地獄に学ぶ
地獄が道を求めるきっかけでありました。
最近、日蓮宗の妙法寺久住謙昭上人が、VRを使って地獄の体験ができるようにしているという話を耳にして興味をもっていました。
今の時代に地獄が、人々の心にどのように響くのか関心があります。
そこで先日久住上人にお越しいただいて、このVR体験と法話と法要を体験させてもらいました。
VRというのは、仮想現実とも言います。
コンピューターが作り出した仮想空間を、あたかも現実であるかのように疑似体験できる技術です。
専用の「VRゴーグル」を装着して、360度の映像と立体音響に包まれます。
まるでその場にいるような感覚になるものです。
それで地獄を再現するのですから、とても興味があります。
その日体験する修行僧たちの分、二十数個のVRゴーグルを持ってきてもらいました。
はじめに久住上人のお話があります。
もともと仏教には絵解きという布教がありました。
涅槃図の絵解きや、地獄の絵図をもとにして仏教の話をするのです。
これがVRのヒントになったと仰っていました。
令和の時代の絵解きがVRだというのです。
人は死んで四十九日の間に、裁きを受けます。
七日で三途の川を渡るといわれています。
初七日の頃です。
三途の川を渡るのに、罪の軽い方は浅瀬を渡り、重い者は深い急な流れを渡らなければならないそうです。
深い流れでは着ている衣装は濡れます。
濡れていると悪い行いをしたことが分かるので、濡れた衣を他人に着せることがあるそうです、
これが「濡れ衣を着せる」という語源になっていると知りました。
地獄には八大地獄といって八つあるのです。
等活地獄は、殺生を犯した者が落ちます。
寿命は約1兆6千億年だそうです。
黒縄地獄は、殺生や盗みをしたものが落ちます。
寿命は 約13兆年だそうです。
衆合地獄は、殺生に盗みに姦淫を犯した者が落ちます。
寿命は約100兆年です。
叫喚地獄は、殺生に盗みに邪淫と飲酒の罪で、約800兆年苦しみます。
大叫喚地獄は、更に妄語の罪が重なり、寿命約6,800兆年だそうです。
焦熱地獄は、更に邪見の罪が加わり、約5京年です。
大焦熱地獄は約40京年苦しみます。
無間地獄は五逆罪を犯した者が落ちるところで、約349京年苦しむのです。
地獄の説明を受けてVRを体験します。
三途の川を渡るところから始まります。
あたりを見渡しても本当に川を渡っているように感じます。
地獄は恐ろしい世界なのですが、それほど、おどろおどろしく描かれてはいませんでした。
これは子供でも見られるようにと配慮されているとのことでした。
そしてそのあと久住上人の法話が続きます。
地獄は地の下にあると説かれますが、日蓮大聖人は五尺の身のうちにあると仰せになっているのです。
修羅や畜生、餓鬼、地獄という世界はすべて自分の中に存在しているのです。
そこから煩悩の根源である三毒が説かれました。
貪欲と瞋恚と愚痴であります。
自己の欲望に執着して、あれが惜しい、これが惜しいと言って限りない欲望の心から、乱される苦しみが貪欲です。
瞋恚、怒りとは、自分と他者を比べては相手を僻んだり、妬んだり、恨むことによって起こる怒りの苦しみです。
自分勝手で自己中心的、他人を思いやらない愚かなる言動から生まれてくる苦しみが愚痴です。
この三つが三毒であります。
ここで久住上人は地獄という字を、自分の「自」と、行いという意味の「業」という字と、そして苦しみの「苦」という字を当てて説かれていました。
まさに地獄は自らの行いによって自らが苦しむことなのです。
「自分の救済者は自分自身である。他の誰が救ってくれようか。自分を正しく制御してはじめて、人は得難い救済者を手に入れるのだ。」
というブッダの言葉を示してくださいました。
久住上人は私達の中にある地獄、その罪深さを知り、懺悔して悔い改めることが地獄VRの目的なのだと仰っていました。
そのあと、懺法という法要をお勤めしてくださいました。
読経の間瞑想をして、私達は自分の罪を紙線香という紙でできた線香に書きます。
そしてそれを仏前で燃やして懺悔するのです。
地獄VRの体験は単に地獄をVRで体験するだけでなく、法話と法要とを織り交ぜて自分自身の三毒煩悩に気がついて懺悔することができるようになっていました。
久住上人が今までに何度も何度も苦労されて作り出された方法だと分かりました。
現代の人たちにはとてもよい布教をなされていると感じ入りました。
なんといっても久住上人の謙虚で真摯に仏道を求めておられる姿勢がよく現れていて修行僧達も深く感銘を受けていました。
よい学びとなりました。ご縁に感謝であります。
横田南嶺