戒のある暮らし
それが只今、YouTube小池陽人の随想録で公開されています。
小池さんのYouTubeは、登録者も三万人を超えていて、私のつまらぬ話も随分大勢の方が視聴してくださっているようで、感謝しています。
円覚寺のYouTubeチャンネルとは一桁違うのであります。
また驚くことに、たくさんのコメントに対して、ひとつひとつ小池さんが実に丁寧に返事を書かれていることであります。
よくこれだけ、こまめになさるなと感心します。
こういう努力の積み重ねが、人気の出る秘訣なのでしょう。
とても私などにはまねできません。
どうぞ、コメントとその返事もご覧いただければと思います。
合計四回のうち、只今第三回まで公開されています。
第一回には、私と仏教とのご縁について、話をしています。
最近は、既に私のことをご存じの方に話をすることが多くなって、自分のこれまでの歩みを語るようなことは少なくなっていました。
それが久しぶりに話をしましたら、一人でしゃべり過ぎてしまったのでした。
第二回もまた、坂村真民詩とのご縁について聞かれましたので、これもまた、あふれる思いを一挙に話しましたので、しゃべり過ぎてしまいました。
第二回の収録を終えたところで、あちらのYouTubeを撮影されている方から、私のしゃべりすぎを指摘されてしまって、赤面しました。
第三回は、少し対談らしくなっています。
第三回では、戒にまつわる話をしています。
戒とは、戒めと書きますが、元来の意味は習慣という意味です。
私たちが、生きてゆくうえで良き習慣を身につけましょうという教えです。
しつけという意味合いもあります。
基本となるのが、五戒であります。
生きものをむやみに殺さないように
人のものを盗まないように
男女の道を乱さないように
嘘偽りを言わないように
お酒に酔って迷惑をかけないように
という五つの戒です。
こういうことを習慣として身につけていると、お互いに幸せに生きられるのです。
もっとも、どの戒も、完全に守れるものではありません。
戒に背いていないかな、戒に背いてしまったな、申し訳のないことをしたなと自分自身を省みることが大切なのです。
これでいいかな、これでいいかなと絶えず問い続けることが重要です。
人間ですから、気がつかないうちに人を傷つけてしまっているものです。
申し訳ないと心でお詫びすることが第一なのです。
そんな心が私達を良き方向へと導いてくれるのです。
小池陽人さんは、現代の環境の問題にも心を痛められていて、環境問題を考える上でも、一人一人が戒を守ることが必要だと説かれていました。
ちょうど、『日本講演新聞』を読んでいると、環境問題についての記事がありました。
谷口たかひさという青年が、書かれていました。
いま世界で気候変動が起きている異常事態は五つあると書かれています。
第一は、干ばつだそうです。
温暖化で気温があがり、水分が蒸発して地面がカラカラに乾き、作物が獲れなくなるのだそうです。
第二に、生態系の変化で、体長五、六センチほどの「サバクトビバッタ」が大量発生し、穀物を食い荒らしているそうで、ソマリアでは国家非常事態宣言が出されているとか。
第三には、火災、森林火災が増えているそうです。
第四には、台風、豪雨、洪水だそうです。これはわが国でも思い当たるものです。
海水の温度があがって多発するようになったとのことです。
第五は、氷が溶けることだそうです。南極の氷などが溶けるのだそうです。
「今、地球の温暖化は世界中の科学者の予想をはるかに上回るスピードで進行しているのです」と書かれていました。
これらの説にはいろんな見方があるので、一概にどうということは難しいと思っています。
しかしながら、寺にいても確かに氷の張る日は少なくなっていますし、季節の花も毎年開花が早くなっていると感じてはいます。
私は、今の僧堂にもう三十年住んでいるのですが、梅の花が十二月のうちに咲いたことはありませんでした。
一月の制末の大摂心の終わり頃に一輪か二輪咲くかどうかという感じでした。
二十六日の講了の偈に、梅の花を詠えるどうか、いつもギリギリまで分からなかったものでした。
今回は、昨年の十二月に梅が開花しました。
ボタンの花が咲くのも、以前五月の連休でしたが、四月の終わり頃に咲くようになり、それが四月の半ばに咲くようになり、この頃は五月の連休には、花がすっかり終わってしまっています。
こういうことが温暖化なのかどうか、私には判断できませんが、関係しているのかもしれません。
それから、夏の気温が上がっているのも確かでしょう。
それらの原因が私たちの人間の暮らしにあるのか、もっと大きな地球規模の変動なのか、これも私には分かりかねるものです。
そうはいっても私たちの暮らしを見直すことは良いことだと思います。
二酸化炭素の排出量と言われても、ピンとこないのですが、欲望のままに暮らすことは、破滅の道になることは仏教でも説くところです。
小欲知足、欲を少なく、足を知る暮らしをすることは、自分自身も幸せにしますし、環境にも良いことは間違いありません。
また、今日はネット社会でありますから、人を傷つける言葉や行いは、一度ネット上にあがると、消えることはありません。
自分一代のみならず、子や孫の世代までつきまとうのです。
自分も、自分の子孫も幸せに生きるには、戒による暮らしをするに如くものはないと思います。
戒を守れば戒に守られると申します。
戒のある暮らしをすることこそ、今私たちが幸せに安心して生きてゆける道なのだと思うのであります。
そんな話を小池陽人さんとしたのでした。
横田南嶺