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臨済宗大本山 円覚寺

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2026.02.14
今日の言葉

御燈祭

本日二月十四日で、明日は十五日、涅槃会です。

円覚寺では午前十時から佛殿で法要をお勤めします。

一時間ほどかかる法要ですが、佛殿の中にお入りいただいてお参りできます。

円覚寺独特の読経が伝わる法要です。

寒い時期なのですが、佛殿は暖房がありませんので暖かくしてお参りください。

さて先日の熊野詣で、一番の目的は、新宮市の御燈祭に参加することでありました。

御燈祭というのは、毎年新宮市の神倉神社で二月六日に行われている火祭りであります。

火祭りというのは全国にありますが、この新宮市の火祭りもよく知られています。

地元の伝承では神武天皇が東征の折に、この熊野の地に見えて、高倉下命がたいまつをかかげて神武天皇を迎え入れたのが起源だと言われています。

今は国の重要無形民俗文化財に指定されています。

この祭りに参加出来るのは男子に限られています。

私も物頃心つくかつかない頃から父に連れられて登っていました。

昭和五十八年高校を卒業して大学に入るときに、最後に登りました。

それ以来ですから、実に四十三年ぶりになります。

もう一度御燈祭に登ってみたいと思っていたのでした。

それが今回念願がかないました。

御燈祭に登る者を上り子といいます。

上がる者は、原則はその日白いものしか食べてはいけないことになっています。

しかし精進に限るのではなく、色のついていない物はいいらしいのです。

白装束に、荒縄をお腹にグルグル巻いて、草鞋を履いて登ります。

この頃は草鞋ではなく、白い地下足袋も多いようです。

私もこの装束に身を固めて登りました。

登る前には、熊野速玉大社、阿須賀神社、そして神倉神社のふもとにある妙心寺というお寺にお参りします。

そして神倉神社に登ります。

この神社は、ごとびき岩という山上の巨巌をご神体としてお祀りしています。

ご祭神は天照大神・高倉下命です。

熊野速玉大社の摂社となっています。

神武天皇が即位の前に大和入りをしようとして高倉下命から神剣を献ぜられたという話があります。

また神倉山は熊野権現の降臨地とされています。

その神倉神社には、五三八段もの石段を登らないといけません。

この石段がなんと源頼朝公の寄進だと言われています。

自然石を並べたとても急な石段なのです。

この石段を登って山上に参ります。

私も白装束に身を固めて、それぞれ速玉大社、阿須賀神社、そして妙心寺にお参りしました。

途中町を歩いていると、知人や懐かしい同級生に声をかけられたりしていました。

山上に登って待つこと実に二時間近くであります。

幸いにその日はそんなに寒くなかったのでたすかりました。

ひたすら急な勾配の岩に、坐って待ち続けます。

この待つ時間がいいのです。

時折風が吹きますと、少し寒さを感じます。

温暖な紀州とはいえ、例年はもっと寒いと思います。

待っていると、そのご神体の大きな岩の下で宮司さんが、火をおこされます。

漆黒の闇の中を長い時間待ち続けますので、火が起きた時にはみんなの歓声が響き渡ります。

大きな岩の下のほこらから火を持って出て見えた宮司さんのお姿は、実に神々しいものです。

その火は大松明に移されて、いったい山の中腹にある中の地蔵堂までおろされます。

そこで神事が行われていると思います。

それから再び火が山上に持って来られます。

そこでその山上に集まった千五百名が銘々の松明に火をつけるのです。

狭いところに千五百名もの上がり子が集まって、火をつけると荘厳な雰囲気となります。

そこでまたしばらく待たされます。

門を閉じられて待つのです。

今度は火がついて熱いし煙いのですが、ただ待ちます。

そしていよいよ午後八時頃に門が開いて一斉に五三八段の石段を駆け下ります。

駆け下りるといいましても、それは先頭の集団で、子連れの人もいますし、私などはあとの方でゆっくりと降りてきました。

なにせ怪我をするとあとの行事に差し障りがあるので、慎重に降りてきました。

六時頃から山に登って降りてきたのは9時近くになっていました。

こんなお祭りに参加したのでした。

この頃は新宮市以外の方の参加も多いようです。

私が登った昭和のころよりも増えているように感じました。

そして若い人も多く見えました。

この祭りは申し込みもなければ受付もありません。

だれでも白装束に荒縄をしめて松明を持っていれば登れるのです。

ただ荒縄を結ぶには独特の結び方があるので、私も地元の方に結んでもらいました。

山上で神事を行って火をおこし、その火をいただいて松明に灯して山を下りるのですが、原初の信仰を感じることができます。

そしてこの大らかなお祭りの雰囲気がまたいいものです。

実に混沌としたありさまです。

統制されることもなく、細かな規則にしばられることもありません。

そして山上でただ火を待つ時間がまたいいものでした。

ときには今の時代に合わないようなこともあります。

怪我をしてもすべて自己責任でと言われています。

でもそんなお祭りに若い人も心惹かれるのだと思いました。

そしてこの祭りに参加すると、全身が活性化したように感じました。

熊野は蘇りの地だとも言われますが、新たに火をおこし蘇るという感じがするのです。

そんなことが人気にもなって千五百名もの人が登るのだと思いました。

御燈祭に参加してその明くる日、日曜説教の前日無事鎌倉に戻ったのでした。

四十三年ぶりの御燈祭でした。

 
横田南嶺

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