一日一語 53 ~僧堂攝心編~
白隠禅師が臘八大攝心の初日の晩に修行僧に示された言葉があります。
「夫れ禅定を修する者は先ず須らく厚く蒲団を敷き、結跏趺坐して
寛(ゆる)く衣帯を繋け、脊梁骨(せきりょうこつ)を竪起(じゅき)して
齊整(せいせい)ならしむべし・・・気をして丹田に満たしめ・・・」
「脊梁骨を竪起して」とは、いつも、わかりやすく言っている、
腰骨を立てることです。腰がひけてはいけない。腰骨を前に
押し出すようにして体をすっと整える。こうすれば、見ているだけで
すっとした雰囲気が出てきます。
そうして「気をして丹田に満たしめ」です。自分の気力を丹田という
おへその下に満たしめる。
そうしたら、「天地正大の精気をして鼻腔より臍下丹田に満たすべし」です。
この広い天地の精気を鼻から吸い込んでいって、おへその下、丹田を
しっかり満たしていく。
そしてこの気海丹田の深いところに気力がこもる、気力が充実してくると
意識をする。気が集まるということ、気というものは、結局のところ、
(その体の場所を)意識する、思う以外に他、方法はありません。
自分のあらゆる気力が丹田の一点のところに凝集していると思いを凝らす。
意識を集中する。そうしたら、今度は、丹田の底から鼻を通してまるで
細い糸のような、かすかな息がすっと出ていくようになります。
その呼吸の様子を念々観息して怠らずにやっていく。足が痛い、眠い、
気力が萎えてくる・・・と様々ものが次から次へと湧いてくるが
それらに意識をとらわれないようにする。
自分の気力のありったけを尽くして、この呼吸を守り抜いていく気力が
大切です。
森信三先生が次のようなことを仰せになっています。「本当の燃えている時には
疲れを感じない。疲れるのは、燃え方が足りないからだ。」と。
疲れた、眠い、足が痛いは、自分の集中、燃え方が足りないからです。
腰骨を立てておへその下、丹田を押し出すようにして、丹田に気力を全集中
させて取り組んでもらいたいと思います。
{平成27年12月2日 臘八大攝心2日目 『仏光録提唱』より}