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臨済宗大本山 円覚寺

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2025.08.03
今日の言葉

語録の読みかた、読まれかた

季刊『禅文化』第二七七号が発行されました。

今回の特集は「語録の読みかた 読まれかた」というものです。

この特集は、特に駒澤大学の小川隆先生のご指導をいただいてできあがったものです。

できあがってみて、あらためて小川先生に深く感謝します。

毎回充実した特集なのですが、今回は特に充実した内容だと思っています。

特集の内容は、

まず巻頭には「語録の読みかた 読まれかた」と題して小川隆先生と私の対談記事が掲載されています。

これは今年の三月に湯島の麟祥院で行われた「禅宗語録 入門講座「禅を読む」での対談がもとになっていますが、円覚寺で改めて小川先生と語り合ったものであります。

この対談については、禅文化研究所のYouTubeで見られるようになっています。

それから「問答の誕生」と題して土屋太祐先生。

「無字の歴史――問答から公案、そして隻手へ」と題して柳幹康先生。

「禅門随筆の世界」と題して張超先生。

「日本における禅籍の受容と応用」と題して、ダヴァン・ディディエ先生が執筆してくださっています。

そして最後に、「慈雲尊者に学ぶ語録の読み方―一切みな言説心念を離れみよ―」と題して円福寺僧堂の政道徳門老師がご執筆くださっています。

それから「叢林を語る」という、修行道場の紹介シリーズが第十七回で、虎渓山僧堂の桝田宗隆老師が語ってくださっています。

いつもの連載「誌上提唱『碧巌録』⑾」は、第五則 雪峰尽大地(上)で、方広寺の安永祖堂老師のご提唱がございます。

さらに「誌上提唱」がもう一本、「修行者たちのために―― 東陽英朝「大道眞源禅師小参」を読む」が第二十二回で大乗寺の河野徹山老師が書いてくださっています。

「好不惺々」は、河野太通老師の随聞録です。

新たに連載が始まったのが、「丹羽文雄の宗教観~作品とその周辺 (一)」であります。

衣斐弘行和尚が執筆してくださっています。

それから「『宗門葛藤集』の詩文と口語」と題して、西尾賢隆先生が書いてくださっています。

そして「禅における心身について(四十七) 我が生涯励み勤めん道 ―― 「勇猛の大志」と「本有今有」」と題して、いつもお世話になっています佐々木奘堂さんが書いてくれています。

今回の特集は、語録についてであります。

まず対談のはじめに語録というのはそもそも禅の世界でどんな意味を持つのか、小川先生に語ってもらっています。

一部を引用しましょう。

小川先生は

「私は「禅宗の三つの特徴」というお話をよくさせていただくのですが、それは「系譜の宗教」「清規(しんぎ)の宗教」「問答の宗教」というものです。

一つ目の「系譜の宗教」というのは、禅宗には開祖・教祖が無く、かわりに「以心伝心」で悟りそのものを伝えてきた祖師たちの系譜の総体、それを信仰し、かつ自らもその系譜の一員になることを目指す宗教ということです。

二つ目は「清規の宗教」、言いかえると「生活と労働の宗教」ということです。禅の修行は厳しいことで知られています。

でも、それは、深山幽谷で滝に打たれたり、断食したり、不眠不休で山中を走り回ったり、という特殊な難行苦行ではありません。

日常生活の一挙一動、食べること、寝ること、ご飯を作ること、いただくこと、すべてを仏作仏行として営むという修行です。

そこでは、伝統的な戒律と異なり、農耕をはじめとするさまざまな生産労働・肉体労働も大事な修行とされています。

三つ目が「問答の宗教」。

教祖・開祖がないことと関係すると思うんですが、禅宗にはキリスト教における聖書やイスラム教におけるコーランのような、他の書物とは同列に並ばない絶対の聖典というものが無く、かわりに無数の語録がのこされています。」

