもできて、これから未来へ向けて、少しでも明るい方へと進むように願いをこめて話をしてこようと思っています。

新型コロナウイルス感染症が今のところ下火なので開催できるのが幸いであります。

 
横田南嶺

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