坐禅会提唱
5月14日(土)
管長様が企業の坐禅会で提唱されたことをまとめてみました。
(今週、管長様は、円覚寺派の被災寺院のお見舞いに行って参りました。)
茨城県下のあるお寺に行ったら、ほとんどのお墓が倒壊、ひっくり返っている。
ずっと見ているといくつか倒れていないお墓がある。一列全部倒れているものが、
多い中で、全く倒れていないものが、一つ二つある。
不思議にそれを眺めていると、そこに案内してくれた和尚さんが、
「倒れなくって、残っているお墓を作った石屋は、全部同じ石屋です。
そして、それは地元の長年この寺に出入りしている石屋です。」
といわれた。
仕事は、おそろしいものだなと痛感した。
何でもないときに、立派に石を積み上げることは、どこの業者でもできるが、
あれだけの地震に倒れないで立っていることはすごいことだ。
なぜ、地元の長年出入りしている石屋さんのお墓は、倒れなかったのか?
それは、その石屋さんがその土地の地盤をよく知っていたからだ。
この土地は、ゆるい地盤とよくわかっているから、それに耐えられるように
基礎からきちんと作っていたのだ。土地が弱いと知っていることが、
一番大事なことであるわけであります。
人の心もそうであります。大切なことは、やはり人間の弱さ、もろさを
知ることだ。お釈迦様は、それを無常であることを知るべしと言われています。
一瞬先はどうなるのかわからない、みんな無常であることを知ることが大切だ。
剣の修行の話に、10年修行をやると、自分の強さを知る。さらに
10年やると、相手の強さを知る。さらに、10年修行を積むと、
自分の弱さがわかってくる。おそらく、自分の弱さがわかったとき、
初めて「達人」となるのだ。そして、負けなくなる。
自分の強さだけわかっているのが、一番あぶない。
人間の弱さ、、もろさを知ると自然と他者に対するいくつしみ、
思いやりの心が湧いてくる。大自然を前にしてもろく、はかないと
痛感したとき、まわりの人とお互い助け合いながら、思いやりながら、
暮らしていくことが大切だと身にしみてわかる。