と語ってくださっています。

これだけでも長い禅の歴史とその膨大な語録から禅の特徴をよく読み取ってくださっていると感じいります。

更に

「他の宗教でも教理をめぐる問答はあるわけですが、俗に「禅問答のような」という言い方があるように、禅宗の問答は特殊です。

それは傍から見て、いかにも不可解で意味不明に見えるからでしょう。

では、なぜそのような問答をやるかというと、修行者自身に、我が身の上に、答えを見つけ出させるためです。

老師が悟りを授けるのではなく、老師の問い返しによって学人自身が自ら悟る。

そして、そういう問答の記録が集められて語録になる。それで「問答と語録」が禅宗の大きな特徴となるわけです。

禅が問答という手段を取る思想的な必然性については、今回の特集で土屋太祐先生が深い洞察を示しておられます(「問答の誕生」)。」

と説いてくださっています。

このようにお話くださると、土屋先生の文章も読んでみたくなります。

土屋先生の「問答の誕生」では、冒頭に次の禅問答が書かれています。

「官人の于頔(うてき)が尋ねた、

「仏とはどのようなものでしょうか?」

道通禪師は于頔の名を呼んだ。

于頔は返事をした。

禪師は言った、「このうえほかに探し求めてはいけません。」(『景徳伝灯録』巻六)

というものです。

たしかにこれだけ読んでもなんのことやら分からないと思います。

ただ私などにとっては、一読しただけで、感動するような見事な問答なのです。

この道通禪師というお方は馬祖禅師のお弟子です。

馬祖禅師は、この心が仏であること、そして現実に現れている心のはたらきが心の本性であり、あるがままであることを実践することを説かれました。

土屋先生は、「馬祖やその弟子の問答には、「振り返る」「返事をする」などの具体的な動作(作用)に寄せて、それを行っている主体としての自己(本性)に気づかせるものが多い」と説かれています。

そこでこの問答も、決して難しいものではなく、「返事をする」という作用を示した于頔に、「その返事をした心のはたらきこそ仏なのだ」と言ったのであると土屋先生は解説されています。

論理的に説明するのではなく、このような問答で気づかせるのです。

土屋先生のあとに掲載されている柳先生の「無字の歴史」もとてもよくまとめてくださっています。

趙州和尚が「無」といったのは、単純に「無い」の意であったのに対し、五祖法演禅師はそれについて「有る」「無い」「有るのでもなく、無いのでもない」などと理解してはならぬと明言して趙州の「無」字を、一切の理解を斥ける公案となっていると、柳先生は示してくれています。

そして「五祖の立場を受けつつ看話禅を確立したのが大慧であった」と説かれています。

そこから大慧禅師の高説が示されて、ただいま私たち修行する者が、取り組んでいる無字の公案の成り立ちが分かるようになっています。

更には白隠禅師の隻手にまで展開していったことも解説してくださっています。

そのあとに張超先生が禅門随筆について分かりやすく説いてくださっています。

公案によって自己の本性を明らかにするのが、禅の本質でありますが、禅門随筆には、実際に修行するときの心構えや、生身の人間である禅僧の様々な逸話が盛り込まれています。

このようなものを読むことによってなお一層、修行の助けになるのです。

そしてダヴァン先生が、日本でどのように禅の語録が読まれるようになってきたのかを説いてくださっています。

終わりに政道老師のご高説がございます。

「私たちが通常、肉眼で見ている世界は真実そのままではなく、自己の五感や思考を通じて、もの(対境)を自己中心的にとらえているに過ぎない。

これを妄想分別という。

そしてその妄想分別(されたもの)に、私たちはさらに言葉をつけることによって認識をゆがめているのである。

そうである限り、私たちはいつまでも「法性」を自覚することは出来ない。

慈雲尊者はこの「法性」を語る時、しばしば「言説心念を離れて自性解脱したもの」と表現された。

そして、それら言說(言葉)と心念(思考)を截断するのが、語録に示された「仏祖の活手段」なのである。」

とは、よく本質をとらえて明快に示してくださっています。

はじめに小川先生に語録について語ってもらい、土屋先生が問答の誕生について、そして柳先生が、無字から隻手へとどのように公案が使われていったか示され、張超先生が、更に禅門随筆について触れて彩りを添え、ダヴァン先生が日本における語録の読まれたかを説いてくださり、最後に道場で実際に指導されている政道老師のお言葉があって、とても充実した内容となっているのであります。

 
横田南嶺

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