出張布薩
先日の日曜説教では、お釈迦様の最期の教えである『遺教経』についてお話致しました。
本日は午前10時より、円覚寺の佛殿で法要を行います。
一般の方でもご参加いただけます。
一時間ほどの儀式ですが、どうぞお参りいただければ幸いであります。
先日の日曜説教でも、仏教を学ぶのに、話を聞いたり、本を読んで学ぶことも大事なことでありますが、実際にその場にいて、体全体で感じることも大事なことだと申し上げたのでした。
円覚寺仏殿という場所で、鎌倉時代からの本尊様のお祀りされているお堂でお経をあげるというのは、その場にいるだけでも大きな意味があります。
もっともその日はご本尊さまの前には幕をかけてしまい、涅槃図を掛けて法要を行うのであります。
さて二月は熊野詣でに出かけて、無事に念願の玉置神社にもお参りして、ふるさとの御燈祭にも参加して戻ってきました。
鎌倉に帰ったのは、日曜説教の前日の土曜日午後のことでありました。
熊野を出るときには、雨が降っていました。
御燈祭の翌日は、雨となっていました。
当日でなくてよかったとしみじみ思いました。
鎌倉に着くと、ちらほらと雪が見えてきました。
天気予報ではそれほどの雪になるようではありませんでした。
しかし、翌朝起きてみると既に境内は雪化粧であります。
きれいな景色だと見とれているうちに、だんだんと雪が積もってきました。
日曜説教の始まる頃にはかなりの雪になっていました。
幸いに電車が止まるまでではありませんでしたので、いつものように始めることができました。
ただこの天候だとお参りくださる方もいつもよりは少なくなっていました。
その日は京都からわざわざお越しくださる予定の方もいらっしゃって、法話のあとお目にかかる予定をしていましたが、やはりキャンセルとなりました。
その日は、こんな雪の中をお越しくださるとは有り難いことだと思って、玄関のところに立ってお越しくださる方々お一人お一人に手を合わせていました。
そうしていつものように日曜説教を終えて、その日は午後から静岡に出かけました。
最近は日曜説教の日の午後は布薩を行っていますが、その日の布薩はやめて静岡に行ったのでした。
静岡で布薩を行っていたのです。
静岡県の清水に東光寺というお寺があります。
そこのご住職と懇意にさせていただいています。
横山友宏和尚様です。
その奥様が横山由馨夫人です。
この横山由馨さんが、私が出した絵本『パンダはどこにいる?』の絵を描いてくださった方です。
また季刊誌『円覚』にも絵を描いてくださっています。
とても布教に熱心なご夫婦でいらっしゃいます。
今年になってこの出張の布薩は二回目となります。
一月にも横浜市金沢区にある東光禅寺で布薩を行っていました。
どちらもお寺の名前が東光寺なのです。
どちらの和尚もとても熱心で、円覚寺の修行道場で行っている布薩に参加されるのです。
横浜ですとまだ遠くありませんが、静岡の清水から午前五時に始まる布薩に参加されるのはたいへんなことです。
このことだけを見てもいかに熱心な和尚であるかが分かります。
そこでこの清水の東光禅寺の横山さんとお話していて、東光禅寺でも布薩を毎月行っているそうなのですが、なかなか人が集まらないということを漏らされました。
その言葉を聞いて、それでは一度私が行っておこないましょうと申し上げたのでした。
清水の東光禅寺様のご本尊は薬師如来で、薬師如来の縁日の八日に毎月布薩を行っているというのです。
それではその八日に行きましょうと話を決めました。
そこで二月八日におうかがいしたのです。
毎月八日の午後七時から行っているというので、いつもの時間のままにしてもらいました。
それから話が進んで、それではその布薩の前にイス坐禅をしましょうということになりました。
そこで五時半からイス坐禅を行い、そのあと布薩を行うことにしたのでした。
イス坐禅ではいつもタオルや手ぬぐい、テニスボールなどを使いますので、車に積んででかけることにしました。
皆さんにお土産の鳩サブレーも用意しました。
この鳩サブレーもイス坐禅では用いるのです。
お土産で食べるだけではないのです。
さて午後すぐに車で出かけたのですが、みるみる雪が積もってきます。
高速道路が通行止めになったという情報が入りました。
すぐに箱根を越えて行こうとしましたが、小田原あたりに着くとかなりの積雪になっていました。
箱根も無理そうなので、急遽私一人が車から降りて新幹線で静岡に向かいました。
新幹線も遅れが出ていて、清水の東光寺様に着いたのが午後五時二十五分、イス坐禅開始の5分前でした。
静岡では雪はそれほど積もってはいなかったので、予定通りに始めることができました。
控え室に入ってお茶をいただく時間もなく、そのまま会場の本堂に入ってイス坐禅を一時間行ったのでした。
タオルやテニスボールの小道具は使えませんでしたが、いつものように首や肩をほぐして、お腹もゆるめて、呼吸筋を使って呼吸を味わうようにして、イス坐禅をしました。
毎回のことですが、このイス坐禅を行っていると自分自身がよく調います。
やはり昼から数時間かけて車で右往左往して、急遽新幹線に乗ってと時間を気にしながらの道中でしたので、身心共に疲れがあります。
その疲れも、体が調うことでとれてゆきました。
よく調ったところで、布薩を皆さんと一緒に行いました。
イス坐禅の時にも腰を立てて坐るコツとして、仙骨を立てることと股関節の引き込みを入念に行いましたので、布薩の礼拝でも股関節を引き込むようにして礼拝するよう指導させてもらいました。
そうしてゆっくり丁寧に礼拝すると身心ともに調うものです。
そのあといくつかの質問もいただいたのでした。
普段から横山さんご夫婦が熱心に布教活動をなさっているので、お集まりの皆さんも熱心に取り組んでくださいました。
その日はありがたいことに本堂いっぱいにお集まりくださっていました。
思わぬ雪で、道中は難儀しましたが、東光禅寺において横山さんご夫婦のおかげで、身も心も温まるイス坐禅と布薩を行うことができました。
横田南嶺