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臨済宗大本山 円覚寺

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2024.04.14
今日の言葉

口は禍の門

先代の管長、足立大進老師は、よく「黙」の一字を揮毫しておられました。

そして「黙」と書いて、そのあとに、「説了也」と書いておられました。

黙っていて、それですべて説き終わっているということです。

私が、僧堂の師家の代参という役を仰せつかった時にも「黙」の一字を書いてくださいました。

そのあとには、『維摩経』の

「善哉善哉乃至無有文字語言是眞入不二法門」

と書いてくれました。

文殊菩薩の問いに対して維摩居士が何も言わなかったのでしたが、その一黙が、素晴らしい、素晴らしいと讃えた言葉です。

なんの文字言語もないのが、真の不二の法門に入るということだと讃えたのです。

『広辞苑』にも
「言わぬは言うに勝る」という言葉があります。

「多弁より黙っている方が、思いは通じること。

また沈黙を守る方が安全であること。」

という解説があります。

黙っている方がいいということを表すのに、「口は禍の門」という言葉もあります。

こちらもちゃんと『広辞苑』に載っています。

「(馮道、舌詩)「口は是れ禍の門、舌は是れ身を斬るの刀なり」という出典が示されています。

そして「うっかり吐いた言葉から禍を招くことがあるから、言葉を慎むべきである、という戒め。」と解説されています。

舌は身を斬る刀とは、手厳しい戒めです。

『ブッダのことば』にも

「人が生まれたときには、実に口の中に斧が生じている。

愚かな者は、悪口を言って、その斧によって自分を切り裂くのである」と書かれているのに通じます。

やはり古今の聖人は皆口を慎まれたのであります。

五祖法演禅師の語録に、こんな問答があります。

僧が「如何なるか是れ佛」と五祖禅師に質問しました。

「仏とはどんなものですか」ということです。

すると五祖禅師は「口は是れ禍門」と答えました。

「口は禍のもと」、ごちゃごちゃ言うなということでしょう。

白隠禅師の註釈には、尋常の答えならば上透霄漢下徹黄泉と言うところが、これは五祖下の風采と書かれています。

普通なら仏とは問われると、上ははるかな大空にまで達していて、下は奈落の底まで突き抜けているとでも答えるというのです。

それを「口は是れ禍門」と答えられたのは、五祖禅師ならではということです。

『大方便佛報恩經卷第三』にある言葉が、註釈に書かれています。

「佛阿難に告げたまわく。人の世間に生ずるや禍は口從り生ず。

當に口を護るべし。猛火よりも甚し。

猛火熾然として能く一世を燒く。

惡口熾然として無數世を燒く。

猛火熾然として世間財を燒く。

惡口熾然として七聖財を燒く。

是の故に阿難。一切衆生の禍は口より出ず。口舌は身を鑿くの斧にして身を滅ぼすの禍なり。」

という言葉です。

恐ろしい火はすべてを焼き尽くしますが、それは一代限りです。

しかし悪口の罪は、一代限りではなく、累世に及ぶというのです。

火は世間の素晴らしい宝を焼いてしまいます。

口の禍は七つの聖い財を焼いてしまうというのです。

七つの聖財というのは「一に信、二に精進、三に戒、四に慚愧、五に聞、六に思、七に定慧」の七つであります。

先日は、麟祥院で小川隆先生の勉強会がおこなれました。

思えばもう九年も続けています。

これで十年目になるのです。

先月までは竹村牧男先生の華厳五教章のご講義もありました。

先月で終わり、今回は私が臨済録を担当することになりました。

もともとは小川先生が『臨済録』をご講義してくださっていたのですが、コロナ禍から小川先生の講義は『宗門武庫』の講義となりました。

『臨済録』をという和尚様方からの要望もございますので、私が担当することになったのです。

もっともこれは和尚様方だけの勉強会なのでごく少人数の会なのです。

半分以上は、円覚寺の修行僧たちで、それでどうにか会場に人がいるかのように見せかけているのです。

