これからのお寺のあり方
先日12日に行われた円覚寺派住職研修会での横田南嶺管長ご垂示の写真です。
横田南嶺管長が住職研修会で参加の和尚さん方に垂示されたことをまとめてみました。
東京・有楽町の国際フォーラム内にある相田みつを美術館では、先日まで
坂村真民と相田みつをの特別展をやっていました。3月から6月の3ヶ月の期間中に
なんと6万人もの人が会場に訪れたそうです。私も期間中何度も美術館に足を運び
相田みつを美術館が「どういうふうに人の心をとらえるような展示・工夫がなされているか?」
勉強してきました。
相田みつを美術館は年間40万人もの人が訪れ、この数は円覚寺の年間拝観客数とほぼ同じです。
東京のど真ん中の場所にある国際フォーラムに移ってからもう10年たっている。相田みつをさん
自身はもうお亡くなりなった人であるから新しい作品が出来るわけではない。そのような状況の中で
今まで書き残した作品でいろいろな企画展をして今に到るわけです。
東京の一等地ですから賃貸料は高いし、大勢のスタッフの人件費もあり運営をしていくには大変な
努力だと思います。
私たち、お寺というと別段客商売ではありませんが、やはり、これから学ぶべきことは多いと思います。
禅宗の歴史をみると、昔はお寺は人が来ない、来なくてもよかった。一般の人がお寺に入れるのは
お釈迦様の誕生日の降誕会くらいでした。我々坊さんは何をしていたのかというと修行をしていれば
よかったのです。その代わり、お寺の暮らしは鎌倉幕府が全部守ってくれていた。
ですから、禅宗ではおおよそ一般民衆に対しては残念ながらほぼ何もしていない。
禅宗の坊さんが相手にするのは幕府の上層部で、その一部の人に禅を説いていればそれでよかった。
明治維新まではその時代、時代の政権に守られてきましたが、維新で基盤を失います。
こうなると何がお寺を支えてくれますか?円覚寺では地元の有力な地主さんなどを信者に
することでどうにかここまでやってきました。しかし、今はご承知の通り、大きな家が続いて
いくことが困難な時代となりました。
それでは、これからの時代私たち、お寺を支えてくれるものはいったい何か?相田みつを美術館
から学ぶことの一つは、ああいった大勢の人を頼りにしていくことです。私たちお寺は、大勢の人々に
伝えるべきものを伝え、そして大勢の人々から大事にされていく。そういう新しい関係を気づき上げて
いかなければ生き残ることは難しいのではないかと思います。
檀家制度もありますが、段々と頼る割合が減っているのが現実です。それだけを頼るのはもう
かなり難しくなっていくでしょう。
相田みつを美術館には、大勢の何ら関係のない人々まで足をとめ、入っていく。もしろん、入場料も
かかりますから、それにかなうだけの、それだけのものがなければ年間40万人もの人は訪れないでしょう。
私たち坊さんも、まだ現状で大丈夫とあぐらをかいていてはいけません。大勢の人が集まるのはいったい
どういった工夫があるのか学んでいかねばならないときに来ているのではないでしょうか。