鍵山秀三郎先生
二月の末日、鍵山秀三郎先生を久しぶりに訪ねてきました。
かねてよりご療養中とうかがっておりましたので、お見舞いにゆきました。
鍵山先生とは、何度もお目にかかり、円覚寺でもご講演をしていただいたこともあります。
とりわけ、PHP研究所の企画で、平成二十七年の暮れから、何度も対談を繰りかえして、一昨年に
『二度とない人生を生きるために いつでも どこでも 精一杯』
という二人の対談本を出せていただいたこともあります。
対談して以来、ご体調がすぐれないとうかがっていましたので、お目にかからずにいました。
久しぶりにお目にかかり、爽やかな笑顔と、清澄なご人格に接して、こちらが清められる思いがしました。
鍵山先生は、誰もがご存じのイエローハットの創始者であります。
ご一代で大企業を立ち上げられた経営者でありますが、トイレ掃除をよくなさり、日本を美しくする会も作られています。
PHP研究所の『鍵山秀三郎一日一話』にこんな言葉がございます。
「イエローハット」の由来
「交通安全の黄色い帽子」がイエローハットという店名の由来です。
当時業界は、ほとんどが暴走族相手の商売でした。この実体を苦々しく思っていた私は、女性でも気軽に立ち寄れるようなお店作りに努めました。具体的には、まずトイレをきれいにしました。イエローハットに来たら、「暴走なんかできない」という気持ちにさせるようなお店にしたかったからです。
鍵山先生の理念のよくあらわれた言葉です。
理念だけでなく、実際に業績をあげられて大企業にされたのですから、頭がさがります。
私も鍵山先生からは多くの事を学ばせていただきました。
豊洲にあるPHPで対談をした時のこと、鍵山先生はいつも相手を待たせないように、時間より早く現地に来られますので、私もまた鍵山先生を待たせることのないように早めに出かけていました。
ある日の事、約束の時間の一時間も早く着いてしまいました。一時間は早すぎるので、どこか近くで時間調整をしようかと思っていたところ、なんと鍵山先生が玄関の前で直立不動の姿勢で、既にお待ちになっていたのでした。
慌ててこちらもPHPに入ったことでした。
更に慌てたのは、PHPの方々であることは言うまでもありませんが……
素晴らしい先生とご縁をいただいたことも、有り難いことです。
写真は、平成二十九年一月にPHPで対談した折のものです。
横田南嶺