骨に学ぶ
私も修行僧と共に学ばせてもらっています。
今回は、岩崎大輔さんという方もご一緒にお越しくださいました。
控え室でうかがったところ、元俳優であり、そのあとしばらく会社勤めをされて、今はおもにファシリテーターというお仕事をなさっている方だそうです。
元俳優をなさっていたというので、姿勢もよろしく、お声もまた素晴らしい方であります。
今回も椎名先生は、自分自身の体をより深く理解し、感謝の念を持って、自分の身体とじょうずに付き合うことの大切さを説いてくださっていました。
今回は全身の骨の模型をお持ちくださっていました。
これがよくできた模型で、背骨もよく動くし、股関節もよく動くのです。
これで骨の構造がよく分かります。
自分の骨がどうなっているのかを理解しておくことはとても重要です。
椎名先生は、いつものように元気はつらつで、私たちは、自分の皮膚の外にある世界のことはいろいろと学び調べていますが、自分の内側のこととなると、そんなに探究していないのではないでしょうかと仰います。
その通りであります。
医学などにも触れないと、学ぶことはあまりないのです。
学校でも、なんとなく習うことはありますが、それほど深くは学びません。
内臓などの話になると、「うわあ、気持ち悪い」と、それで終わってしまう方もいるでしょう。
椎名先生は「体の中のことをどんどん知っていくと、怖いどころか、むしろ大好きになってくるのです」と仰います。
自分の体というのは、本当に不思議なものだと、日々感動できるようになるというのです。
そして、「この体を大事に使わないといけないな」と思うようになります。
考えてみれば、自分の体は、自分でこしらえたものではありません。
「では、作ってみましょう。ちょっと血管を作ってみましょうか」と言われても、できません。
それどころか、細胞ひとつ作ることはできません。
では、お父さんやお母さんが作ったのかというと、そうでもありません。
おじいちゃん、おばあちゃんでもない。その先のひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんでもありません。
では、いったい誰が作ったのか。
考えてみると、本当に不思議な、大自然の働きとしか言いようがないと椎名先生は語られます。
誰しも最初は、精子と卵子という二つの細胞から始まっています。
それが今、こんな大きな体になっているのです。
椎名先生は「ちょっと自分の指や爪を見てみてください」と仰いました。
そんなに硬いものを食べているわけでもないのに、硬い爪がちゃんと生えてくるのです。
言われてみると不思議です。
椎名先生は、爪を切っても、切った爪に感謝なされるそうです。
「だって、自分の力で爪を伸ばすことができますか。できませんよね」と言われると、その通りなのです。
体が自然にやってくれているのです。
そういう体の仕組みを知っていくと、ますます自分の体とよりよく付き合っていこうという気持ちになりますし、自然と感謝の念も湧いてきます。
私たちは、自分の力だけで生きているわけではないのです。
呼吸もそうです。
今、皆さんは「自分で呼吸している」と意識してはいないでしょう。
呼吸は、私たちが意識しなくても、自然に行われています。
ところが、その呼吸が体にとって負担のかかるものになっていると、一日中、呼吸をしているだけでも体に余計な力みが生じることがあります。
実際に、そういう方もたくさんいらっしゃるというのです。
ですから、まず基本となる呼吸を調えて、本来、私たちの体に具わっている、大自然の不思議で素晴らしい能力を、きちんと使えるようにしていくことが大切なのだと伝えてくださいました。
今回は特に、これまで意識されにくい「骨盤の横」「肋骨」「頭蓋骨の底」といった骨格を学び、正しい位置に納めるように、まわりの筋肉をほぐしてゆきました。
骨盤の横というと、寛骨の横あたりです。
小臀筋や深層外旋六筋などがあります。
ここを横になって竹を使ってほぐします。
痛いくらいでありますが、気持ちいいのです。
右と左とそれぞれほぐしてゆきます。
それだけで股関節まわりがゆるんだのがよく分かります。
それから肋骨ですが、この位置を正すのです。
私などはどうも肋骨が後傾しています。
姿勢のあまりよくないのをいつも反省するのです。
肋骨の後傾というのは、修行道場でどうしても気合いを入れて坐ろうと、腰を反らして胸を張るようにして坐っていたからだと思います。
そうして坐っていると寝てしまうことは少なくなります。
しかし、無理な力みがありますので、腰を痛めたりします。
そのような愚かなことはしないようにと、こうして先生方にお越しいただいて学ばせてもらっているのです。
肋骨を正しい位置に据えてこそ、横隔膜がよく動くようになります。
肋骨の底面が真下を向くように整えることが、横隔膜の自然な上下運動を促し、呼吸も深くなるのです。
それから頭蓋骨の後ろや蝶形骨を意識して調えました。
首まわりが楽になると、ずいぶんと身体が変わってきます。
そして呼吸法を丁寧に教わりました。
胸や肩まわりに余計な力が入った呼吸を続けていると、体に負担がかかることがあります。
それが疲れの原因の一つになることもあるそうです。
横隔膜の動きは大切です。
横隔膜は胸腔と腹腔の境にあり、一日におよそ二万回もの呼吸に合わせて上下し、その動きが肺の換気を助け、腹部の臓器にも影響を与えています。
浅い呼吸では肺を十分に使いにくくなることがありますが、横隔膜をよく動かして深く呼吸することで、肺全体をより有効に使いやすくなるというのです。
最後に軟酥の法も実習しました。
今回は骨を通して自分の身体を学びました。
椎名先生のお話を聴いていると、この身体をいただいたこと、何気なく活動していること自体が奇跡のように思えます。
こうして、身体を調える時間を持てることは幸であります。
横田南嶺