森信三先生の書
お正月に行徳哲男先生から、森信三先生の書を頂戴しました。
思いもかけぬ元旦の贈り物でありました。
書は、「清虚」。
どこかしら、良寛さんを思わせるような、澄んだ書であります。
『森信三一日一語』(致知出版社)は、常に座右に置いている書のひとつです。
短い言葉ながら、真理をついている言葉が綴られています。
いくつかを紹介しましょう。
一月二日
つねに腰骨をシャンと立てること― これ人間に性根の入る極秘伝なり。
一月四日
逆境は、神の恩寵的試練なり。
一月五日
絶対不可避なる事は絶対必然にして、これ「天意」と心得べし。
一月七日
求道とは、この二度とない人生を如何に生きるか― という根本問題と取り組んで、つねにその回答を希求する人生態度と言ってよい。
一月十一日
一切の悩みは比較より生じる。
人は比較を絶した世界へ躍入するとき、始めて真に卓立し、所謂「天上天下唯我独尊」の境に立つ。
一月十二日
悟ったと思う瞬間、即刻迷いに堕す。
自分はつねに迷い通しの身と知るとき、そのまま悟りに与(あず)かるなり。
一月十六日
信とは、人生のいかなる逆境も、わが為に神仏から与えられたものとして回避しない生の根本態度をいうのである。
一月二十五日
いかなる人に対しても、少なくとも一点は、自分の及びがたき長所を見出すべし。
森先生の書をいただいて、改めて『森信三一日一言』を繙いてみました。
どの言葉も、一生の課題とすべきものであります。
さすが、森先生の高弟寺田一清先生が心血を注いで編集された書物です。読むたびに襟が正される思いです。
今年私は、
「いかなる人に対しても、少なくとも一点は、自分の及びがたき長所を見出すべし。」の一語を
自らの戒めとして保ちたいと思っています。
森先生の書は、ご子息からも既に二輻ほど頂戴していますが、折りに触れて床に掛けて拝見し、
自らの戒めを思い起こすようにしたいと思っています。
横田南嶺