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臨済宗大本山 円覚寺

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2021.08.21
今日の言葉

こつこつ、こつこつ

立川談慶師匠の小説『花は咲けども噺せども』の本を紹介したところ、本を書かれた立川談慶師匠からご丁寧なお手紙を頂戴しました。

驚いた次第です。

私のこのささやかなラジオがどこで誰が聞いてくれているのか、こちらからは全く分かりませんが、まさか直接師匠のお耳に入っていたとは思いもかけないことであります。

あのあと、更にこの本を読み進めて、改めて良い本だとしみじみ感じています。

なにしろ、明るく楽しく読めます。

そして、心に染み入る言葉がすっと入ってきます。

楽しく読んでいて、じんわり心に染み入って、何か元気になって、また頑張ろうという気持ちになれる本なのです。

まだ売れない二つ目の頃に、突撃落語という仕事をさせられていて、暑いサウナの中で落語をなさったという話の後に、小説の主人公の錦之助と奥さんの文子さんの会話が綴られています。

帰宅した途端、一気に疲れが襲ってきたという錦之助に、文子夫人が一言、

「よかったじゃない、サウナにも入れて、疲れも取れて、おカネにもなるんだから」

というのです。

「いや、余計疲れるよ、サウナの中で落語だぜ。神経使うからくたくただよ。……」と答えています。

新しく担当になったADの青年が気が利かないというと、文子夫人は、「その人昔のあなたに似ているかも」と言います。

そんなことはないという錦之助に、師匠の冷蔵庫の中身を全部腐らせたことを持ち出します。

師匠が長期ヨーロッパ旅行に出掛けて留守の間、冷蔵庫の霜取りをしておこうとして、中身を取り出し、霜をキレイに落として、中に入っていた物を元に戻しておいて、最後にコンセントを入れ忘れてしまったというのです。

師匠は激怒して、破門寸前にまでなったところ、師匠の奥様の「あら、中身がなくなってキレイになってよかったじゃない」という一言に救われたことなどを語っています。

そのあと、また明日ほぼボランティアのような仕事を頼まれているという錦之助に

「いいじゃない。金額じゃなくて頼まれるってこと。コツコツ積み重ねてゆけば、必ず誰かは見ていてくれるはずよ。コツコツ!」

「コツコツか」

「そう、コツコツコツコツ」

「何事もコツコツコツコッ」

コツコツ、コツコツ。

錦之助自身、まだ二つ目だ。

前座を終えて芽が出てやっと花が咲きかけたばかりの状態か。

ここからさらにコツコツと積み重ねてゆくことで、真打ちという実になってゆく。

長く、切なく、厳しい戦いなのだ。

コツコツコツコツとはそんな不器用な彼の人生を象徴するリズムなのかもしれない。
でも、もう前座のあのころとは違う。錦之助の目の前には、三人の心強い味方がいる。
「そういえば、コツコツってなんだかタップの音みたいね」
「タップか、確かに」
「そうコツコツ、コツコツ。タップにしろ落語にしろ、気の遠くなるようなコツコツで作られているのかもね」

という具合に、夫婦の微笑ましい光景が目に浮かびます。

そして何の道においてもコツコツ勤めるしかないことを、笑いながら教わるのであります。

コツコツというと思い出すのは、イエローハット創業者の鍵山秀三郎先生のことです。

鍵山先生が、ある時若い人たちから成功の秘訣を問われ、「成功のコツは二つある」と答えて白板に、

「コツコツ」と板書されたという話です。

コツコツしかないのであります。

坂村真民先生もまた「コツコツ」を大切にされました。

「こつこつ」という詩があります。

 こつこつ
こつこつ
こつこつ
書いてゆこう
こつこつ
こつこつ
歩いてゆこう
こつこつ
こつこつ
掘り下げてゆこう

そうして、掘り下げて、ただひたすら積み重ねてゆくのであります。

 つみかさね
一球一球のつみかさね
一打一打のつみかさね
一歩一歩のつみかさね
一坐一坐のつみかさね
一作一作のつみかさね
一念一念のつみかさね
つみかさねの上に
咲く花
つみかさねの果てに
熟する実
それは美しく尊く
真の光を放つ

談慶師匠の小説には、こんな言葉もございます。

「でもさ、仕事って、迷い込んできた子犬みたいなものだなあって俺なんかは近頃思うんだよな。

キツイ、厳しい仕事でもさ、自分を頼りにクンクンと尻尾振ってやってきたやつだと思うとさ、かわいく思えてくるような気がしてさ。」

登場人物の言葉なのですが、談慶師匠の思いがこもっています。

そんな気持ちで、談慶師匠は、通常四、五年ほどの前座修業を九年半もなさったのだと思いました。

小説の中には、錦之助が、妾馬を演じる為に、都々逸の師匠について稽古する話もございます。

妾馬に出てくる八五郎が最後に殿様に、お酒に酔った勢いで都々逸を口ずさむのですが、その為に小唄の道場に通っているのであります。

師匠は、「鼻歌レベルでいい」というのですが、「その鼻歌というのが余程歌い込まないとできない芸当」だというのです。

何の道であれ、正直に地道にコツコツ、コツコツ勤めるばかりです。

その積み重ねによってこそ、道が開けてゆくものです。

小説『花は咲けども噺せども』から学びました。

最後にもうひとつ、真民先生の「こつこつ」を紹介します。

 こつこつ
こつこつ
こつこつ
木をつついて
孔をあけ
巣づくりをする
きつつきのように
こつこつ
こつこつ
こんとん未明に起き
詩を書き続けてゆこう

 
横田南嶺

こつこつ、こつこつ

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