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臨済宗大本山 円覚寺

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2025.06.10
今日の言葉

発酵は発光

『天台小止観』には調五事といって、五つを調えることが説かれています。

食事と睡眠と身体と呼吸と心の五つです。

一般に坐禅は、身体と呼吸と心を調えることを大切にしています。

その三つを調えるためにもその前提として食事と睡眠を調えることが大切であります。

まず食事を調えることについては、次のように説かれています。

「第一に、食を調えるというのは、食事はほんらいは身体を道に進ましめるためのものである。

それなのにもし食べ過ぎているような状態でいると、気はあせり体はだるく、全身のぐあいわるく、心もとざされふさがりがちで、坐禅をしても心は安らかになりにくい。

だがもし食べることが少なすぎて足りないと、体はつかれ心は懸(うつ)け、思うところも考えることもしっかりとしない。

この二はどちらも禅定を得る道にはならない。

また、もし穢れたものや濁れたものを食べていると、人の心をくらくし迷いやすくする。

もし体によくない刺激物を食べていると、かねてからの病が動いて来るし、体の調子も悪くなる。

だから禅定を修習しようとするなら、その初めにぜひとも深くこれらを慎しまなければならない。

そこで仏は

身が安ければ道は隆んである

飲食に節量を知り

常にねがって閑かな処にあり

心を静かにして精進をねがう

これが諸仏の教である

と、いっている。」

と説かれています。

訳文は、大東出版社の『天台小止観』にある関口真大先生のを引用しました。

ここには食べ過ぎと、少な過ぎの二つがまず説かれています。

だいたいにおいて現代は食べ過ぎが多いように感じます。

残念ながら修行道場においても食べ過ぎの傾向が強くありました。

激しい作務という運動をした時は、いいのですが、坐禅に集中するような時には食べ過ぎはよくありません。

また少なすぎてもよくありません。

もっとも時には一食抜いてみたり、半日や一日断食するのは、体を調える上ではよいと思っています。

それから「もし穢れたものや濁れたものを食べていると、人の心をくらくし迷いやすくする。

もし体によくない刺激物を食べていると、かねてからの病が動いて来るし、体の調子も悪くなる。」

と説かれています。

実際にはこれがどのような食物なのかは説かれていません。

しかし、何を食べるかはとても大事であります。

修行道場の食事はかなり理想に近いかと思っています。

主に畑でとれた季節の野菜をいただきます。

味噌汁にしますが、そのお味噌は修行道場でつくっています。

それに梅干しや沢庵などをいただいています。

沢庵漬けなどは素朴なものですが、発酵食品であります。

大根を天日干しして水分を抜いて、それに糠(ぬか)や塩や昆布に唐辛子などを入れて漬け込みます。

すると乳酸菌が糠の中で発酵します。

数週間から数か月かけて熟成し発酵させるのです。

乳酸菌による乳酸発酵が進み、保存性が高まりますし、独特の酸味や風味が生まれます。

保存食でもあります。

麦ご飯は薪で炊いています。

大きな鍋でお味噌汁を作っています。

そんな修行道場の食事を先日は、発酵生活研究家の栗生隆子さんに味わっていただきました。

栗生さんとのご縁はもう何年になるでしょうか、長くなります。

最近では二〇二一年の三月に対談をさせてもらっています。

この栗生さんとの対談動画は今でもご覧いただくことができます

栗生さんの壮絶な人生体験は、何度聞いても胸打たれます。

中学二年生の時までは活発な少女だったといいます。

それが十四歳のときに歯の治療で、当時は歯科治療の詰め物として認められていたアマルガムを入れたのでした。

それからたびたび下痢に襲われるようになったのでした。

下痢はますますひどくなってしまい、栗生さんは下痢止めを常用するようになります。

医師から処方されたものや薬局で求めた強い下痢止めを飲み続けていたのでした。

はじめは三日くらい効いていたのが、だんだん効かなくなってきました。

薬を服用し始めて七年目にはもう効かなくなっていました。

二十代になって、会社勤めも難しくなり、部屋にこもって、ベッドとトイレを往復する日々を送っていました。

十四歳から二十年間、そんな苦労をなされたのでした。

腸内の菌がほとんど死滅してしまって、何も消化できないようになってしまったのでした。

そんなときに、「まだ生きたい」という思いと「もう死んでしまいたい」という思いの相反する二つの感情がすごいエネルギーとなって、意識が飛んでしまうという体験をなされました。

そんな不思議な体験をして、栗生さんは、自分のこの体で生きてみようと決意されたのでした。

病気であろうともこの体で命ある限り生きようという決心であります。

それから冷え取りを教わって、体を温めることでかなり体調が回復して外出もできるようになりました。

そしてとある物産展で甘酒に出会います。

糀で発酵させた甘酒をひとくちいただいて、栗生さんは「これは腸にすごくいい、腸が喜んでいる」と感じたそうなのです。

それが発酵に取り組むきっかけでした。

修行道場も糀で甘酒を作ったりしていましたが、私も栗生さんとの出会いでこの素晴らしさを再認識することができました。

また栗生さんに教わって豆乳ヨーグルトも作っています。

豆乳ヨーグルトは、豆乳と玄米で発酵させるものです。

教わってもはじめの種菌を作るのが難しいものでした。

今ではかなり慣れてきました。

いったん種菌ができると、そのあとは継ぎ足しで出来るので簡単なのです。

先日栗生さんがお見えになった時にもお菓子ではなく私が作った豆乳ヨーグルトに甘麹を入れて差し上げました。

甘麹も糀を発酵させて作ったものです。

この頃は、この豆乳ヨーグルトに甘麹を入れていただくことが多くなっています。

自分では最強の発酵食品だと思っているのです。

発酵生活研究家の栗生さんにいただいてもらうとどうだろうとハラハラしながら差し上げました。

一口口にふくむや、栗生さんは満面の笑みで褒めてくださいました。

それから、更にこれも栗生さんに教わった発酵小豆で作ったぜんざいを召し上がっていただきました。

これもとても上出来だと褒めてくださいました。

そしてお昼には修行道場の食事を召し上がってもらいました。

以前お越しいただいた折りにも修行道場で修行僧が食べているものを食べてみたいと言われて、お味噌汁とご飯と沢庵漬けという質素な食事を召し上がってもらいました。

その時もとても喜んでくれました。

理想の食事だと褒めてもらったのでした。

今回もお味噌汁と漬物でと思ったのですが、修行僧が栗生さんが来るというので張り切って切り干し大根やタマネギと梅肉の和え物、それにいただいたカボチャの煮物という修行道場では豪華な食事となりました。

そのお味噌汁の野菜の切り方がとても心がこもっていて素晴らしいと褒められました。

お味噌汁を作った修行僧は褒められてとても喜んでいました。

そして修行僧たちとしばし質疑応答、懇談をしました。

修行僧からも栗生さんに質問が活発に行われていました。

最後に栗生さんは修行僧たちに、この道場の発酵の智慧をお寺に帰ったら是非伝えていってほしいとおっしゃってくださいました。

話の中で発酵は光を発する発光だということにも気がつきました。

ちょうどいいお天気で光を発する栗生さんでした。

 
横田南嶺

発酵は発光

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