花園大学卒業式 三月十六日 総長祝辞
本日はご卒業おめでとうございます。新しい元号に変わるという新しい時代に旅立ってゆかれる
皆さまに心よりお祝い申しあげます。
花園大学は仏教の中でも、臨済宗、臨済禅のこころを建学の精神としています。
臨済という方は、恒に自ら主体性を持って生きるように説かれました。
どんなところであろうと、そこで自ら主体性を持って生きてゆくことが、
真実の道だと説かれています。
最近、ある書物を読んでいてこんな言葉が目に入ってきました。
「アメリカ合衆国から自分第一(ファースト)という個人主義が
輸入されて恐ろしい勢いで跋扈しはじめた。
この思想の勢いは防止することができない。
ナニモ個人主義カニモ個人主義といちいち自己を中心にして割り出す。
これが高じてくると危険思想にもなるのです。」 というものであります。
これは今読んでも何の違和感なく受け入れられるのですが、実は今からちょうど
百年前一九一九年に出された本にある言葉です。
著者は、本大学の第二代学長である釈宗演老師という方です。
百年前から自分ファーストという言葉を用い、個人主義の危険性にまで指摘さられていることに驚きました。
自分を大事にすることは必要ですが、あまりに自分ファーストでは行きづまります。
釈宗演老師は、「自分ファースト」という思想に対して、日本人の思想として
中心にならなければならないのは感恩の精神、
おかげさまと恩に感ずることと説かれています。
自分一人で生きているのではない、大自然の恵みや、
多くの人のおかげさまで生きていらえると気がつくことによってこそ、
大きな力を得られるものであります。
どうぞ、このおかげさまでという心を持っていただきたいと思います。
そして皆さまに前途洋々たる未来の開かれんことを願っています。