『硯の中の地球を歩く』青柳貴史(左右社)
「月の石を硯に」
製硯師の青柳貴史さんのお話をうかがってきました。
青柳さんは、浅草の宝研堂の四代目、
製硯師とは、石の切り出しから、加工、研磨まで
硯のどんなことにも対応できるプロという意味らしく、
日本では、貴史さんお一人とのこと。
先日、宝研堂にうかがった折には、ご不在で、このたび初めてお目にかかってお話を拝聴しました。
講演といっても、数人の集まりなので、間近で拝聴できました。
お話もお上手ですし、なんといっても眼がきれいな方でした。
澄んだまなざしで、人を惹きつけるものをお持ちだと感じました。
青柳さんの活動については、ご著書『硯の中の地球を歩く』を読んで、おおむね学んでいたのですが、
直接お話をうかがえると、一層理解が深まりました。
新しいプロフィールに、「2019年 世界初、月の石の硯化に成功」と書かれていましたので、質疑応答の時間に尋ねてみました。
どうして月の石を硯にしようと思ったのですかと。
すると、北海道に硯になる石を探しにでかけ、ある時どうにもみつからずに、
ふと夜空を仰いだら、お月様が輝いていて、その月の石で硯を作って墨をすったらいいだろうと思ったというのです。
月を仰いで、月の石で墨をすろうなどという発想は、詩人でもあります。
小学校などに講演に出かけて、子供達に、月の石での硯だというと、皆興味を示すそうです。
青柳さんは、情熱を持ちながらも、爽やかな方で、それでいて詩的だなと思いました。
一度、その月の硯を見てみたいと思ったら、今月都内で開く個展に出陳されるようで、チラシをいただきました。
上京のついでに、是非拝見してこようと思います。
横田南嶺