すべてを許し受け入れる心
7月14日(日)
南嶺管長が日曜説教会で法話されたことをまとめてみました。
「人々は憎み合い、また殺し合った。しかし、大地はこれを愧じて夏草をもって
それを覆うた。」
これは、インドの詩人タゴール(1861~1941)が箱根にある曾我兄弟の墓
とされる場所を訪れて作った詩です。タゴールは曾我兄弟による仇討ちの憎しみ、怨みは
神(大地)の御心に反するものと表現しました。
私はそれを以下のように仏教的によみかえてみました。
「人々は憎み合い、また殺し合った。しかし、大地はこれらをすべて許し
すべて受け入れて緑の草をもって覆うた。」
人の世の苦しみや悲しみ、ねたみ、怨みはあまり良い感情とは言えない。
親を亡くした悲しみ、子と別れる悲しみ、そこから生まれる怨みや憎しみ。
しかし、こういう心なくして人間の心というものもありえないのも事実です。
仏の心、仏心はこれら人の世の悲しみや苦しみ、憎しみやねたみ、うらみすら
それらすべてを受け入れてくれるものなのです。
大地が緑の草をもってすべて覆った。大地はどんな嵐も照りつける日差しも
雨や雪もすべてを受け止めて呑み込んで包み込む。そしてすべてを肥料にして
草を茂らせ花を咲かせます。
私たちの心にもどうしようない苦しみ、どうすることもできないねたみやうらみ
があろうかと思います。また、曾我兄弟の仇討ちのようにその時代に生まれたら
そう生きるしかない悲しみというものもあります。
それらをすべて受け入れてくれるのが大地の心、仏心の心です。私たちが
誰一人例外なく生まれながらに持っている心なのです。
<方丈前庭にて> 「はい、どうじょ。」