老師 コーネル大学生との問答②
横田南嶺老師とコーネル大学生との問答の第2弾です。
学生: 私は、誰に対しても慈悲の心を持って対応しようとしています。
しかし、少し、不安があります。それは、欲張りな人、意地悪な人、
やきもちをやく人に対して慈悲の心で対応をすれば、それは、その人の
良くない心を増長させてしまうのではないかという不安です。
誰に対しても慈悲の心で応対をしながら、その人の良くない心を
増長させないようにするにはどうしたらよいでしょうか?
老師: それは、慈悲と言っても優しいとか同情だけが慈悲ではありませんから、
時には、この居士林の本尊である不動明王のように「ダメだ!」という
怒りの慈悲もある。子供がお菓子が食べたいというから、お菓子を
与えていたら、虫歯になってしまう。時には、「ダメだ!」といわなければ
ならない。
学生: 追加質問で、これは、アメリカや私たちが住んでいる社会に関わる質問ですが、
もし、「ダメだ!」と言うことができないような人だとしたら、例えば、
たとえ言っても聞き入れそうもない人や権力のある人なら、その人と
対立しながら、慈悲の心をもたらすことはできますか?
老師: それは、可能ではあります。しかし、いつ、その効果表れるかは計り知れない。
こちらが慈悲の心を持ってあげることはできますが、それが相手に行動の変化や
大きな変化をもたらすには、すぐに表れる場合と時間がかかる場合がある。
しかし、慈悲の心を向けていることは、決して無意味ではない。いくらかでも
影響があると思って私は生きています。
(平成30年6月17日 コーネル大学生との質疑応答より)