念を斬る!
6月2日(木)その2
管長様が先日の攝心で提唱されたことをまとめてみました。
こんな剣の話があります。ある武士が真剣勝負を挑まれました。
真剣の果たし合いは、申し込まれたら断ったらいけないんだそうです。
それも相手は相当な剣の使い手、逆に自分は剣の覚え無し。
とうていかなわないが、しかし、せめて武士として立派にうち果てたい
と思って剣の達人に相談した。「自分の剣はほとんど素人であるが、
真剣勝負をしなければならない。死ぬことは覺悟をしています。
立派に武士らしく最期を全うできる方法を教えてください。」
達人曰く「あなたに死ぬ気があるのならば、勝つことはできないが
相打ちならできる。それは、真剣勝負の立ち会いの時、あなたは
刀をぬいて大上段に頭の上に振りかざして、目を閉じろ!そして、
自分の全神経を集中させなさい。相手の殺気を感じたら、自分の
体に冷たい感覚を感じたら、その殺気がやってきた方向に向かって
刀を振り下ろせ!」
自分の体に刀が入った瞬間、つまり斬られる瞬間が相手が一番
無防備になる時なのだそうだ。刀が自分の肉体に入る瞬間というのは
痛いというよりは、ヒヤッとするのだそうだ。それを感じた瞬間、
刀を振り下ろせば自分も死ぬけれど、相手も倒れるのだ。
いよいよ、本当の立ち会いの時、刀を大上段にふりかざし集中していると
相手は相当な剣の達人であったが、とうとう打ち込むことができなかった。
死ぬ気で、捨て身で全神経を集中させたなら、打ち込む隙などなくなって
しまう。このことは、我々の坐禅の呼吸も同じです。数息観(自分の呼吸を
一つ二つ・・・と間断なく数えていく呼吸法)をそのくらい真剣にやらなくては
いけない。ぼやっと居眠りはんぶん、雑念、妄想しながら坐っていたのでは
いくら長時間してもなにもならない。一念が湧いた瞬間、「この刀」を
振り下ろす!ちらっと眠気が起こったら、これを断ち切る!
ちらっとでも一念が起きたなら、その瞬間のうちに呼吸を数えて
それをたたっ切る!そういう覚悟でやっていかないとなかなか
三昧とか正念相続にはならない。