釈宗演老師百年遠諱を迎えて
釈宗演老師百年遠諱法要 献粥 @仏殿
本日の釈宗演老師百年遠諱法要を迎えて、横田南嶺管長からのお言葉です。
「 本日十一月一日、釈宗演老師の百年諱の正当を迎えます。
大正八年(1919)の今日正午に、東慶寺に於いて宗演老師は御遷化なされました。
宗演老師のことを思うと、仏陀の言葉を思い起こします。法句経の有名な言葉です。
花の香りは 風にさからいてはゆかず
されど よき人の香りは
風にさからいつつもゆく
よき人の香りは すべての方に香る
という言葉です。
宗演老師は、安政六年にお生まれになり、明治維新がなり、廃仏毀釈の逆風が吹いている中を、
伝統の禅の修行を終えて、更に近代化の中を生き抜くべく慶應義塾に学び、
セイロンにまで行かれて仏法を学びました。
世は富国強兵へと突き進み、古い因習にとらわれた仏教など顧みられなかった中を、
三十二歳で円覚寺の管長に就任しました。
明くる年にはシカゴの万国宗会議で演説されて、ひろく西欧の人達にも仏陀の心を伝えられました。
このことが縁になって、鈴木大拙が渡米し、アメリカからはラッセル夫人が来日して
宗演老師に参禅されました。
さらに、四十五歳で再度渡米し、続いてヨーロッパを廻り、広く世界に禅を説かれました。
「風に逆らいつつも香る」という通りであり、更には広く世界に香るという「すべての方に香る」ご生涯でありました。
私どもも、宗演老師の母校慶應義塾大学での特別展、記念講演や、宗演老師が学長を務められた花園大学での特別展、
記念講演や、さらに宗演老師の故郷福井県高浜での記念講演と顕彰碑の建立、大法要などの記念行事を行ってまいりました。
記念出版として、岩波文庫から『禅海一瀾講話』と春秋社から『観音経講話』をそれぞれ復刊しました。
私も、宗演老師のことを諸方で講演してまわり、『大法輪』や『円覚』誌、季刊『禅文化』、
『臨済会報』などや、慶應義塾や花園大学で出された図録などに宗演老師の事を書いてきました。
そんな長い間の、報恩行も本日にこの半斎法要に集約されることとなります。
実に感慨深い思いであります。
宗演老師の和歌に
わが身には 昨日もあらず
今日もあらず ただ法の為
つくすなりけり
とありますように、なお一層、宗演老師の求められた真の平和の実現の為に、
報恩の行を積んでゆかねばならないと思っています。」