四つの課題
今年初めて勤めた講演で、依頼主から与えられたテーマは、
1,「いのち」について、
2、「人さまに尽くす気持ち」について、
3,「和」について、そして4,「仏」とは何かということでした。
どのテーマも、どれも奥深いものばかりです。
この四つを掘り下げてゆくと、仏教をより深く学ぶことができるし、これからの世の中を生きてゆくうえにおいても、大きな智慧を生み出してくれると思います。
まず第一のいのちとは、決して何か一つだけで成り立つものではありません。
両親の出逢い、お日様の光り、空気、水、食べ物、四季のいとなみ、それらがすべて相関わりあって成り立つものです。
二番目の人の為に尽くすということは、仏教の言葉でいえば「利他」ということです。お互いのいのちは決して孤立したものではなく、まわりとの関係性においてのみ成り立つものでありますから、まわりの人の為にはたらいてこそ、いのちは輝くものであります。
三番目が、「和」です。人の為に尽くすことは大事ですが、あまり過剰になっては、「小さな親切、大きなお世話」になりかねません。
一方的に尽くすだけはよくないのです。
そこの全体の調和がとれていることが大事です。お互いに他の為に尽くしながら、それでいて全体が調和していることが理想です。
無理に統一しようとすることではなくて、お互いの違いを認めながら調和するのです。
人のみならず、自然環境などまわりの為に尽くすことによって、大自然の調和が保たれてこそ、お互いの人格も完成してゆきます。
そうして完成された人格を「仏」というのです。仏教の目指すところなのです。
「いのち」、「利他」、「和」、「仏」、大事な四つの言葉です。
横田南嶺