禅文化の旅
第一は、なんといっても先頃無事開催できた禅文化研究所創立六十周年の記念式典であります。
こちらは盛会裏に終えることができました。
それから禅文化研究所の夏季講座の開催であります。
こちらも、今回初めて東京で無事に開催することができました。
それから、賛助会員の方々との親睦を深める旅行であります。
「所長と行く禅の旅」という企画でありました。
こちらが先日のイス坐禅の会の翌日に開催されました。
お天気が心配されたのですが、幸いに好天に恵まれました。
第一回の禅の旅は、ただいま禅文化研究所の理事長である松竹寛山老師のお寺である平林寺を訪ねました。
現地集合現地解散とさせてもらいましたが、遠近各所からお集まりくださいました。
三十代の青年からご年配の方まで、遠くは九州からもお見えくださいました。
十時半に集合として、まずは到着茶礼といって、理事長はじめ我々とみなさんとでお茶をいただきました。
平林寺の中書院という格式のあるお部屋で、広いお庭を眺めながらのお抹茶とお煎茶をいただきました。
それから本堂で、平林寺の老師を御導師に、般若心経と四弘誓願文を皆でおとなえしました。
それから有り難いことに松竹老師御自ら境内を御案内くださいました。
平林寺は、いただいたパンフレットの記述によれば、
「金鳳山平林寺は、臨済宗の禅寺です。
創建は南北朝時代にさかのぼり禅修行の専門道場として臨済宗の法灯をいまに伝えます。
本山は京都花園の妙心寺です。
平林寺は永和元年(1375)武蔵国 (武州) 中部、現在のさいたま市岩槻区に創建されました。
開山は当時の鎌倉建長寺住寺石室善玖禅師、開基は岩槻城主の大田備中守春桂薀沢居士です。」
と書かれています。
まもなく創建六百五十年を迎えるという古いお寺なのであります。
山門からご案内くださいました。
山門が実に趣のある門なのです。
こちらもパンフレットによれば、
「平林寺が岩槻から移転した際に移築された貴重な伽藍。
建築物としてもいまなお状態が良いとされています。
350年以上の風雪に耐えた堂々たる構えです。
金剛力士像は鎌倉期の作といわれ、近代日本の電力事業の礎を築いた実業家松永安左エ門によって寄進されています。
禅宗では、山門(三門)は「空・無相・無作」の三解脱門
を表し、この門をくぐると迷いや煩悩から解放されるといわれます。」
と解説されています。
それから、坐禅堂なども拝観させてもらいました。
平林寺は臨済宗の専門道場なのであります。
こちらもパンフレットには、
「平林寺専門道場(平林僧堂)は明治35年(1904) 平林寺第二十一世峰尾大休老師によって開設されました。
大休老師は、万延元年(1860) 武蔵国生まれ。
鎌倉円覚僧堂に入門後、今北洪川老師、釋宗演老師に参禅し、印可を受けます。
円覚僧堂では宗演老師に代わる師家代参も務め、明治34年(1901)平林寺に晋山しました。
昭和12年(1937) 妙心寺派管長、また臨済宗各派が合同した際には、第2代臨済宗管長を歴任しています。
大体老師に続く白水敬山老師は、当時「天下の鬼叢林」と恐れられた正眼寺(岐阜、臨済宗妙心寺派)で修行後、平林寺第二十二世に就任。
「雲水(修行僧)の修行には大自然が不可欠」という信念のもと、近隣の雑木林を寺域としてととのえ、僧堂の修行環境の基盤を築きました。」
と解説されています。
そうして代々平林寺の境内は素晴らしい環境として護られてきています。
パンフレットには、「武蔵野の風景」として、
「古来より水源の乏しかった武蔵野は、一面ススキ野原の広がる光景でした。
江戸時代に入り、川越藩主松平伊豆守信綱が玉川上水と野火止用水を引いたことにより、一帯はめざましい発展を遂げます。
新田開発に伴い人口が増え、くらしを支える燃料や肥料となる雑木林が形成されて、武蔵野は水と林のある風景へと変わっていきました。
パンフレットには「雑木林の再生と保全」として、
「昭和43年(1968) 平林寺境内林は、武蔵野の風情を広くとどめる貴重な文化財として、国の天然記念物に指定されました。
後年の追加指定も合わせて、現在はおよそ43㏊(東京ドーム9個分)がその範囲となっています。
平林寺に残されたかけがえのない自然、そして文化資産でもある雑木林を再生し、後世に受け継ぐため文化庁、埼玉県新座市、平林寺の自然と文化を守る会と連携し、境内林の雑木林を整備、保全する事業が進められています。」
というものです。
実に広大な雑木林なのであります。
境内を老師のご案内のもとに散策していると、
上皇陛下のお言葉が看板に書かれていました。
まずは昭和五十二年に、皇太子妃殿下とご一緒に、平林寺行啓の折に仰せになったお言葉です。
「このかけがえのない武蔵野の自然を訪ねる人々が
生態系の微妙な仕組みに十分留意することによって
美しく豊かな自然が保たれ
いつまでも人々を楽しませてくれるよう願っております。」
という言葉と、
更に天皇にご即位遊ばされてから平成二十一年に、皇后陛下とご一緒に、平林寺行幸啓の折のお言葉です。
急速な都市化が進むなか、都会の近くにあって
広大な武蔵野の自然が残っていることは
非常にありがたいことです。
このかけがえのない自然は心の故郷でもあり
多くの方々が癒しの場として訪れることでしょう。
これからも皆さんの協力や努力によって
武蔵野の自然を大切に守り育てていくことを望みます。
というお言葉を拝見しました。
そのあと広い庭園で記念撮影をして、みなでお弁当をいただきました。
午後からは理事長による禅エクササイズを小一時間ほど、皆で楽しんで行いました。
そして私が90分ほど話をしました。
その合間にみなさんとの懇談や質疑応答も交えて行いました。
みなさんの禅文化研究所への熱い思いも伝わりました。
なんとか、研究所を存続してゆかなければならないと改めて強く思ったのでした。
広大な林の中にある平林寺様の道場にお参りして、禅文化研究所の賛助会員の皆様とも親睦を深められて有り難い一日でありました。
横田南嶺