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臨済宗大本山 円覚寺

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2026.05.02
今日の言葉

坐禅と五輪塔

『坐禅儀』という書物があります。

その中に坐禅の姿勢について、

「腰脊、頭頂、骨節相支えて、状浮屠の如くならしめよ。」という一文があります。

「腰と背筋と頭と頸とをそれぞれが骨節が互いにささえて、その形を塔のようにせよ。」という意味です。

筑摩書房の世界古典文学全集に、『坐禅儀』の訓注があります。

そこにある大森曹玄老師の訳では

「腰・背・頭・頂などの骨節が、ちょうど五輪塔などのように、まっすぐに積み重ねられて安定しなければいけない。」

となっています。

原文の「浮屠」はストゥーパのことだと、筑摩書房『禅の語録16』に収められる坐禅儀の註釈には解説されています。

ストゥーパは塔のことです。

塔について、「仏教における塔(ストゥーパ)崇拝の起源は、仏陀(ぶっだ)の死後、その遺骨(舎利(しゃり))を祀るストゥーパが建立されたことに求められる。」と岩波書店の『仏教辞典』には、解説されています。

もともとの形は「西デカンの初期石窟群や、サーンチーの諸塔など、紀元前2世紀頃-紀元2世紀頃にほぼ現在の形を整えたと考えられるもので、いずれも円形の基壇の上に半球形の覆鉢(ふはつ)を積み上げ、頂部に函形の平頭(へいとう)を載せ、その中心に傘蓋(さんがい)を冠した傘竿(さんかん)を立てている。」
という形であります。

インドにおいてストゥーパはお釈迦さまの遺骨である舎利を納めたお墓であり、半球形の土盛り(墳丘)が基本形でした。

それが中国に仏教が伝わるようになって木造となり楼閣型の建築となりました。

これは中国の建築文化である楼閣建築と融合したためだろうと察します。

それが日本へと伝わったのでした。

五重塔などになりました。

また石で五輪塔を作ったのでした。

五輪塔の五輪というのは、下から地輪、水輪、火輪、風輪、空輪の順に積まれています。

それぞれ方、円、三角、半月、宝珠形につくられます。

日本では平安時代のなかばごろから死者への供養塔あるいは墓標として用いられたと言われています。

密教では、自身の五所、頂・面・胸・臍・膝に五輪の五字を配して観ずる法があるそうです。

五輪成身観というそうです。

というように、五輪の塔というものは、もともとブッダの塔から、幾多の変遷を経て、日本では亡き人の供養のために建てられたものです。

その五輪塔を積み上げるように、坐禅をすると『坐禅儀』には説かれているのです。

五輪塔は、下から地・水・火・風・空の五つに分かれております。

この五大は、そのまま人間の身体と心のあり方を表しているとも受けとめられます。

まず「地」は大地であります。

これは私たちの身体そのもの、骨や筋肉のような形あるものを指します。

坐禅においては、どっしりと大地に坐り、足を組み骨盤を立てて土台を安定させることに通じます。

五輪塔の一番下の「地」の部分はどっしりしています。

次に「水」は流れであります。

血液や体液の巡りが水でありましょう。

坐禅をしておりますと、身体の内側に静かな流れが感じられてまいります。

これは、固くなりすぎず、やわらかに、滞りなく巡ることが大切だということかと察します。

「火」は温もりであり、いのちの働きとも言えます。

丹田という腹の内に宿る力、これが火であると感じます。

丹田に力が定まるとき、静かな火が灯るような感覚が生まれてくるものです。

そして「風」は呼吸そのものです。

出入りする息のはたらきであります。
呼吸が乱れれば心も乱れます。呼吸が調えば、心もまた自然と調ってまいります。

風は動きでもありますので、心臓の鼓動などもそうだと思います。

そして最後に「空」であります。

これは頭を空っぽにすることかなと思います。

形なきもの、空はすべてを包むはたらきでもあります。

坐禅において、あれこれと思いを追わず、空っぽになって心がどこまでも大きく広がって、自我に対する執着を離れていくのです。

五輪の塔のようにというのは、形を積み上げるというだけでなく、坐禅の内容にも関わるように思います。

お釈迦様がお亡くなりになったあと信仰の対象となった仏塔を自ら現じているとも言えるのではないかと思うのです。

地水火風の四つの元素は、それぞれ<地>には固さと保持、<水>には湿潤と収集、<火>には熱さと熟成、<風>には動きと生長が充(あ)てられます。

五輪塔のように調うことは、下はどっしりが「地」、中は柔らかくが「⽔」、内に温もりがあるのが「火」、呼吸が通うのが「風」、そして、頭や思考が空になっているのが「空」とみることもできます。

四大という考えは仏教以前からインドにあったようであります。

それが仏教に取り入れられて発展しました。

初期仏教では、身体を地すなわち、硬さ、水すなわち、湿り、火すなわち熱、風すなわち動き、というように分けて観察することで、「自分と思い込んでいるものはじつは私ではない」という洞察していくのです。

もっと具体的にいうと、自分というのは骨の硬さ(地)、血液の流れ(水)、体温(火)呼吸や動き(風)という条件が調って集まっているだけで「これが絶対的な実体だ」といえるものはないと明らかにしていくのです。

そんな教えから、実際の坐禅において、地面のような土台の安定、水のような柔軟さ、火のような熱量、風のような柔らかな息とみることもできます。

地水火風の四大は、もともとインドにあった思想が仏教に入って、更に空を加えて五輪となっていったのでした。

 
横田南嶺

坐禅と五輪塔

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