餅つき
もともと僧堂の餅つきは、十二月二十八日の未明に行っていました。
真夜中に、修行僧たちで粛々とついていたのでした。
ところが、私が僧堂で修行時代に、修行僧が五人ほどに減ってしまい、五人だけでたくさんの餅をつくのが困難になりました。
そこで、当時の老師と相談して、少し前倒しさせていただいて、二十七日の夕刻に、お手伝いを頼んで行うようにしました。
それが、今日までそのまま続いています。
今では、修行僧たちだけで十分餅をつけるのですが、二十七日の夕刻につく習慣が残っているのです。
そもそもが、餅つきのお手伝いをいただくためだったのですが、
餅つきそのものが今や珍しいのか、この頃は多くの方々が家族連れなどで来られるようになりました。
そして、今や手伝いどころか、僧堂の修行僧たちが餅をついているのを眺めては、つきたてのお餅を食べるという有様になってしまいました。
何人もの修行僧は、その接待係となっています。
これは考えものだなと思いつつも、普段から僧堂は、多くの皆様方のおかげで修行をさせてもらっていますので、これもまた「報恩底(ご恩返し)」のひとつかと思うようにしています。
かまどを使ってせいろで餅米を蒸して、はじめ四人ほどでこねて、それからその四人で軽くついていって、最後に大きな杵で一人がつきあげるという形で行っています。
もう気がついてみると、こんな餅つきを三十年もやっています。
いまなお現場に立って、餅つきを行えるのは健康で元気な証拠、有り難いことです。
餅つきで一番気をつけているのは、誰もけがをしないようにすることです。
そんな思いで、餅の手返しやこねることを行っています。
そして、少しは餅もつきました。
横田南嶺談