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臨済宗大本山 円覚寺

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2026.05.18
今日の言葉

嬉しい悲鳴

街に出かけると、行列を目にすることがあります。

なんの行列かなと思ってみてみると、だいたいラーメン屋さんとか食べ物屋が多いようです。

そんな中で私のお寺でも毎月行列ができます。

かつて、うちの寺は行列のできる寺ですと申し上げていたこともありました。

少しくらいの行列ならいいのですが、それが多くなり過ぎると問題になるものです。

それは第二日曜日の日曜説教の朝であります。

とくに気候のよい時には、大勢の方がお越しくださります。

過ぎたるは及ばざるが如しというようになんでも過ぎるのも困りものなのです。

大勢の行列になりすぎて、苦情が来るほどになってしまったのでした。

先日の第二日曜日には、教学部の和尚様や修行道場の修行僧に、行列の整理をしてもらったほどでした。

開門の前にはすでに百数十名も並んでくださっているというのです。

それが円覚寺の総門から駅まで何列も続くのです。

私は寺の中にいるので分からないのですが、朝手紙を郵便ポストに投函してもらうように頼んだところ、その修行僧が驚いていました。

苦情がくるほどになると、こちらもなんとか対策を考えないといけません。

かつては午前八時の開門でしたが、数年前から八時半になったことも行列が長くなる原因のひとつです。

解決策としては開門の時間を早めるか、日曜説教を遅らせることくらいです。

しかし、この開門時間になったのは、職員の就労時間の問題があって、やむをえないことなのです。

開門時間を早めることは極めて困難です。

となると法話の開始時間を遅くすることですが、これも不特定多数の方がお越しくださる会なので、時間変更を皆さんに知らせるのが難しいものです。

ホームページに載せても、皆さんがご覧になるとは限りません。

教学部や本山の和尚様が、いろんな案を出して考えてくださっているようです。

私もいろいろと考えてひとつの結論に達しました。

それは私が法話をしなければいいということです。

それですべてが解決するのです。

幸いにも私が出なくても、すでに居士林師家の内田一道老師や、教学部の蓮沼直應先生や、伝宗庵の吉岡洞然老師などすぐれた方々がいらっしゃるので、私が引っ込むのが一番です。

皆様の為と思って勤めている法話が、地元から苦情が来たり、職員や教学部の和尚様方のご迷惑になるのは本末転倒です。

そう思って「やめます」と教学部長に申し上げたのですが、「それはだめです」と一言のもとに却下されました。

行列の問題はなんとか工夫をするので、引き続いて日曜説教を務めるようにとのことでした。

もともとこの日曜日の法話は朝比奈宗源老師がおはじめになったとうかがっています。

朝比奈老師の信者さんたちによって行われていました。

仏心会という会があったのでした。

仏心会は今もうなくなっています。

そこで今は教学部の和尚様が中心になって、古くからの信者さん達がお手伝いしてくれているのです。

9時から10時までというのは、かつてはこの円覚寺の方丈で、円覚寺の檀家さんの法事も行っていたからでした。

日曜日は法事を行うことがあったのです。

そこで、土曜や日曜日には、坐禅や法話などの布教に大いに活用できるようにと、私が管長に就任してから、新たに蔵六庵を建て直し、そこで円覚寺の檀家さんの法事を行えるようにしたのでした。

そうして土日はいろんな催しができるようにしたのでした。

なにも催しもない時でも方丈を一般の皆様に開放するようにしたのでした。

静かに裏の庭を眺めてもらえるようにしたのです。

ですから多少日曜説教の時間を遅らせることは可能になっているのです。

また日曜説教のあと、この頃は午後から一般の方の布薩の会を開催していますが、これも法事を蔵六庵で行えるようにしたからであります。

布薩の会も大勢の方がご参加くださっています。

こちらは礼拝行で、礼拝を丁寧に行いますので、身心共によく調います。

長い時間坐禅をするのと同じくらいに身心共に調い安らぐのです。

やはり仏教、特に禅は実践の宗教ですので、法話を聞くだけではなく、更に実践が大事なのです。

法話を聞いて仏法の教えを学んで、そしてまず戒を意識した暮らしをすることです。

戒は生き物をむやみに殺さない、ひとの物を奪わない、壊さない、人を傷つける言葉を発しないなどという生活のよい習慣を身につけることです。

礼拝を繰り返しながら、これら戒の条文を現代語訳にして読みますので、礼拝によって体と呼吸が調い、戒の条文を読んで心が調うです。

実に体と呼吸と心が調う坐禅に通じます。

それから日曜説教のあとの坐禅の会もこちらも大勢になりすぎてたいへんな状況です。

会場を分けて行うこともよいとは思いますが、それは人が足りません。

円覚寺の本山に大勢の和尚様がお勤めくださっていますが、それぞれご自分のお寺がおありで、土日はご自分のお寺に戻って法事をなされるのです。

日曜説教に出られる和尚様は二人か三人ほどなのです。

それでも本山の法事を務めることもありますので、人は足らないのです。

多くの方にお集まりいただくのは有り難いことなのですが、嬉しい悲鳴でもあります。

申し込み制や有料にすれば問題は解決するでしょうが、それだとまた問題もあります。

いろいろと催し物を行うのは難しいこともあります。

日曜説教は朝比奈老師がおはじめになって多くの方に仏法に触れてもらう貴重な会ですので、なんとか工夫して継続できるようにしたいものであります。

 
横田南嶺

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