講了の偈と遠諱への思い
今日、僧堂では、雪安居(10~1月の修行期間)の講了(講義の最終日)でした。
横田南嶺老師による講了の偈(宗旨をうたった漢詩)です。以下、書き下しと意訳とまとめのお言葉です。
「孜々兀々(ししごつごつ)、禅牀に坐し」
孜々はつとめる様子、兀々は一心に努力するさま、心を動かさないことです。
こうして一生懸命ひたすらにじっと動かずに坐禅堂に坐ってきました。
「百日忽(たちま)ち過ぐ、閃電光」
円覚寺では一制は百日です。雪安居百日の間、安居してきましたが、気がつけばあっという間でした。
まるで稲妻がひらめくように一瞬のうちに過ぎていてしまったように感じられます。
「武渓を講了して、何の所証ぞ」
武渓集を講義し終わっていったい何を得たのだろうか。
<提唱台上で講義する横田南嶺老師>
「寒梅点々、清香を放つ」
庭を見てみると、梅が寒さの中で清らかなよい香を放っています。
梅は厳しい寒さを経てこそ清香を発するのであります。
これより、円覚寺では、大用国師誠拙周樗禅師の二百年の大遠諱を修します。
誠拙禅師報恩の為に、その師匠である月船禅師の語録『武渓集』を一通り提唱してきました。
これは、四月の遠諱には、本にして出版します。
長年にかけて私がコツコツと取り組んで来て五百ページを超える大冊になりました。
それから、三月には先ず僧堂で、関東の僧堂の雲水達を集めて、報恩の摂心をします。
そこでは誠拙禅師の語録である『忘路集』を提唱します。
四月には、京都からも誠拙禅師ゆかりの相国寺や天龍寺の管長様方、
誠拙禅師の故郷宇和島の大乗寺様や仏海寺様などをお招きして大法要を営みます。
続いて円覚寺派末寺の檀信徒千数百名に戒を授ける大授戒会を行います。
終わると同時に東京の日本橋三井記念美術館で、円覚寺展を開催します。
かつて五島美術館でも開催したことがありますが、
都心では円覚寺単独の展覧会は恐らくはじめてではないかと思います。
期間中に、三井記念ホールで特別講演も企画しています。
同時期に京都の花園大学でも、歴史博物館で誠拙禅師展を、
鎌倉の国宝館でも円覚寺展を開催します。
なんと東京、京都、鎌倉の三カ所で同時に展覧会であります。
遠諱の大事な意味は、縁有る者には更に縁を深めてもらい、
縁無き者にも新たに縁を結ぶことであります。
こうして我々が学びを深めると共に、多くの皆さまにも誠拙禅師を通じて、
円覚寺ひいては禅の教え、仏法に親しんでもらえれば、報恩に一端であろうかと思っています。
(平成31年1月 横田南嶺老師 制末大攝心提唱より)