それでもお越しくださる和尚様は熱心な方々なので、有り難いことです。

四月は龍雲寺の細川晋輔さんもお越しくださっていました。

小川先生は、今回の『宗門武庫』を解説なさるのに、「歇後語」ということを説明してくださいました。

これは文字通り、後の言葉を欠いていることを言います。

中国のことわざを示してくださいました。

日本語に訳すと「孔子様の引っ越し」というと、それは下の句が「本ばっかり」になるのだそうです。

ただし、この本を表わす「書」という字と「輸送」の「輸」の字は、中国語では同じ音で、負けるという意味があります。

そこで本ばっかりと負けてばっかりという意味にかけるというのです。

ですから、この頃はどんな調子ですかと聞かれて、「孔子様の引っ越しだ」と答えると、それは「もう負けてばかり」という意味になるということでした。

こういう事が分かっていないととんでもない間違いを犯してしまうという話でした。

そこで毛沢東の「和尚打傘」という話を教えてくださいました。

エドガー・スノーに毛沢東は自分のことを「和尚打傘」と形容したそうです。

これは坊さんだから髪がない(無髪)、そして傘を差しているから、天が見えないということですが、かけことばで、「髪」と「法」は、中国語でほぼ同音なので「無髪無天」は「無法無天」をいい、それは「法律も無視、天理(道徳)も無視すること、即ち「無茶苦茶やりたい放題」を言っているのだそうです。

ところがそのことが理解できずに、通訳は「私は傘をさした坊さんです」と誤訳してしまったのでした。

それをスノーが「私は破れ傘を手に歩む孤独な修道僧」の意味だと解釈してしまったというのです。

この誤解が広まって、世界の人々は「ああ、毛沢東と言えば、新中国の帝王のような人だが、その心のなかをのぞけば、無人の枯野を一人とぼとぼと歩む行脚僧のように孤独なのだ」と理解したという話でした。

1976年9月に毛沢東が死んだとき、朝日新聞の「天声人語」(1976年9月11日)には、

「晩年の(毛沢東)主席がスノー氏に『自分は破れがさを片手に歩む孤独な修道僧にすぎない』ともらした言葉は、この不世出の革命家の内面を知る上で実に印象的だ。」と記しているのだそうです。

毛沢東が亡くなったときに新聞に大きく報道されていたのは私も覚えていますが、天声人語まで存じ上げませんでした。

まだ十歳くらいでした。

そんな誤解があるのだ、気をつけないといけないと思って聞いていると、自分自身が誤解していたことが分かりゾッとしたのでした。

小川先生は、更に歇後語の例として五祖禅師の言葉をあげられました。

それが、
僧問う。如何なるか是れ仏。
師云く、肥は口従り入る。

という問答です。

仏とはどのようなものかと問われて、肥満は口から入ると答えたのです。

私が見ていた註釈書には「お前さんそんなに肥えたのは大飯を食うからぞ。」と書かれています。

私も単にそのように講義をした覚えがあります。

しかし、これが歇後語で「病從口入、禍從口出」ということだというのです。

「病は口より入り、禍は口より出づ」というのは『広辞苑』にも掲載されています。

『太平御覧』にあって「病気は飲食物から起こり、災難は言語を慎まないことから起こる。軽率な発言を戒めた言葉」なのです。

伝えたい大事なことは、「禍は口より出づ」の方なのです。

そうでないと、五祖禅師が、この問答のあとに徳山禅師の話をしていることにつながりません。

徳山和尚がある晩、今夜はもう問答しない、なにか質問する者があれば三十棒をくらわすぞと言ったのです。

まさにこれはもう余計なことを言うなと言いたいのです。

五祖録の講義をしたのは、もう二十年も前になりますが、こんな間違いをしていたことを、小川先生のご講義を聴いて分かったのでした。

よくも無知のまましゃべっていたものだと反省しました。

まさに口は禍の門なのでした。

そんなことに気がついて、そのあと臨済録を講義するのは実に気が引けたのでした。

それでもこうして勉強会をするおかげで気がついたのだと小川先生には改めて感謝であります。

 
横田南嶺

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