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臨済宗大本山 円覚寺

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2026.03.15
今日の言葉

ゆるむ、つながる

雨の日に出かけるときは、気をつけないと草履を履いているのでよくすべります。

昨年の春によそに法話にでかけていて、そのときにすべって転びそうになって、思わず手をついて衣装が濡れないようにしたのでした。

その折に無理な体勢をとって、かなりの衝撃が身体に加えられたようでした。

かなり長い間、左のももうらの緊張がとれずに苦労していました。

瞬時に強い緊張が走るとなかなかとれないものです。

もっとも日常の暮らしには影響がないので、問題がないのですが、自分で体操など運動をすると左右差が大きく感じられたのでした。

それもどうにか年末になってようやく解消されて、やれやれと思っていたところ、先日も出かける折に雨で草履が滑って、転びそうになりました。

そこで転ばぬようにと身体が反応して股関節に衝撃が走りました。

内心「しまった」と思いましたがやはり身体には影響が残りました。

昨年痛めたももうらがまた固まったような感じがしていました。

これもなかなか容易にはとれないものです。

先日はまた西園美彌先生にお越しいただいて、講座を開いていただきました。

毎回毎回新しい発見があります。

そして毎回、これ以上のワークはないと感動するのですが、今回も、これ以上のものはないという感動でありました。

はじめに修行僧達に、最近の様子や何か要望がないかと聞かれました。

ある修行僧が、本を読むときに首が前に出てしまう癖がなおらないと言いました。

西園先生は、その修行僧をご覧になって「目だ」と仰いました。

目は何かを見ようとしています。

これは当たり前なのですが、最近はスマートフォンや、パソコンによって目の刺激が強く、一層眼球が前に出ようとしているのです。

西園先生の著書『魔女トレ 足元にある動きの「素」』にも「目で動く物を追うことの重要性」が書かれています。

「目は通常6つの外眼筋(上直筋·下直筋·外直筋·内直筋·上斜第·下斜筋)で動かされています。

ところがスマートフォンやパソコンなどの固定した画面上で視線を動かす時には、後頭部にある深層筋(後頭下筋群)が使われます。

この筋肉群の使い過ぎが、眼精疲労や肩コリの原因の1つであると考えられています。

また人間の発達段階では、動く物を身体と目で追うことが大事であることを考えると、子どもの頃からこうした目の使い方を長時間続けることは避けたほうが良いでしょう。」

と書かれています。

またもうひとりの修行僧が長く坐禅しているとどうしても背筋が固まってしまうのをどうしたらいいかと質問していました。

これも坐禅していると感じる課題です。

それに対して西園先生は、股関節で解決すると仰いました。

丁寧にお議事することひとつでだいじょうだと言うのです。

話だけ聞いていると、不思議に思いますが、そこから目と股関節のワークが始まりました。

目については、今回は眼球運動よりも目を緩めることを行いました。

二人一組になって、一人の人がもう一人の方の目と後頭部を両手で包むようにソッと押さえます。

そうして眼球が奥に引っ込んでいくように意識をします。

『魔女トレ』の本にも

「重要なのは「目の表面」で見ずに、ちょうど目の真裏にあたる「後頭部から見る」ことを意識することです。
「視線を送る時は、頭の後ろから(目を経由して)見なさい」。私はバレエの師匠にそう教わりました。」
と書かれています。

更に

「目の後ろから見る感覚がよく分からない人は、右手を後頭部の真ん中より下に置き、目の後ろを感じるようにしてみてください。

正しくできた時には、「丹田に気が集まる」「下腹部がもやっと/きゅーっと/ストンと落ちる感覚がくる」「足裏の踵の骨で押す感覚が出てくる」といった反応が起きます。」
と書かれています。

一人でも出来るのですが、誰かにソッと手を置いてもらうと、一層意識がしやすいものです。

実にたったこれだけのことですが、目が緩むと股関節が緩んでいるのです。

これは実際に股関節を開くワークをあらかじめ行っておいて、目を緩めたあとにもう一度股関節を開くワークを行うと、大きな違いが出ているのです。

実に不思議なことでした。

修行僧達からも驚きの声が上がりました。

かくして魔女の世界が繰り広げられてゆきます。

股関節を緩めるのはお辞儀でありました。

股関節を引き込むようにしてお辞儀をするのは、私もよく指導させてもらっています。

なので自分でも分かっているつもりでした。

今回は講座を受ける修行僧の数も少なかったために、西園先生が一人一人丁寧に股関節を緩める、その微妙な兼ね合いを教えてくださいました。

股関節は、骨盤のソケットに大腿骨がはまっているのです。

横からはお尻のくぼみ、横のくぼみの奥であり、前からは鼠径部の奥になります。

そこで西園先生は、その股関節を溶かして柔らかくしてほしいところが人によって微妙に違うというのです。

それで一人一人丁寧に教えてくださったのでした。

股関節が溶けたまま、お辞儀をして、溶けたまま足踏みをして、更に歩くのです。

「股関節が溶ける」という表現には感服しました。

股関節が溶けている時に背中の緊張も溶けていくのです。

私も西園先生に直にご指導いただいて、まだまだ自分の感覚が粗雑だったと反省させられました。

その他にも肩を調えるワークや、股関節のワーク、大腰筋のワークなどを丁寧に行いました。

そうすると開脚などが苦手だった修行僧もかなり開脚できるように変わっていました。

私自身も身体がずいぶん伸びたと感じました。

終わって部屋に戻っても、足の裏の感覚がいつも以上に鋭敏になっていました。

更に驚いたのは、翌朝五体投地をしていると、課題だった左ももうらの緊張がとれていたことでした。

西園先生が終わりに、ゆるむ、つながる、強くなるということを仰いました。

ゆるむとつながるのです。

身体全体がつながるのです。

という次第で、今回は目を緩め股関節を緩めました。

「坐るという姿勢も、股関節が溶けたまま坐れると、いつもより開いたように楽に坐れるという形にもなっていたと思います」と仰っていましたが、まさにその通りだと感じました。

日常の暮らしではまた目を使い過ぎたり、股関節が固まったり、つまったりしてしまいがちです。

しかし、このように緩んだ状態を身体が覚えておけば、そして緩む方法を習っていれば、いつでも緩んだ状態に戻れるのです。

今回も驚きの連続で三時間が終わりました。

ゆるむ、つながる、この感覚を定着させたいものです。

 
横田南嶺

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