三井記念美術館 鎌倉禅林の美 円覚寺の至宝展 開催挨拶
4月20日から日本橋の三井記念美術館にて「円覚寺の至宝展」が開始しました。
詳細はこちらへ「円覚寺の至宝展」
前日のレセプションでの横田南嶺管長による開催挨拶です。展覧会の目的や見どころを
提唱されています。
【この三井記念美術館のある日本橋から、銀座にかけての広い土地は、もとは江戸前島と呼ばれ、徳川幕府が開かれるまで円覚寺の所領でありました。
徳川家康公が江戸に入る時に、豊臣秀吉公は、家康公に対し、円覚寺の所領に手を付けないように言い渡したのですが、
家康公にすぐに奪われてしまったのでした。
そんな因縁のある土地で、この度円覚寺の至宝展を開くというのは実に不思議なめぐり合わせでございます。
家康公に所領を没収されたことやその他の事情もあって、江戸時代に円覚寺は荒廃してゆきました。
もはや、その荒廃も極に達したかに思われた時に、円覚寺を再興されたのが、この度二百年遠諱を迎えます大用国師こと、
誠拙周樗禅師でありました。
せっかく誠拙禅師が江戸時代の末期に再興されたのですが、明治維新になり、廃仏毀釈も起こって、
円覚寺は更に大きな打撃を受けました。
そんな中を、単に円覚寺や国内で活躍するのみでなく、広く世界に禅を弘める端緒を開いたのが、
この度百年遠諱を迎えます釈宗演老師でありました。弱冠三十二歳で円覚寺の管長になり、
シカゴの万国宗教会議に出て、初めて西洋の人達に仏教を説き、後にはアメリカ、ヨーロッパを巡錫して禅を説かれました。
その時に通訳として随行したのが鈴木大拙先生でした。
釈宗演老師のもとには朝野の名士達が参禅に訪れ、円覚寺は関東に於ける禅の一大道場として今日に到りました。
その円覚寺に伝来する宝物を展示する特別展を、三井記念美術館のご尽力と、読売新聞や鎌倉国宝館のお力をいただいて開催することができました。
厚く感謝致します。
今回の展覧会では、三井記念美術館の清水真澄館長が特に、円覚寺の開創と華厳禅とのかかわりに注目してくださいました。
実に円覚寺の開山仏光国師の禅は、華厳の教えがもとになっています。今この場で華厳の禅とはどのようなものかを語る時間はございませんが、
私ども円覚寺におります者も、改めて華厳の教えを見直させていただくことができました。
また、展示の見所と致しましては、円覚寺には開山仏光国師が南宋から持って来られた、青磁器や堆黒堆朱と呼ばれる、
世界にも数が限られているような名品が伝わっています。私どもも普段寺では目にしてきましたが、この三井記念美術館に展示していただくと、
より一層すばらしく拝見することができます。 更に、禅宗においては、仏像も大事に致しますが、
何といいましても仏法を体得して伝えてきた祖師を大事に致します。その祖師のお姿を写した頂相彫刻が数多く伝わっています。
とりわけ、今回は建長寺様のご協力をいただき、建長寺の開山大覚禅師蘭渓道隆禅師の頂相彫刻を出展していただきました。
建長寺の大覚禅師と円覚寺の仏光国師とが、並んで鎮座されています。この両祖師が並んだお姿を目にすることは滅多にない機会であります。
私も先ほど拝見させていただき、両祖師の前に立ちますと身の震える感動が致しました。
その他にも高峰顕日、夢窓疎石など仏光国師法縁のすばらしい祖師像もございます。
どうぞ、このあと皆さまにも円覚寺及びご縁のお寺に伝わる名品の数々をご覧いただきたく願います。
最後に申しあげたいことは、禅というのは単に今回陳列されているような過去の遺産ではありません。禅の教えは今現在も脈脈と受け継がれ実践されています。
そんな様子は映像でご覧いただくようにしています。
禅は現在にも息づいて、そしてこれからの世の中においても多くの人の心の支えとなる教えでもあります。
少しでも禅の教えに触れていただく為に、会期中に坐禅会、法話会、講演会、そして僧侶と共に語り合う座談会なども企画しております。
宝物ばかりでなく、現在に生きて、これからの心の支えになる禅の教えにも触れていただいたならば、主催者と致しまして幸甚でございます。】