とっさのはたらきー関山慧玄ー
京都の妙心寺を開山された関山慧玄禅師は、とても枯淡な暮らしをしていました。
ある時、雨漏りがして、禅師は寺で修行していた小僧さん達に、
何か器をもって来いと言いました。ある小僧さんは、とっさにザルを持って
差し出しました。禅師は、この小僧さんを大いに褒められました。
ある小僧さんは、台所に行って、何か良い器がないかと捜して
桶を持ってきました。これに対して、禅師は、役立たずめと言って叱りました。
常識で考えれば、雨漏りにザルは何の役には立ちません。桶の方がずっと役に立ちます。
しかしながら、禅ではそんな常識を重んじません。
その時、その場、何の分別もまじえずにとっさのはたらきを尊びます。
役に立つとか立たないというのは二の次なのです。
でも、そうかといって、このマネをしたところで、
禅師から大目玉をくらうことは言うまでもありません。
あくまでも、その時その場でどう動くか、心のはたらきが問われているのです。
(横田南嶺老師 『武渓集提唱』より)