願いに生きる
横田南嶺老師が、今日の「関東若獅子の会坐禅会」で提唱されたことをまとめてみました。
「衆生無辺誓願度」という言葉があります。人々の苦しみは無辺、尽きることがないけれど
自分は誓って人々を救っていこうという意味の言葉です。
松原泰道先生がよく引用した鳥のたとえ話があります。
ある山が山火事になっていろいろな動物たちが逃げてくる。ライオン、象、熊・・・と
最初はそれぞれがそれぞれの力でなんとか火を消そうとするが、火の勢いが強くて
手のつけられない状況になってしまった。
みんな、あきらめて避難し逃げていくような状況の時、一羽の鳥が小さな羽の上に
ほんの数滴の水をのせて山火事を消そうとしているではないか。
鳥が燃え盛る火に向かってほんの数滴の水をかけては、また、水辺に行ってを
繰り返している様子をみて、他の動物たちはあざ笑う。小鳥よやめよ、そんなことをしても
無駄だ。私たちライオンなど大きな力を持った動物たちがやっても消せないのに
あなたの小さな羽の上のわずか数滴の水で消せるわけがないと。
それに対して鳥は毅然と答えました。「それは自分も十分わかっている。しかし、
自分はこの山にお世話になったのであるから、たとえ、無理とわかっていても
私は命のある限りやり続けます」と。
この鳥の心こそが、人々の苦しみは尽きることはないが、できる限り努めていくという
精神を表しています。
ダライラマの祈りの言葉があります。
「世界が苦しみに耐え
生類が苦しみ続けているかぎり
この世での苦痛を取り除くために
願わくはわたしもまたそれまで
共にとどまらんことを」
世界の苦しみや様々な問題は尽きるとうことはない。それを何とかできるものは
総理大臣などの政治家や大企業、経団連会長など大きな力を持った人たちかも
しれない。そういうものに比べれば私たち一人一人は微力かもしれない。
しかし、この微力の力を続けて止めず、誓い、願いを持って生きることが
最終的には何よりも大きな力となるではないか。
たとえこの体は朽ち果ててもその願いは永遠に生き続ける。私も多少なりとも
松原泰道先生の願いを受け継いで、こうして皆様に微力ながらお話をさせて
いただいているのです。