管長 新刊本 書評2
昨日に引き続いて、円覚寺派管長 横田南嶺老師の新刊本についての
アマゾンでの書評を紹介致します。素晴らしい書評ですので、
皆様もご一読ください。
{文学が「我々の心に訴えかけてくるもの」であるならば、この著者は素晴らしい文学者である。
著者自身が生きる中で感じ、経験してきたことが綴られているが、それは生きる者にとって
共通の悩み苦しみであり、まずそのことが「生きていて苦しいのは私ひとりだけではないのだ」
と勇気づけてくれる。
そしてその困難に対するヒントとして、その状況にぴったりとふさわしい詩が
紹介されているところがいい。
心理学のような細かな分析&解説がなされるよりも、言葉では表現しきれない
「曰く言い難し」の心の深層まで、その詩が救い上げてくれるからだ。
我々の日常の悩みは、はっきりと言語化できるようなことばかりではない。
なにごとにつけても根拠の明示を求めてくる傾向にある現代は、息苦しい、
生き苦しいことである。そのような中、我々の「声にならない声」を
救い上げてくれるのがこの坂村真民の詩だ。
読めば胸の奥まで浸透するこの坂村真民の詩の原点は、「母を思う心」に
あるという。}
世の中が個に分断され、コミュニケーション特殊化、人間関係の希薄化の
この時代にこそ帰るべき原点はここであったのかと、うれしくなる思いがした。
読後全体の柔らかくあたたかな印象は、他者に寄り添う心にあふれた、
この著者ならではのものであろう。
一つの立場にとらわれず、シスターの話や他の文化人との話、
また落語に出てくる人の話などさまざまな紹介があり、あらゆる側面からものごとが
捉えられているという点においても、本書が手に取りやすい魅力の一つであろうと思われる。