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臨済宗大本山 円覚寺

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2026.05.16
今日の言葉

毒語

禅文化研究所のYouTubeで、ずっと「山田無文老師の『般若心経』を読む」という題で、全二十六回にわたって般若心経の解説をしてきました。

これは禅文化研究所で発行している山田無文老師の『般若心経』という本がありますので、この本の無文老師の提唱をもとにして『般若心経』を説いてきたものです。

二十六回で終えましたので、このたび新に、『白隠禅師の毒語註心経を読む』という講座を始めました。

これは白隠禅師が般若心経について、ご自身独自の著語や頌を着けられたものです。

般若心経については、花園大学でも講義をしたことがありました。

その講義が『はじめての人に送る般若心経』として春秋社より出版させてもらっています。

また盤珪禅師が般若心経を解説された法語も残されていて、これについて円覚寺のYouTubeで一通り講義をしたこともあります。

『盤珪禅師の ”般若心経” 講義を読む』と題して十九回にわたって解説しています。

般若心経については古来いろんな方が註釈や解説を書かれています。

その中でも白隠禅師のものは異色であります。

岩波文庫の『般若心経 金剛般若経』には日本の般若心経の註釈として白隠禅師のものや盤珪禅師のものも取り上げられています。

「白隠慧鶴頌円慈注『般若心経毒語注』一卷(『日本大蔵経』般若部、四四三頁以下)は禅家の立場からの註解として有名である。近世には全然別のかたちの解説も著された。
盤珪永琢(一六二二-一六九三)『心経鈔』(国文東方仏教叢書、続、第三巻、講說部)
日本で『般若心経』の講義がなされて千年になるのに、それは漢文でばかり書かれていた。われわれ日本人のことばで書かれることがなかった。ところが盤珪はこの慣習を意識的に破った。われわれは日本人だから、日本人の話す平生のことば(平話)で語るべきだというのである。
ところがどうしたことだろう。こういうはっきりした自覚を以て書かれたこの書が、日本の学者の編纂した『大正新修大蔵経』続篇にも、『日本大蔵経』にも『大日本仏教全書』にも入っていない。一昔前までの仏教者は『般若心経』を講義する場合にもこの書を省みようとしなかつた。」

と解説されています。

この今まで省みられることがなかった盤珪禅師の『心経抄』をすべてYouTubeで講義をしたのでした。

コロナ禍のことで、原文をすべて講義をしたのでした。
そこで今度は白隠禅師の毒語註心経を講義してみようと思ったのでした。

第一回が禅文化研究所のYouTubeで五月八日に公開されました。

多くの方が関心をもってくださっているようで、YouTubeにはたくさんのコメントもいただいています。

コメントを拝読するのは楽しみなのであります。

読んでいると、「「毒語」とは、如何なることでしょうか」という言葉があって反省しました。

肝心の毒語についてきちんと解説をしていなかったのでした。

今回の毒語心経についても禅文化研究所から山田無文老師の『白隠禅師 般若心経毒語註』という本がでていますので、無文老師の提唱をもとにして解説して参ります。

山田無文老師は、この本のはじめに毒語について説いてくださっています。

「このお経ほど宗旨を問わず一般に広く読まれるお経は他にないでありましょう。ただいまも皆さんが一緒にお読みになりました、この『般若心経』に向かって、白隠禅師が毒語、平たく言えば毒舌を吐かれた本がこの『毒語心経』であります。

毒舌と言うといかにも賤しい言葉ですが、誉めようにも誉める言葉がないから悪口を吐かれたのです。社会でもそういうことがありますな。
好きで好きでたまらんけれども言いようがないので大嫌い"という。

大嫌いと言うことが一番好きなんです。

白隠禅師が『般若心経』をご覧になって、こんなに短くて、これほど深い真理をもったお経は他にない、ただほめたんじゃとどかん、いっそ悪口を言ってやろう、と書かれた本がこの『毒語心経』でございます。」

と説かれています。

毒語心経には大森曹玄老師が解説された本が春秋社から出ています。

そこに大森老師は、

「「毒語注心経」とは、いうまでもなく、般若心経に白隠禅師が「毒語」を以って注を加えたもので、毒語とは毒舌とか悪口とかいうような意味で、いわば般若心経に対して悪態をつきながら、実はこの上ない讃嘆をしているのが毒語というものです。」

と説かれています。

禅では仏法の真理は、単なる理論や学問を学ぶだけでは決して届かないので、ときには人の執着や思い込みを打ち砕くために強烈な言葉を用いることがあります。

それが逆説的表現であったり、悪口や毒舌に聞こえることもあります。

そのような強い言葉によってこそ真の目覚めが起こると考えています。

私たちの執着や迷い、分別、知識、思い込み、偏見を壊すための、強烈で刺激的な言葉といってもいいでしょう。

たとえば「般若」という言葉に対して「人人具足箇箇円、泥団を弄する漢、何の限りかあらん」と白隠禅師は言葉を着けておられます。

般若という悟りの智慧は、どんな人も皆もともと具えていて、それは完全なのであるが、空とは何か、悟りとは何か、般若とはなにか理論ばかりを玩んでいては限りは無いぞ、いつまで経ってもわからないぞというのです。

あれこれ言葉についてまわって分別ばかりしている者のことを、泥の団子をこね回すようなものだと言うのです。

泥まみれになるばかりなのです。

厳しい言葉で私たちの迷いを断ち切ってくれるのです。

そんな白隠禅師の毒語註心経を学んでいこうと思っています。

 
横田南嶺

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