正義とは何か?
先日、円覚寺派管長・横田南嶺老師は、ご自身が総長をしている花園大学で行われた
摂心で提唱をされ、また、学生達とともに坐禅をされました。その時に老師と学生との
間に印象的なエピソードがあり、そのことを老師が文章にされましたので掲載します。以下。
「彼岸会中の一日
花園大学の摂心に行ってきました。
丸一日朝から学生さん達およそ七十名と
坐禅して、お昼のおうどんを僧堂の作法に
準じて一緒にいただきました。
その間に、一時間ほど提唱という講義をしました。
提唱といっても、本格的にやると
禅堂で皆坐禅の姿勢のままに
漢文の語録を読むですが、
学生さん達相手ですので、
いつも講義で使っている教堂で
皆も椅子に坐って聴いてもらいました。
一日の坐禅が終わった後
花園禅塾の塾生さん達と懇談会を設けました。
提唱という一方通行ではなく、
学生さんの側から聞きたいことに答えてあげるという
試みでした。
はじめ緊張していた学生さん達も
だんだん慣れてきて、坐禅に関する質問や
自分の体調のこと、寺を継いでゆく不安など
率直な質問がなされました。
いよいよ終了の時間になって、質疑応答も終わろうかという時に
一人の学生が挙手して質問されました。
真剣なまなざしで、「正義って何ですか?」という質問です。
もう時間ギリギリであるし、しかも帰りの新幹線の時間も
決まっていますので
とても多くは語れません。しかし、真剣なまなざしを見ると
いい加減にも答えられません。
そこでとっさに、
「正義とは何か
ともて難しい問題です。簡単に答えれるものでもありません。
私もこの後急がねばならないので
これだけは、覚えておいて欲しい。
これだ正義だと思ったら、もうそれは正義ではないということです。
正義を振りかざすと、必ず争いになる。人を傷つけるのです。
正義だと意識したら、もう正義ではなくなっているのです」と答えたのでした。
さて、その学生さんはどのように受け止めてくれたでしょうか。
正義を求める純粋な心は美しいが、諸刃の剣もあります。