明るく生きる
まず「明るい」とはどういうことなのか、『広辞苑』で調べてみます。
まず一番に、「光が十分にさして物がよく見える状態である。明らかである。」ということです。
「月が明るい」「明るい部屋」という用例があります。
それから二番目に「色があざやかで美しい。澄んでいる。くすんでいない。」ということです。「明るい色調」という用例があります。
三番目には「性格・表情・内実などに曇りがなく、晴れやかである。」という解説があります。
それは更に細かく二つに分けて説かれています。
最初に「陽気である。明朗である」ことです。
「明るい性格」「明るい家庭をつくる」という用例があります。
それから「やましいところがなく、公明である。」ということです。
「明るい政治」という場合です。
四番目には「将来の見通しなどについて楽観できる。」という意味があります。
「明るい老後」という場合です。
それから最後の五番目に「(「…に明るい」の形で)その事についてよく知っている(通じている)」という意味もあります。
「法律に明るい」「事情に明るい」という用例があります。
「明るい」にはいろんな意味があります。
明るい場所というと、日当たりがよくて、風通しのいい場所を思います。
日当たりが悪いと暗いのです。
では「明るい人」というのはどんな人なのかを考えてみます。
まずはやはり表情ではないかと思います。
笑顔の多い人は明るいと感じます。
それからよく笑う人は明るさを感じます。
表情の次には、言葉でしょう。
「ありがとう」「うれしい」「楽しいね」「よかったね」などの言葉は明るい言葉です。
それから人に対しても否定的な言葉ではなくて、「大丈夫だよ」とか「なんとかなるよ」という声をかけるのも明るい言葉であります。
相手を認めてくれる言葉も明るい言葉だと思います。
「よくやったね」とか「頑張ってるね」という言葉は明るい言葉です。
それから、明るい場所というと風通しのよいことをあげましたが、人間も同じだと思います。
心を開いている人、どんな人でも受け入れてくれるのは明るい人だと感じます。
人に対して偏見を持たずに壁をつくらない人です。
それから、少々の辛いたいへんな時にも落ち込まない人も明るいと言えます。
そういう人がいるものです。
はたからみると、とても大変そうなのに、そんなに落ち込まずに明るい人はいるものです。
どんな場合にも気落ちせず、希望を見出そうとする力を持っている人は明るい人だと言えます。
それから明るい人というのは周りも明るくすることができます。
その人がいると場が明るくなるという人はいるものです。
それまで重苦しい空気だったのが明るくなる人はいます。
そんなことをあれこれと考えていると、「明るく生きる」というのは、単に明るい顔をしているとか「いつも笑っている」というだけでなく、深い意味があります。
やはり「美点凝視」といいますが、「物事のよい面を見ようとする気持ち」は大事であります。
嫌なところばかりを見たり、悪いところばかりをあげつらうことをしていては暗くなってしまいます。
それからどんな困難なことにも柔らかく受け入れる心が大事です。
こういう心が土台になろうかと思います。
その上で、まわりの人にあたたかく接することです。
それが表情や言葉として現れます。
それから、もうひとつ大事だと思うのは、自分自身も大事に認めてあげることです。
完璧にできることはなくても、今の自分を認めてあげることも大事です。
そしてやはり感謝する心を持っているのは、明るい人であります。
日常の小さなことに感謝できる心を持つことは心を明るくしてくれます。
感謝の心を忘れない人は、自然と顔が明るく、言葉も温かくなり、結果的にそれが周囲をも照らす力となると思うのであります。
そう考えてみると、松居桃樓さんが『微笑む禅』で説かれている、人間にとって一番大切なことは「いつでも、どこでも、
なにものにも、ほほえむことができる人になる」
ということは明るい人になることであります。
それにはやはり「一粒でも播くまい、ほほえめなくなる種は
どんなに小さくても、大事に育てよう、ほほえみの芽は
この二つさえ、絶え間なく実行してゆくならば、人間が生まれながらに持っている、いつでも、どこでも、なにものにも、ほほえむ心が輝きだす。人生で、一ばん大切なことのすべてが、この言葉の中に含まれている」
ということが日々の努力の基本になってきます。
坂村真民先生の詩を思います。
明るい心で
明るい心で
明るい顔で
接してゆこう
暗ければ
暗いほど
元気を出して
明るい方を目指して
生きてゆこう
天に
星が輝いているではないか
道のべに
花が咲いているではないか
空に
鳥が飛んでいるではないか
しっかりしろ
しっかりしろと
せみたちが鳴く
けんめいに鳴く
明るく凛々と
元旦詩
あかあかと
日は昇り
あかあかと
雲はたなびく
ああ
明るく生きよう
ぴかぴかと
星々は輝き
きらきらと
木々は光る
ああ
凛々と生きよう
未来を開くために
日本の使命を知るために
横田南嶺