心のサプリ
毎日新聞の日曜版には、心療内科医の海原純子先生のコラム「心のサプリ」が掲載されています。
海原先生は、円覚寺の夏期講座にもお越しいただいたことがあります。
毎週の「心のサプリ」は勉強になります。
今月二十二日の日曜日には「クリスマスの季節」と題した深い内容の文章でありました。
「街にクリスマスソングが流れ、イルミネーションが点滅している。ショッピングセンターの近くを歩くと、休日は買い物袋をもった親子連れの姿を目にすることが増えた。「あー、またこの季節がやって来たんだ」と思う心の端にちょっぴりひっかかるものがある。クリスマスから年の瀬のあわただしさと、うきうき感、華やかさがあふれる空気故に、この空気をつらく感じる人もいるに違いないと思ってしまうのだ。」
という文章から始まっています。
「予期しない災害で大切な人を失った人がいる。想像もしなかったであろう事件や事故で愛する家族を失った人もいる。「去年の今頃ごろは……」と失った日々を思い出す方にとっては、この季節はどんなにつらいだろう。」
と海原先生は感じられているのです。
こういう、人のかなしみや苦しみを思う心を、慈悲の「悲」というのです。
海原先生は更に、
「とはいえ、直接的につらい方たちの傍らにいて何かすることはできず、具体的にできることは思いつかない。……この季節は、クリスマスツリーやイルミネーションを無邪気に眺めることができない方のために遠くから祈ることにしようと思う。」
と仰せになっています。
そうして、コラムは
「見知らぬ人へのささやかな温かさをクリスマスの季節、つらい心をかかえた人へのささやかな祈りにしたいと思う。」
という一文で終えられています。
読むだけで、心が温まる思いがします。
まさに「心のサプリ」なのです。
感動しましたので、海原先生に久しぶりにお礼のお手紙を認めて、『円覚』正月号と来年のカレンダーを同封して送りました。
海原先生は、円覚寺の猫を撮影に、訪れることもあるそうなのです。
またお目にかかりたいと思う先生であります。
横田南嶺