ウイルス一個では感染しない
題名は『コロナ時代を生きるヒント』というものですから、関心があります。
もっとも、コロナ時代を生きると書いていますが、本書は、月刊『潮』誌上に、2019年三月号から2020年五月号まで連載されたものに加筆修正されたものですから、実際のコロナ問題について触れたものは、最後の方にあります。
終わりの方に「免疫の力」という一章がありました。
これなどは、まさしくコロナウイルスについて書かれたものです。2020年六月号に発表されたものです。
私も、このコロナ問題の究極は、やはり免疫だろうと思っていますので、早速この章から拝読しました。
免疫には、「自然免疫」と「獲得免疫」とがあるそうです。
ワクチンの接種によって得られるのが「獲得免疫」です。
ワクチンについて、臨床試験の必要性が書かれています。
あまりにワクチンの作成を急ぐと、ワクチンが却って病を引き起こすことにもなりかねないそうです。
過去にもそのような歴史があったそうなのです。
難しい問題です。
それともう一つの免疫が「自然免疫」です。私たちが生まれ持っている免疫です。
鎌田先生は、
「すでに多くの人が感じているように、新型コロナとの闘いは、同時にデマとの戦いでもある」と指摘されています。
そこで、鎌田先生は、免疫学の第一人者である大阪大学免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之先生を訪ねて話を聞かれて書いてくださっています。
宮坂先生は、そんな「デマに踊らされないためは何よりも正しい知識とリテラシーを身につけることが大切だ」と語っています。
そのあとに
「大事なことはウイルスを大量に浴びないことです。
少量であれば、自然免疫で追い出せるのです。
大量に浴びないためには、やはりソーシャル・ディスタンシングです。
専門家の間では、新型コロナは一○○万個ほど体内に入らないと感染は起こらないと言われています。
一個はもちろん、一○○個や一○○○個、 一○万個入っても基本的には感染しないのです。
正しい知識を持ち、自分の頭で考える。つまり、リテラシーを身につける。
多くの人がそうなれば、デマは拡散されなくなるはずです」
ということが書かれています。
それに対して鎌田先生も
「これには僕も膝を打った。
少量でも体内に入れば感染するものと思われがちだが、決してそんなことはないのだ。
あくまで量の問題であり、だからこそソーシャル・ディスタンシングが大切なのだと」
と納得されています。
少しでも触れたら感染するように思うのは間違いなのです。
私も三月末に、和歌山のお寺で、新型コロナウイルス感染の方と同室でほんの十五分ほどいました。
離れて挨拶した程度だったので、だいじょうぶでした。
ほかのお寺で、ともに会食された方は罹患してしまいました。
ですから、なるほどと思いました。
そうなると、自然免疫を強くする方法を知りたくなります。
あまり本書の内容を紹介しすぎると、本が売れなくなってしまうかもしれませんが、
「自然免疫を強くする方法は、……何よりも体内時計を狂わせないことが大切だ」
ということです。
そして、
「では、体内時計を正しく動かすためには何をすれば良いか。それは規則正しい生活です」
ということであります。
「朝早く起きて、朝日を浴びながら歩く。
あるいは軽度の運動をする。
そうすることで、体内時計の刻み方を円滑化させることができます。
さらに体内時計をうまく動かすためには、血液やリンパの流れを良くするために体温を上げることが大切です。
軽い運動はもちろん、湯船に浸かることも有効です」
ということです。
その他にも、繊維分や発酵食品を取ることを紹介されています。
規則正しく、適度の運動して、繊維分や発酵食品を取る、こういうことで「自然免疫」が強くなるのであります。
私も、毎朝早く起きて雑巾がけから始まり、境内の掃き掃除で運動して、野菜をたくさんいただき、自家製の発酵食品をいただいています。
理にかなったことだったのだと改めて思いました。
まだまだ分からないことも多いのですが、正しい知識を得ることが大事であります。
横田南嶺