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臨済宗大本山 円覚寺

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2026.07.23
今日の言葉

呼吸を感じる

先日は清水喜子さんがお越しくださいました。

久しぶりにお目にかかりました。

イス坐禅に興味があるとうかがっていましたので、イス坐禅を体験してもらいました。

命の授業という独自の活動をなさっている清水さんだけに、その深い感性から感じられたことがあったようであります。

はじめに、手の指から始めました。

やはり調えるのは末端からであります。

手の指の爪をもうひとつの手の親指と人差し指で挟んで、爪の脇をもんであげます。

親指から一本一本丁寧に爪をもんでゆきます。

そのあと、指の付け根から指の骨を回すようにしてほぐしてゆきます。

指と指との間ももんであげてほぐしてゆきます。

自分の手で自分の手に触れるだけなのですが、これだけでも手がゆるみ、心が落ちつくものです。

終わったあとの感想でも、この手をもむことにとても感動されていたようでした。

それから更に手の平を丁寧に指で押してもんでゆきます。

優しい気持ちで自分の手をほぐしてあげるのです。

それから徐々に手首やヒジなども外旋の方向にほぐしていくことを行いました。

そして肩を動かしてゆきました。

その前の日に都内でイス坐禅を行って、そのときには上腕の外旋を丁寧に行ってとても評判がよかったので、清水さんにも体験してもらいました。

そのあとは足裏を調えてゆきます。

足の裏に手の平を合わせて感じます。

温かいか冷たいかを感じるのです。

とても暑い日だったので、足もかなり温かいと感じました。

そして足首まわし、足首の曲げ伸ばしを丁寧に行います。

それからボールを使って足の裏で感じる感覚を更に強くさせます。

そうして足の裏で畳を踏むととてもよく感じることができます。

私たちは常に足で地面を踏んでいながら、その感覚を失っています。

今足で大地を踏んでいると感じることができると、それは同時に自分自身が大地に支えられていることに気がつくことができるのです。

これは大きな安心感につながります。

なかなか神仏を信じられないという方がいたとしても、大地に支えられていることは事実ですから、受け入れてくれるでしょう。

安心することによって、体がゆるみます。

それから呼吸筋を調えることを行いました。

このように首と肩の調整、足の裏で踏む感覚、呼吸筋肉の調整、そして腰を立てるというのが、私の行うイス坐禅の方法であります。

呼吸筋には横隔膜や肋間筋があります。

いろんな呼吸法がありますが、呼吸というのを単純にみると肺に空気が入って、肺から空気が出ていくことです。

これを感じてもらうのです。

肺のまわりの筋肉を上下左右前後に動かすようにします。

まず肺の大きさを確かめてもらいます。

肺というのはとても大きなものです。

上の方は、鎖骨の少し上まであります。

肋骨の下の方までが肺です。

その肺の大きさを手で触れて確かめます。

そして厚みも手で触れて感じてもらいます。

それから肺を上に膨らませます。

上を向きながら息を吸ってもらいます。

胸骨や肋骨の上の方がやや持ち上がります。

胸の前面が伸びて、胸の上部が広がるのを感じて、肺の上の方に空気が入りやすくなるように感じられます。

それから前を広げます。

これは胸の前に合掌して手を開きながら、耳の後ろくらいまで持っていって、胸を前に広げて息を吸います。

そして吐きながら合掌にもどります。

これで胸郭の前面が広がります、

そのまま両手を組み合わせて、前に押し出しながら、背中を丸めてゆきます。

背中の方に息を吸い込むつもりで背中を広げてゆくのです。

これで背面に広がります。

それから横の方面です。

片手をあげて、もう片方の手で手首をつかんで引っ張るようにして体側を伸ばします。

脇腹を伸ばしてそこに息が入るようにします。

左右ともに行います。

それから横隔膜を動かして肺を下の方に広げます。

両手をおへその下に当てて、息を吐きながらお腹を押して引っ込めます。

吸いながら膨らませます。

これらを丁寧に行ってから、呼吸をすると、肺のまわりが前後左右上下いろんな方向に広がっていくことが感じられるのです。

呼吸をしていることを実感できます。

よく瞑想やマインドフルネスなどで呼吸を見つめましょうとか、呼吸を意識するとか言われますが、すぐに分かる人もいますけれども、なかなか気がつきにくいという方もいます。

肺を包んでいる胸郭や、その周りの筋肉を実際に動かしてみます。

そうすると、息を吸うと胸郭が広がり、息を吐くと静かに戻ってゆくことを、体で実感できるようになります。

呼吸を感じられたら、それでじゅうぶんに瞑想になります。

呼吸を感じていると、それだけで静かに調ってくるのです。

そうして最後に腰を立てるということを股関節の引き込みとともに実習して坐りました。

一時間少々かけて調えてゆきましたので、ゆったりと坐ることができました。

清水さんからも「手と足の裏の身体感覚とともに、「呼吸を見つめる」ということを初めて実感することができました」という感想をいただきました。

呼吸をしているということは生きていることそのものです。

その呼吸に気づくことは、今ここに生きている自分に帰ることでもあります。

自分は呼吸をしている、たしかに生きているのだと感じることができれば大きな安心感に包まれ、更に力強く生きていこうという意欲が湧いてくるものです。

 
横田南嶺

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