空の天気と我々の頭
4月9日(水)
先日、横田南嶺管長と相見された方がお話の内容をまとめて送ってきて
くださったので掲載させていただきます。以下。
質問:
坐禅を経験させていただき、頭を空っぽにして思いを断ち切り、自然と融合、一体化することが
いかに難しいことかと思いました。どうすればそれができるのか、そして、それができれば
何が得られるのかを教えていただければと思います。
管長さま:
思いを断ち切ることは無理ですね。無理です。無理なことをやろうと思ったって、
無理でございますからね。ただ、できることを確実にやっていく。確実にできることは
何かというと、あんまり思っても無駄だということを知ることです。考えるということは、
結局、頭の中で色々なことを考えますから。考える、わずらう。考えたからって、
それほどのことはないんですね。むしろ考えれば考えるほど空回りしてしまう
ということは学べるんですね。あんまり考えすぎると、ろくなことはないんだということを学ぶ。
それを知っていれば、今度はどれだけ考えが湧いてきても別段平気なんですね。
どのようにして考えが湧いてきたか、考えがどういうものであるかということが
わかってくると、考えに振り回されなくなってくるんですね。
今日はこれから雨でしょうね。そんなに騒がないですよ。でも、そういうことが
わからない人は、雲が湧いてきて大変だと思うかも知れません。雲が湧いてこようと、
お日様が消えようと、大したことないということがわかっておれば平気なんですよ。
雨を止めることは我々にはできません。でも雨が降ってきたって平気だと、
傘をさせばなんとかなるし、この雨はやがて止むんだということがちゃんとわかっておれば、
対応ができるわけですね。
坐禅をして、考えを断ち切って、いつも綺麗な青空の心、それは無理ですよ。いろんな考えが
わっーとくるっていうのは、これは天気でいえば、自然と人間は一つなんですね。別段一体に
なろうということが間違えなんですよ。自然の一部で生まれてきてるんですから。
空の天気と我々の頭はよく似てると私は思ってるんです。もやもやもやもやとしても、
いいんじゃないですか、今日は曇りだなと思っていれば。雨も降りますよ。時には雷が
鳴ることもあります。私らでもたまには腹立てることもありますから。
でもいいんじゃないですか。夕立だなと思って見ておれば。やがて止んでいくんですから。
全部ひっくるめて自然の姿です。そんなに考えを断ち切ろう、断ち切ろうとは。
それが自然の現象ですから。考えを断つことはできませんけども、考えに振り回されなくなる
ということは可能です。天気と一緒ですからね。雨が降ろうと、明日から晴れるということが
わかっていれば、そんなに動揺しないわけでしょ。私らも坐禅したって、気が落ち込むことも
ありますよ。この間も、親しい人が亡くなると、どうも一日何もする気がなくて。
ああ、しまったなぁとば少し元気になるんじゃなかろうかと。そういう感じですね。
そして生きていれば、それが、自然と、自然と一つなんですね。
考えを断ち切って大自然と一体になるって、頑張ろうとせずに、皆さんが大自然の通り
に生きている、そう思っているんですけどね。ところが、この頃は大自然に逆らうことが
いいように思って。それは人間の自然の気持ちですから。そういう時はもう横になって、
明日になれて、アンチエイジングなんて、若返ろうなんて、まあそれはやめたほうがいいと
思いますけどね。(笑い)