宇治の萬福寺 – 三つの感動
黄檗宗の布教師の研修会にお招きいただいたのでした。
黄檗宗の本山は今まで訪ねたことがなかったので、楽しみに出かけました。
萬福寺を訪ね、管長さまにお目にかかり、研修会を務めさせてもらって三つの大きな感動をいただきました。
まずは萬福寺の伽藍と境内であります。
広大な境内に、大きな伽藍がいくつも並びます。
京都では東福寺の伽藍が大きくて素晴らしいものですが、こちらの萬福寺さまの伽藍もまたとても迫力のあるものでありました。
萬福寺に着いてみると、総門のところで大勢のお坊さんたちが出迎えてくださいました。
それだけで恐縮しました。
境内に入ると、禅の本山だけに清浄な空気に満ちています。
きれいに掃除がなされています。
これだけ広大な境内を常にきれいにされるというのはたいへんだろうなと思いながら参道を進みました。
萬福寺の参道の敷石は龍のうろこを模した独特なものです。
総門を入っていくと、大きな山門がございます。
とても立派な楼門であります。
山門を入って左手に進んで開山堂にお参りしました。
開山隠元禅師をお祀りしているお堂であります。
香を焚いて三拝させていただきました。
中央には大きな隠元禅師のお像がございます。
これまたこちらに迫ってくるような迫力があります。
それから祖師堂、禅堂の前を通って、大雄宝殿にお参りしました。
萬福寺さまのご本堂であります。
大きな伽藍が並ぶ萬福寺でも最大の伽藍です。
本尊はお釈迦さま、その両脇には迦葉尊者と阿難尊者がお祀りされています。
こちらでも香を焚いて三拝させていただきました。
それからこちらには十八羅漢像がお祀りされています。
円覚寺でも十六羅漢の講式を行っていますので、それぞれのお名前には親しみがあります。
中でもお腹を開いてみせている羅睺羅尊者(らごらそんじゃ)はよく知られています。
お腹を開いて、その中に仏さまのお顔が現れているのです。
萬福寺の法堂、大雄宝殿、天王殿は一昨年に国宝に指定されています。
萬福寺を訪ねてまず第一の感動は、広大な境内と勇壮な大伽藍であります。
そしてそのあとさらに方丈に向かいます。
ここで萬福寺の管長さまがお待ちくださっていました。
管長さまは、芹澤保道老師であります。
今年の六月にご就任なされたばかりであります。
よその管長さまにお目にかかるというのは緊張するものです。
ところがお茶をいただいていると、いろんな話をしてくださって、とても打ち解けることができました。
管長さまは、三十五歳で出家された方だそうで、それまで会社にお勤めでいらっしゃったそうです。
当時黄檗宗の管長だった村瀬玄妙老師に師事なされたそうです。
それから愛知県犬山のお寺に住職なされて、犬山にある瑞泉寺という臨済宗の修行道場で臨済の修行をなされたのでした。
瑞泉寺の老師に長らく参禅をなされた方であります。
黄檗宗の布教師会の会長もお勤めでいらっしゃった方であります。
犬山のお寺では、瑞泉寺の老師に参禅なされながら、普茶料理もなさっておられたというのです。
会社員としてお勤めの期間が長かったこともあってか、とてもよく気配りをなされる老師でありました。
お昼は管長さまとご一緒に普茶料理をいただきました。
その間も管長さまは親しくお話くださり、お料理の説明を懇切丁寧にしてくださいました。
また食事の間もお茶の気配りなども欠かされませんでした。
素晴らしい管長さまだと思っていたのですが、もっとも驚いたのは、午後からの研修会のときでありました。
私は午後から黄檗宗の布教師の皆様に講演をさせてもらいました。
九十分の講演であります。
講演の会場に入ると、なんと最前列に管長さまがお坐りになっています。
恐縮しました。
さらに驚いたのは、管長さまがもっともよく私の話を聞いてくださったことであります。
話を聞くというのは難しいものです。
とくに和尚さま方の場合、話をしてもあまり反応がありません。
これは、修行道場で提唱といって老師のお話を拝聴するときには、坐禅したまま聞くので、なんの反応もしない習慣がついているためだと思います。
しかし聞き手となるのも修行であります。
話し手が話しやすいように頷いたりお顔を見たり、微笑んだり、メモをとりながら聞くと良いのです。
ところがこれが難しいのです。
管長さまは、とても柔和な表情でよく頷きながら聞いてくださっていました。
その頷き方が見事なのです。
ただ頷けばいいというものではありません。
私が強く訴えたいと思うところは深く頷かれ、軽い気づきを話すときには軽く頷かれます。
その間合いや強弱の兼ね合いが見事なのです。
よほどいろんなところでお話なさり修練されたのだと思いましたし、人のことを深く思いやれる老師なのだと思いました。
その日の私の講演では、教えることは学ぶことだという趣旨をお伝えしたのですが、管長さまのお姿こそがそのことを体現なされていました。
萬福寺を訪ねて次の感動は管長さまのお人柄に触れたことでありました。
私の拙い話のあとは、臨済宗南禅寺派興慶寺のご住職蓮沼直亮和尚の講演でありました。
このご講演がまた素晴らしいものでありました。
法話とは何か、法話の作り方、その姿勢など大事なことを丁寧にお話くださいました。
法話をする大事な姿勢として、誠実さが一番だとお話くださっていました。
謙虚な姿勢で堂々と説かれていました。
この蓮沼和尚のご講演が、そのことを見事に体現されていました。
とても謙虚でありながら、堂々と大事なことを伝えてくださっていました。
話の内容も素晴らしく、またその姿、たたずまいに心打たれました。
三つ目の感動は蓮沼和尚のご講演でありました。
黄檗宗の本山萬福寺を訪ねて三つの大きな感動をいただいたのでした。
横田南嶺